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36 巨大猪のすすめ

なんでもかんでも平成最後の〇〇ってのを見るとちょっとイラッとします。


というわけで、平成最後の更新で~す(´・∀・`)

クレイが森から引っ張って来たのは、俺が相手にしたものの5倍はあるんじゃないかってくらい大きなマッドボアだ。


俺はすぐに立ち上がって警戒態勢をとるが、ウォーリーは横目でチラリとみて、すぐにまた俺の仕留めたマッドボアの解体作業に戻った。


他の2人も焦った様子はない。


「あれ大丈夫なのか?手伝ったりしなくても」

「手伝う?とんでもない、命がいくつあっても足りやせんぜ」

「そんなに強いのか!だったらなおさら助けないと!」

「あ?……あぁ、だいじょぶだいじょぶ。手なんて出したら後でお嬢に殺されちまうってことですぜ」


俺の獲物だ手を出すな的な事ってことか。


とは言われても心配になる。


その巨躯で猛進してくるマッドボアは、まさに大型トラックそのものだ。


マッドボアに追いつかれたクレイは鼻先まで伸びた牙を剣で受けるも、弾き飛ばされてこっちまで飛んできた。

クレイは空中で身を翻して華麗に着地を決める。


「まぁ、凄い傷跡!ススム様、激しい戦いをなさったのですね、流石ですわ」


俺の狩った穴だらけのマッドボアを見て満面の笑みで褒めてくれるクレイ。


それは大変嬉しいけれど、今はそれどころじゃないでしょ!クレイ!後ろ後ろ!


「よければあちらもススム様がお仕留めになられますか?」

「え!?いや、いい、絶対いい、うん、せっかくの獲物とっちゃ悪いし」

「あら、そうですの?遠慮なさらずともよいのに。それでは、私もお恥ずかしい姿をお見せせぬようにしませんと」


マッドボアに向き直ったクレイは自然体で2歩、3歩と優雅に歩を進める。

巨大マッドボアもそれに応えるように牙を構えて猛進してくる。




双方がすれ違う―――




地に足を着いたのはマッドボアだった。


クレイは剣を華麗に振り払い、鞘に収める。


その音を合図にしたかのように、マッドボアの首がずるりとズレ、胴から滑り落ちた。


「す、すげぇ………」


あまりの迫力にそう呟くことしか出来なかった。

マッドボアの体は痙攣し、首からは脈に合わせて血が吹き出している。


「これだけあれば足りるでしょうか」

「お、おぉ。十分なんじゃないかな」

「大漁だな」


ていうか、5人じゃ有り余るだろ。


「おーおー、本当に出やがったか。ま、お嬢なら絶対やると思っとりやしたが。捌くのが面倒なんで出来れば出てきて欲しくなかったんですがねぇ」

「何か不満があるのかしら?」

「いいえ、滅相もない。それじゃあこいつをバラしながら飯といきやすか」


こんなに巨大な猪を仕留めたってのに、俺以外は全然驚いたり喜んだりしていない。


これがこの世界の日常なんだろうか。


なんともまぁ恐ろしい世界だ。


もし俺が1人で対峙したとしたら、果たして勝てるだろうか。


まぁただ愚直に突っ込んでくるだけのやつなら何とかなるかもしれないけど、そんな魔物ばっかりってこともないだろうな。


複数の敵に囲まれたら、敵が空を飛んでいたら、土ではどうにもならないくらい硬かったら……


もっと色々な戦い方を考えておく必要があるな。

1番は戦いに身を置かない事だろうけど。


「そろそろいい塩梅ですぜ」


俺が物思いに耽けているうちにBBQ大会は始まっており、既に最初の肉が食べごろを迎えていた。


ま、とりあえず食うか。

せっかくのピクニックだ、今は楽しもう。


「ススム様、どうぞ」

「おう、ありがと」


クレイが肉を盛った皿を手渡してくれた。


先のことなんて分からない。明日のこともわからない。今は今の事だけ考えよう。


健康、平和、飯が美味い、それだけでいいじゃないか!


湯気の立つ肉を口に放り込む。


「うまっ!!」


マッドボアの肉は思わず声を上げてしまうほどめちゃくちゃ美味かった。

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