表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/102

44 厄日のススム

「この街の人間は全員俺様がぶっ殺す!」


そう宣言して自信に満ちた笑みを浮かべるガルム。

せっかく俺が晴らした皆の注目もまたすべてこちらに向いている。

中には立ち上がってこちらに向かってきそうな冒険者っぽい風貌の連中も…。


「そ、そうだな!ショタフェチの人間は便意の漏れ方がぶったまげー!」


店にいた全員が俺を可哀想な目で見ている。


「急にどうした、頭だいじょぶか?」


うっせーな!誰のせいだと思ってんだチキショーメ!


あとこっちに向かってきていた冒険者たちは誤魔化せてないし。踏んだり蹴ったりだ。


「おいお前、今この街の人間を全員ぶっ殺すと言ったか?」


俺達に詰め寄ったのは全身を鎧で固め、巨大な斧を持った大柄の男。至る所に傷跡があり、いかにも歴戦の猛者って感じだ。


「すみません、こいつそういうお年頃でして―――」

「ああ言ったね。俺はこの街の人間を全員殺す」

「ほんとすいません!こいつ酔っ払ってるんだけなんですよ!」

「あぁ?俺様は酒なんか飲んでねぇよ」

「おまえはちょっと黙ってろよ!」


人がフォローしてやってんのに余計な口を挟むんじゃねぇ!

おまえが魔王だってわかったら一緒にいる俺まで疑われんだよ!

ここは何としても穏便にやり過ごさなければならない。


「ちょっとぉ、そんなのほっときなよぉ」


後ろから露出度高めで妖艶な雰囲気のお姉さんが色気のある喋り方で大男を諌める。

同じパーティのメンバーかな?いいぞ!がんばれお姉さん!俺達を見逃してくれ。


「あ?ババアはすっこんでろよ」


ガルムのその一言で開戦の火蓋はあっさりと切られた。


お姉さんがガルムに手をかざすと、ガルムの乗っていた椅子が火柱に飲まれた。


「おぉこわ、ヒステリックババァじゃん」


ガルムはいつの間にか壁際まで退避していた。


「フレイムアロー」


お姉さんは続け様に火の矢を飛ばす。


「やめてくれぇ!店が燃えちまう!」


店主は頭を抱えて悲鳴をあげている。他の客は我先にと店から逃げ出していく。

俺も逃げ出したいがそのためにはあの2人の横を抜けなければならない。どさくさに紛れれば行けるだろうか。


「ほうらよっと!」


ガルムは近くのテーブルを蹴り飛ばす。

料理をぶちまけながら飛んでくる卓を大男は巨大な斧で一刀両断。テーブルをバラバラにへし折り、床までぶち抜いた。


天井を駆けるガルムはそれら破片に紛れて大男の頭上に飛び込み、身を翻してかかとを振り下ろす。

しかし大男はその脚を掴んで、ガルムを床に叩きつけた。


大男はガルムを前に斧を振り上げる―――が、それを振り下ろす前に斧を落としてしまった。


鎧の腕の隙間から真っ黒な巨大ムカデが這い出てくる。


「ぬあああああああ!!!」


大男は苦悶と怒号の入り交じった雄叫びをあげながらもう一方の手で掴んだそいつを引きずり出して壁に叩きつけ、斧で両断した。

体を2つに割かれた黒ムカデはそのまま霧のように消え失せる。



「黒獣!」

「まさかおまえ」

「おっさんやるじゃん。今日はおいとまさせてもらうわ。バーリードードー」


ガルムの影から大量の黒獣が溢れ出し、波のように店の出口へと駆け出す。1つの胴に2本の長い首を持つダチョウに似た鳥の大軍が冒険者も店主も押し流し、出入口が狭いとばかりに壁をぶち砕き、そのままどこかへ走り去っていった。






「ふぃー。ったく冗談じゃねえっつーの」


俺はといえば、大男の空けた床の穴に飛び込んで、そのまま地面の中へと退避した。


今は根城目指して地中を掘り進んでいる。


今日は厄日だ。


飯は食えない、首は切られる、当たり屋にからまれる、魔王に絡まれる、冒険者に絡まれる。災難続きだ。



ガルムが度々召喚していたのはやはり黒獣で間違いなさそうだ。大男がムカデを倒した時にその死体が残らずに霧散した。真っ黒な姿と、倒すと死体が残らず跡形もなく消えてしまうのが黒獣の特徴だ。


魔人でビーストテイマーだと名乗っていたな。


目的はプロンタルトの人間全員を殺すことで、プロンタルトを落とすと魔王として認められる。


ガルムとの会話で気になったのはこれくらいだろうか。


にしても、あいつはなんで俺が魔王だとわかったんだ?


あの時俺は能力は一切使っていないから前にクレイが言ってた魔力の漏れ云々ではない。

俺はガルムが魔王だとは全くわからなかったから、魔王同士ならなんとなく分かるとかそういうやつでもない。

元々知ってたのか?

そうだとしてもどうやってって話になるけど。


もっと色々聞きたかったけど、あいつは人の話を聞かないからな。


敵意はなかったけど、じゃあもう一度接触するかというとそれはない。


あいつは自分が魔人であることを隠す気がない。近くにいたらこっちにまで飛び火してしまう。


私はただこの街で静かに暮らしたいだけなのだ。


絡んできた2人や店にいた他の客が俺の顔を覚えてなければいいけど。 証言から身元が割れたら最悪だ。転移した身だから身元も何もないけど。



あ…………腹が減ったままだ。



はぁ…ほんとに今日は厄日だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ