プロローグ
「はぁ...学校きちー。」
とあるマンションの一室で学生がぼやく。その学生は斉藤 幸喜。今作の主人公だ。
彼は親と『高校からは一人暮らしさせる』ということを約束していたためマンション暮らしをしている。
家賃や光熱費、食事代などはすべて親が払っている。ただし、それも一定額までだしお小遣いは少額。お年玉はない。その為ほしいものがあるときは身を削っている。
「はぁ...。」
斉藤がため息をついている時だった。突然体にかかっていた重力がなくなったように宙を浮き始める。
さらに彼の部屋全体がまるで宇宙に放り投げられたように無重力状態となる。
「はぁ!?なんだこれ!?」
彼はパニックになり体をじたばたさせるが状況は一切変化がない。
そして無重力だった空間は突然重力が何倍にもなる空間へと変わり、彼の体をミンチへと変えた。
ハッと目を覚ますとそこは自分の部屋だった。さっきのは夢だったのだろうか。そう思いながら体を――――――起こそうとして体というものがないことが感覚的に理解した。
「なんだ...これ?まだ夢の続きか?」
そう言いながら周りを見ると自分の隣に女性が座っているのが見えた。そしてその女性は俺に告げた。
「これは夢ではありません。貴方は今魂だけの状態です。」
理解ができなかった。夢ではない?魂だけの状態?ありえないと思いながらふとリビングの方を見るとそこには『肉塊』を目にした。
俺はあの夢で最後どのように死んだ?浮いた後に急に落ちて。そして体がプレス機でつぶされるような感じで。そして...。
「...マジかよ。ウソだろ?」
理解した。いや、理解してしまった。あの肉塊は『俺だったもの』だと。つまり俺は、
「死んだ...のか?」
そう呟くと女性が申し訳なさそうな声色で声をかけてくる。
「はい...貴方は死んでしまいました。」
...不思議と頭が冷静になってくる。ぐちゃぐちゃとしていたものが何故か取っ払われた気分だ。取り敢えず質問をいろいろとしてみよう。この人はいろいろと知ってそうだ。
「俺はなぜ死んだんですか?」
女性に聞くと顔を伏せた状態のまま答えを返してくれる。
「貴方はこの世界に出現したはぐれ邪神という神のなりそこないが暴れたため私が鎮圧に向かったのですが...。」
「はぐれ邪神はほかのはぐれ邪神を吸収していたため私も手加減できないほど強力になっていました。」
「一応周りに影響が出ないよう結界を張っていたのですが、それも意味をなさず力の余波で...というわけです。」
なるほど...つまりこの人はそのはぐれ邪神と戦ってその余波で俺が死んだと。つまりはとばっちり。...まぁそれは置いておいて、俺がこの後どうなるか聞いておかないとな。
「俺ってこの後どうなるんですか?」
女性は待っていましたと言わんばかりの食いつきで答える。
「はい、その件ですが本来ならば輪廻に飲まれてこの世界の生物として生まれるはずだったんですが...。」
「貴方は私の力の余波の影響で輪廻にも飲まれない魂になってしまったんです。」
「ただし、この世界の輪廻には戻れませんがほかの世界の輪廻には戻れるため他の世界に『転生』という形で輪廻に戻ってもらいます。」
なるほど...つまり俺という存在が消えることはないと。記憶が消えるかもしれないが。それについても聞いておこう。時間はたっぷりあるからな。
「転生の際に記憶が消えるとかありますか...?」
女性はまるで「あぁそのことか」と思い出したように答える。
「いえ、本来なら輪廻に入った際に記憶は消えるのですが、貴方は向こうの輪廻には一度も飲まれていないので記憶は消えません。」
つまり向こうで輪廻にのまれなければ記憶は消えないと。それじゃあ転移・転生と言ったらテンプレのアレを聞きますか。
「向こうに行く際に何か『特典』みたいなのってつきますか?」
女性は頷きながら答える。
「はい、ありますよ。でもその前に転生する世界を選んでいただけますか?こんな世界が良い、といった感じでいいので。」
先ずは世界選びか...。せっかくだし魔法も使いたいし魔法は必須。でも中世とかの世界で不便な思いしたくないし...。時代は現代寄りかな?
「えっと...魔法がある世界で、後はできれば時代が現代でお願いできますか?」
女神はうんうん頷きながら答える。
「はい。えぇっと~...今は中世の時代の世界しか空いてませんね...。」
残念...あ。それじゃあ魔法はないけど『スキル』とかいうものがある世界ならあるんじゃないか?
「それじゃあ魔法はなくても『スキル』が存在する世界はありますか?」
女性は少し慌てながら答える。
「えぇと...はい、あります!それでは特典はどうしますか?」
特典...現代なら特に暮らすことに問題はなさそうだが...。ん~取り敢えず欲しいのいろいろ言ってみるか。
「それじゃあ...身体能力を尋常じゃないくらい強化できる能力とどんな道具でもうまく扱える能力と...あ、武器も欲しいので武器を作れる能力をください。」
女性は少し悩んでから答える。
「えぇと...問題ないですね。尋常じゃないくらいとまではいけませんが身体能力を強化できるスキルはありますし道具に関しては加護でどうにかできるので。武器に関してはそれに適したスキルを付けておきますね。」
取り敢えず要望のものは一通りもらえるらしい。とてもありがたい。そういえば向こうでは俺はどんな感じで過ごすことになるんだろう?
「そういえば向こうどの生活はどうなるんですか?」
そう聞くと女性は「また忘れてた」という顔をしながら答える。
「あ...大丈夫ですよ。実は...向こうの世界はこの世界と姉妹みたいなものでして...。」
「向こうの世界をいろいろと改変してこの世界にできるだけ似せてからあなたをそこに送ります。」
なるほど...それって大丈夫なのか?まぁ俺的にはありがたいんだが。向こうに関しては何も言うことはないかな。
「分かりました。それで、いつ俺は向こうに行けばいいんですか?」
女性は一回頷いてから立ち上がり答える。
「準備が済んだならすぐに行けますので玄関から出てみてください。そうすれば向こうにあっという間につきますから。」
女性がそう言うので俺は玄関を開けてみる。するといつもの外の光景ではなく真っ暗な空間が広がっていた。勇気を振り絞って玄関から外へ出ると視界がブラックアウトする。それと同時に意識も静かに切れる。
主人公の外見
黒髪の平凡な顔立ちの学生。
背は170㎝前後。