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33 BBQのすすめ

「あの~…クレイ嬢?」

「はい、なんでしょう。何か良いクエストがございましたか」


振り返り、屈託のない笑顔で問いを返してくるクレイ。


「いや、クエストを見つけたわけじゃないけども、クレイは何を見てるのかな~って」

「いえ、ドラゴンの討伐でもあればと思ったのですが、良いクエストは見当たりません」

「ど、ドラゴン!?」

「えぇ、ドラゴンの肉は高級食材でして、それはもう大変な美味ですのよ」

「お、おう。なるほど…。いや、でもドラゴンなんて危なくないか?」

「トカゲの1匹や2匹、問題ありませんわ。騎士団の方には討伐依頼はなかったかしら」


クレイがそう口にしたその瞬間だった。

途端に場の空気が一瞬だけ一変した。

背筋が凍りつき、全身の毛穴から一斉に冷や汗が滲む。

周囲の冒険者もそれを感じ取ったのだろう。ギルド内全体が正体不明の圧力にざわついた。


「おぉ、いたいた」


先日もクレイと一緒にいた棒と箱の2人組がギルドに入ってきて声をかけてきた。


「お嬢、いつも言っとりやすが、その呼び出し方、何とかならんのですかい?」

「不快だな」

「あら、あなた達はいつから私に口答えできるようになったのかしら」

「そんなの今更でしょうよ。口答えされたくなかったらご自分の立場を弁えてくだせぇ。で、何用で?」

「騎士団にドラゴンの討伐指令はあったかしら」

「ドラゴン?そんなもん、ここ数年はありやせんぜ」

「皆無だな」

「そう、それは困ったわ」

「何か問題でも?」

「えぇ。これからドラゴンを狩ってBBQをしようと思ったのだけれど、肝心のお肉がいないのではお話になりませんわ」

「BBQ?何するかは知りやせんが、いつもみたいに勝手に探しに行けばいいんじゃないですかい?姫さん、たまに1人で狩っとりやすでしょう」

「時間があればそれもいいのですが、3日程で戻らなければススム様のお仕事に支障がでてしまいますわ」

「俺の仕事?」

「えぇ、次のピエール・ド・アンサンブルへの仕入れは3日後でしょう」

「え……お、おう」


ピエール・ド・アンサンブルってのはピエールの店の名前だ。

って、なんでクレイが仕入れの日を知ってんだ!契約を決めたのってついさっきだぞ!


「どうかなさいました?」


クレイは屈託のない表情で俺の顔を覗いてくる。


「いや、うん。なんでもない」


たまたま、そうたまたまどこかで知ったんだろう。

もしかしたらクレイはピエールと親しい間柄なのかもしれないし。ピエールの店は王都一の高級店だ、なんか高級っぽそうなクレイが御用達にしていても何ら不思議じゃない。


それよりも今は狩りの話だ。クレイに任せてるととんでもない所に連れていかれてしまうぞ。


「なぁ、ドラゴンなんかじゃなくていいから。もっと手頃な魔物はいないのか?近場で弱めのやつなんかがいいかな、なんて…」

「あら、そうですか?ススム様がそう仰るのなら異存はありませんわ」


おや、随分あっさりと受け入れてくれた。私は上級の肉しか受け付けませんわ的な事を言われるかなとも思ってたんだけど。まぁでも考えてみればクレイはアーヴァインの料理も食べてたもんな。


「それならマッドボアなんてどうです。馬で1時間も走れば狩場に行けやすし、ガラマッドボアなら中々の肉質ですぜ」


と、棒が提案した。

マッドってなんか凶悪そうだけど、大丈夫なのか?あとその後に出てきたガラマッドとかいうのも穏やかじゃない。


「たしかに手頃ではありますわね。ススム様、いかがでしょう」

「えっと、そのマッドボアってのはすごく強かったり凶暴だったり、えと…危なかったりはしないのかな?」

「心配いりませんわ。マッドボアはまっすぐ走るしか脳のない脆弱な魔物ですわ」

「お嬢から見たら脆弱じゃない魔物なんておりやせんがな」


棒が小馬鹿にするように笑いながら嫌な一文を添える。


「けどまぁ安心しな、マッドボアの討伐はDランク。その辺の冒険者でも狩れる獲物だ」

「うんー、じゃあそれにする?」

「えぇ、それではマッドボア討伐のクエストを受注致しましょう」


そういってクレイは掲示板から剥した依頼書を俺に差し出す。


「え、俺が受注するの?」

「えぇ、ススム様の冒険者ランクの足しにして頂ければと」

「クレイ達は?」

「その依頼では私のランクには影響致しませんので、お気になさらず」

「そうなのか」


そりゃそうか、騎士団の団長だもんな。高ランクなのは当然だろう。


言われた通り、マッドボアのクエストを俺1人の名義で受ける。


その後、クレイの連れが用意した馬車に乗りこみ、いざマッドボアを目指して俺とクレイ、お供の2人にリリも含めた5人で街を後にした。

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