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16 初給金のすすめ

俺が冒険者ギルドに入ると辺りがざわめいた。


まぁそりゃそうだろうな。昨日の今日だ、仕方ない。


そして懲りずにまたキノコ採取のクエストを受注するのだからもはや救いようがない。


昨日の行動にはやはり悪意があり、今日もテロを起こそうと思われても仕方ない。誰だってそう思う、俺だってそう思う。


お、昨日もキノコを納品していたキノコ頭の男…ミスターキノコと命名しよう。そいつもキノコを納品しつつ受付嬢と俺を見てコソコソと話している。


そう邪険にしないでくれ、今日からは同業者だ。


皆からの白い目から逃げて拠点の洞穴に戻る。


人は日々成長する。昨日の俺とは違うのだよ。


クエストを確実にこなすための秘策……というほど大それたものでも無いけど。


俺はキノコを無限に増やせる。だが昨日は増やすためのサンプルを採取する時点で失敗した。


その反省を生かして今日は確実にクエルダケを入手する。


そう、なにも森へ行って探さなくてもいいのだ。1本あればいいのだから買ってしまえばいい。


とは言ってもクエルダケもタダじゃない。まずはクエルダケを買うための資金を得なければならない。

酒場にあれば良かったんだけど、あいにく取り扱ってなかった。じゃあと金を借りようと頼んだけど断られた。あの筋肉じじい、図体の割にちいせぇ野郎だ。


まぁお金の工面も考えてあるがな。


洞窟内で手をかざしてイメージする。


するとポコポコとかわいい音を立てながらキノコが生えてくる。


これはクエルダケじゃない、昨日も創って大事件の引き金となったヒカルダケだ。


俺の洞窟は1度創ったものなら、その後はいつでも創る事が出来るみたいだ。


なぜまたヒカルダケを創ったのかというと、これを納品するためだ。


食用ではないがいろんな道具の材料になるらしく、納品クエストが常時出されている。クエルダケより報酬は安いけどね。


まずはヒカルダケを創る、それを納品して軍資金を得る、そのお金でクエルダケを買う。そしてクエルダケを増やす。序盤・中盤・終盤、隙のない完璧な作戦だ。


そんな妄想に現をぬかしてよそ見しているうちにいつの間にか大量にヒカルダケを作ってしまっていた。


部屋を埋め尽くすヒカルダケに驚いてひるんだ拍子にひとつを踏みつけてしまう。ヒカルダケは閃光を放ちながら破裂、連鎖的に部屋中のヒカルダケが一斉に破裂して俺は白い光に包まれた。


作戦は完璧だったが俺の心は隙だらけだったようだ。


意識を取り戻した俺は再び、慎重に必要個数のヒカルダケを創造、採取して無事に納品を終えた。


手の中の銀貨を握りしめる感触を噛みしめる。


この世界で初の稼ぎだ。


初めてのバイトで初給料を貰った時もこんな気持ちだったかもしれない。めっちゃ嬉しい。


さて、感動もいいけどこのお金は足掛かりに過ぎない。


俺の真の目的はここからだ。


と言いたいところなのだが、ヒカルダケの閃光を受けて半日意識を失っていたせいで残念ながらもう夕刻、市場に来てはみたがどこも店をたたむ準備をしていた。


仕方ない、今日はここまでにしておくか。


そう決めて、手元の銀貨を眺めて、またニヤけた。



キノコ増やしたり、自爆したり、小銭を握りしめてニヤケたり、中々の奇行っぷりを発揮している気がするが、リリは何一つ口出ししてこなかい。

何だか付き合わせているのが申し訳なくなって、無理してついてこなくても大丈夫だと言ってみたんだけど、その度に「ん」と短い返事をするだけで、結局ヒカルダケを納品するまでずっと一緒にいた。


クレイに言い付けられてるからだろうか。次からはクレイがいるうちに無理させないよう話をつけよう。


付き合ってくれたのだからとお小遣い気分で報酬を少し分けて渡すと不思議な顔をされた。


リリはもうちょっと子供らしくしてくれてもいいと思うんだけど。無口に無表情、俺が話しかけなければほとんど口を開くことも無くて何考えてるのかよくわからない。


ただ、今日もキノコが生えてくるのを見ている時はちょっと楽しそうな顔してたから、そのうち王城がキノコで埋め尽くされていく様を見せてあげようと思った。




今日も夕食はリユースコレクションの拠点で貰う。

そういやここって店の名前あるのかな。一応、ギルド員以外の客も来るには来る。

いつもより早い時間の店内は静かで、物騒な普段とのギャップに違和感を覚える。


店内には俺一人で、奥からはアーヴァインが仕込みをしている音が聞こえる。


食事を終える頃にはちらほらと他のギルド員が戻ってきはじめたが、特に会話するほどの仲のやつがいる訳でもないし、というかむしろ関わり合いになりたくないので早々に寝床の洞穴に戻った。



さてと、


俺は尻ポケットから一冊の本を取り出す。


この世界に来た時に手元に落ちていたマニュアル本、『ダンジョンマスターのすすめ』だ。


早急に目を通すべきものだったが、なんだかんだで今まで暇がなかった。


チュートリアルの2まで目を通しているが、内容は『穴を掘る』と『土を操る』だった。それと飛ばし読みして見つけた『キノコを増やす』を覚えている。


とりあえずは順番に目を通すか。


そう思ってチュートリアル3のページを開く。



チュートリアル3『穴を閉じよう』


自分で掘った穴は好きに閉じることが出来るぞ。



……………もうやったわ!


この世界で目覚めてわりとすぐにやったわ。役に立たない情報だ。


まぁ、一応読むか。


穴を閉じることで雨風をしのいだり、隠れたりすることが出来るぞ。

全方位を囲んでも窒息することはないからひきこもりなあなたに最適。


やかましーわ、誰が引きこもりだ。


たとえ引きこもるとしてもそんなひきこもり方はしない。全方位が土ってもはや冬眠じゃねーか。熊か俺は。


穴を閉じる程度のことなら2番目に、むしろチュートリアル1と一緒に教えてもいい程度の内容だ。


なんで一旦棚作り挟んだ?


はぁ、次行くか。


お、これは――


チュートリアル4『罠を作ろう』


実践で役立ちそうな内容きたー!そうそうこういうのだよこういうの!


なになに、


土操作を利用して罠を設置してみよう。

罠をたくさん設置して冒険者の侵攻を阻むんだ。

慣れてきたら自分流にアレンジも加えてみよう。


同じページに例としていくつかの罠の挿絵が載っていた。


早速試しに作ってみよう。


罠をイメージしながら手をかざす。


が、何も変化は起きない。


まぁ当然といえば当然だ。罠なのだから見た目でバレるようでは意味が無い。


とはいっても、俺自身も見た目ではちゃんと罠ができているかわからない。そこにあるってのは感覚的に感じられるんだけど。


恐る恐る片足を伸ばしてつま先で地面をつつく。


もうちょっと先かな。このへんかな――


「ごきげんよう」

「うわぉ!」


変な体勢で足を伸ばしているところに急に声が聞こえて驚いたのと、恥ずかしくて反射的に誤魔化そうと思ったせいでバランスを崩してしまう。

この床を踏めばどうなることか、踏めばわかるさ、俺は踏む前からわかっているが、踏ん張り切れずに倒れた俺は地面を突き抜けてゆっくりと穴の中に姿を消した。


恥ずかしい、穴があったら入りたい、今まさに入ってるけどな。

読み返して何となく気になった部分を適当に加筆したので、読みにくい構成になってたらすみません。


色々書いてたから今日は2話しか更新できんかった………

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