93 ピンスモグダンジョン攻略完了
「まったく!どうしてあんたはいつも勝手に戦うの!なんで私を呼ばないのよ!」
俺とイワオが主従の思いを深めあっていた空気を槍1本でぶち壊して登場したルル。
全員が冷たい視線で固まる中、ラー・カレイムの頭からゆっくりと広がる血溜まりが、時が止まっている訳では無いことを教えてくれる。
「あんたの剣は私なんだから、私が戦わなくちゃダメなの!」
強く言い寄ってくるが、なんと言っていいやら…、考えても何も言葉が出ず、かろうじてため息が漏れた。
「な、なによ。みんなして白い目で。私が倒したんだからもっと褒めたたえなさいよ」
そのセリフを聞いて、ため息のおかわり。
「なによ!なんなのよもう!」
空気の読めないルルさんは状況を理解できずとうとう地団駄を踏み始めた。
ルルがトドメをさしたラー・カレイムの体は黒い霧となって消えていく。ダンジョンで倒れたモンスターは基本的にはこうやって消えていく。
俺は前進してルルの前に立つ。そしてゆっくりと手を伸ばす。
「な、なによ……」
ルルは照れを含んだ不満そうな声を漏らしながら、少し俯いて俺に頭を差し出す。
俺の手はルルの頭をスルー。ラー・カレイムがドロップしたソフトボールほどの魔石を拾い上げる。
ん?ルルちゃんはなんでこっちに頭を向けてるのかな?
拾った魔石はハナに渡す。
「これでどうだ?」
「はい?」
「いや、これが目的できたんだろ」
「え、あ、はい!そうでした!魔石を採りにきたんでした!興味をそそる事が多すぎて失念してました!しかしこんなに立派なもの、お支払いする対価がありません」
ハナはモノ欲しげに手を伸ばそうとしつつ、しかし受け取れないという葛藤から不気味なダンスでもするかのように体をくねらせる。
「いいよ、やるよ」
「え!いいんですか!ありがとうございます!」
ハナは俺が言い終えるとほぼ同時に奪い取るように魔石を抱えて頬ずりする。もう少し遠慮気味な態度というものは無いのだろうか。行動がはっきりしてて嫌いではないけど。
「なんか悪いな、色々と」
「ゴッ」
せっかくのシチュエーションをルルが台無しにしたり、魔石を俺の一存でハナに譲ったりと結構勝手に振舞ってしまったなと思ってイワオに謝ったが、イワオは俺の行動を快く受け入れてくれた。
ハナは俯いたまま頬を膨らませてなんかプルプルしてるが、何も言ってこないので放置。
「さてまぁ、とりあえず街に戻るか」
「そうね、あたしもそろそろ戻るわ。またね、ススム」
アリアは俺の周りを一回りして顔を撫でると、前と同じようにコミカルな煙と音を立てて消えた。
「ルルは…まぁ俺についてくるわな」
「当然よ!」
「レイとイワオはどうするんだ?」
「どうする…とおっしゃいますと?」
「いや、なんかこう…一緒についてきたりとか」
よくわかんないけど、2人はどうするもんなのかと思って聞いてみたけど。
「お望みでしたらどこへでもお供致しますが…」
「ダンジョンのモンスターなんだから、ダンジョンに残るのが当然でしょ!」
ルルが当然とばかりに口を挟んでくる。
「そうですね、ここを守るのが私共に与えられた使命。他に必要とされないのであればここに残るだけかと」
「そっか」
そういうもんか。
イワオとレイは自我を持っているからかな。ダンジョンの中に置いていくのは、なんだか置き去りにするみたいで心苦しく感じてしまった。
モグネコ達と違って2人がここにいる理由というのはほとんど無いのではと思ってしまう。
かといって他にどうするという案もないし、とりあえずそれで納得するのならそうしておこう。何かあれば後でまた考えればいいだけだ。
「まぁ、またくるよ」
「はい、お待ちしております。いつまでも」
こうして、俺とハナ、それにルルとノベタは地上へと戻った。
ノベタとは地上に戻ったらすぐに別れ、ハナも魔石を抱えて自分の家に帰って行った。




