46 会議のススメ2
ベズが店を出ていった後は、アーヴァインが今後のギルドの方針を話して、それで会は解散となった。
要約すると、なるべく街に留まって、警鐘がなったら街の中を警戒するというものだ。特に街の西側を中心に守るよう指示を出していた。
俺への追及もそれ以上はなく、アーヴァインがその件について触れるなといった雰囲気を惜しみなく出してくれたお陰で他のメンバーが話しかけてくることもなかった。
今は皆、食事をとって騒いでいる。
俺もカウンターで1日半ぶりの食事だ。やっと、ようやく、待ちに待った食料だ。世知辛い異世界でも飯は美味い。この時間だけが救われていると言っても過言ではない。
「あんちゃん。なんで命狙われたかは知らねぇが街を歩く時はちったぁ気をつけるようにな」
「ん?魔王の話か?」
「違う、その前の男共の話だ」
「あれはたまたまぶつかったからだろ。ちょっとぶつかっただけで殺し合いとか、ほんとこの街は物騒極まりないな」
「そんな物騒なわけあるか。そいつらは最初からお前を殺そうと寄ってきたんだよ」
「え?なんで?」
「俺が知るか。だがそいつらはお前の名前を知ってたんだろ?」
「……………あ」
そうだ!あいつらは俺の名前を知っていた!
気が動転しすぎて全然気づかなかった。あいつら最初から俺の事を狙ってたってことなのか。
「ベズはああ言ってたが、そいつらは魔王が殺したのか?」
「あー…えっと、それはよくわからない、かなぁ。気づいたら3人ともきれいさっぱり消えてたんだ」
「きれいさっぱり?」
「あぁ、怖くて顔を伏せててあまり見てなかったんだけど、気がついたら消えてた、みたいな?」
嘘です、一部始終バッチリ見てました。それはもうショッキング過ぎて飯が喉を通らなくなるほどに。
そしてガルムが男共の死体を自身の影に取り込んでいたのも見ている。あとには何も残っていなかった。
思い出したらまたちょっと気分が…。
「まぁ一応明日、見分するよう姫さんに言っとくから、ちゃんと立ち会えよ」
「ああ、わかったよ」
それから適当に雑談しながら食事を終えて、まっすぐ洞穴に帰って眠った。
うーん……何やら周りが騒がしい。
眠っている俺の耳に、金属のぶつかり合うような音が響いてくる。
誰かがフライパン目覚ましでもしてるのか?
“あと5分”とかそういう甘えを一切許さない、相手を不快にさせてでも強制的に起床させようという最悪な手段だ。
ったく、誰だよそんなことする奴は…
―――――いや誰だよ!?
ここは俺の寝床、街の外の洞窟の最深部だ。
かなり深い位置なうえ、ここまでの道のりも迷路のように入り組んでいる。モンスターはまだいないが簡単な罠はいくつも仕掛けた。誰も来るはずがない、誰かが来てもそう簡単にたどり着けるものじゃない。
非常事態だという事に気づいて飛び起きると、抜剣したクレイとぴょん太が向かい合っていた。
「ススム様、おはようございます」
剣を構えたまま笑顔で挨拶してくるクレイ。
「ああ、おはよう。えっと…何してんだ?」
「本日は昨日の件でススム様を現場聴取させて頂きたくお迎えにあがりました。早く着いてしまったので起こさずにお待ちしようと思ったのですが、騒がしくしてしまい申し訳ありません」
クレイと俺の間には、毛を逆立てているぴょん太がいる。
ぴょん太は荒い息と唸り声を漏らしながらクレイを睨みつけている。
俺を守ろうと立ちはだかってくれてるのだろうか、愛いやつめ。
ただその人は怪物の首を一太刀で切り落とすような人だからやめておきなさい。
「ぴょん太、その人は知り合いだから大丈夫だよ」
俺がそういうと、ぴょん太は悩みながらも渋々といった態度で警戒を解いて、ベッドに座っている俺の膝の上に擦り寄った。
俺もぴょん太を撫でてやる。今日ももふもふだ。
「なんか騒がしかったけど、2人で何してたんだ?」
「少し、戯れていただけですわ」
クレイも剣を収める。
「そのシザーラビットはススム様のものですの?」
「シザー……あぁシザーね、うんシザー。そうだよ、かわいいだろ」
「ススム様がお創りになられたのでしょうか?」
「あぁ、そうだよ」
「黒獣、ですよね?」
「あぁ、そ……………」
俺の足元にスっと静かに穴が出現する。そのまま俺は垂直落下してその場から姿を消した。
くそ!完全に油断した!
まさか誰かが俺の寝床まで来るなんて思わないじゃないか。
ぴょん太は隠しておくべきだった。
いや、そもそもそう簡単にダンジョンの最奥まで来られると考えてなかった。
完全に俺が魔王だってバレた。
昨日は色々と誤魔化し通したのに、なのにこんなにあっさりと。
俺は今、緊急脱出のために絶賛落下中だ。
「ススム様、お待ちになってください!」
クレイは俺を追いかけて穴に飛び込んできた。
俺は落下しているといっても足元の地面を押し下げているエレベーター式で地に足はついている。
比べてクレイは自由落下。あちらの方が早い。
クレイとの距離はみるみる縮まる。
蓋をするように頭上に土壁を展開してクレイとの間に隔壁を創る。
クレイはそれを容易く壊すがその間にも何重にも隔壁を創りながら落下し続けている。
頭上を完全に埋めることが出来れば流石に追ってこれないかもしれないがそこまでの余裕はない。
隔壁といっても、隠し扉用のギミックだ。破壊できるように創られている。
―――ふと、この先の土の気配を感じ取れなくなる。
「やばっ!」
と思ったが後の祭り、直下掘りを止める事は間に合わずに掘り抜け、そのまま大きな空洞に飛び出した。
空中に放り出された俺に出来ることは何も無い。
「うわあああああああああああああああ!!!!!」
ただただ重力に身を任せ、為す術なくそのまま落ちていった。
急展開!
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