25歳の秋
九月の棚卸しが終わり、一息ついたので市の子宮頸癌検診を受けたが、その結果が届いた。
私は人生について、たまたま先輩社員からもらった地元の情報紙を握りしめながら考えていた。
今の職場に入ってからこれまで、土日祝日の出勤要請はなかったものの毎月の平均残業35時間、棚卸しや繁忙期は40時間以上と朝から晩まで働いて、家と会社の往復をし、一人暮らしなのに自炊をする気力もなし、7歳以上歳上の先輩社員達からのダメ出しの日々。
たまに気晴らしで同期や友達、職場の女性達と飲みに行き、年に1回旅行に行くそんな毎日で良いのだろうかと。
無料だからと気軽に行った検査で
検査後の女医さんの説明を思い出してみる。
「子宮は綺麗だけど、卵巣の右側が少し腫れていますね。」
女医さんは診察画像をみながら淡々と説明を続けた。
「今は3センチくらいの小さいものだからなくなる可能性や見間違いもあるかもだからまた検診に来てください。これが大きくなるようなら手術です。」
見間違いの可能性もあると言われたが届いた検査にはしっかりと「卵巣腫瘍」と記載がされていた。
検査結果を改めてみるとショックが強かった。
まさか自分が婦人科での病気になるとは思わなかった。
今まで入院保険にはいってはいても自分が手術をする将来なんて考えたことも無かった。リーマンショックがあった頃で内定切りがあると言われる中、先輩社員達からダメ出し、仕事の押し付けを受け、同期が何人か辞めても必死に頑張った結果、体調を悪くした。
今は両親がいるけどこれから先、もし私は誰とも結婚しなかったら入院の保証人はどうなるのだろう、もし親が介護になったらどうする、もしまたリーマンショックのような不景気になったらどうする。周りもドンドン結婚し、もし私が定年まで会社に勤めたら私には何が残るのだろう。数百万ぽっちりの退職金だけではないか。
結婚する人や寿退社の人を何人か見送ってきたが、私もこれまで彼氏はいなかったけど、いつかは誰か良い人と結婚して子供を産むんだろうなとぼんやり思っていたが
そのいつかがくる前に卵巣が腫れた。
ガラケーの写真フォルダのデータでは、彼女達が輝いて見えた。同時に世界から取り残された気がした。
ふとグルグル同じことばかり考えていたら既婚女性先輩社員の言葉が頭によぎった。
「私もあんたも深キョンじゃないんだから、自分からいかないと。今から結婚相談所に登録しなさい。」
おとぎ話のお姫様が王子様に幸せにしてもらうシーンを大体の女性は憧れていると思う。
しかし、シンデレラを思い浮かべてみた。
彼女は舞踏会に行って、故意でないにしろガラスの靴を落とした。たまたまそれを拾った王子が彼女に一目惚れをし、彼女を探しだして二人は結ばれる。
それならば深キョンでない私はガラスの靴を沢山落とすために舞踏会に沢山行かないとなのではないのだろうか、場合により深キョンではない私はガラスの靴のデザインをこった物にしないといけないのだろうかと考えた。
時は金なり、思い立ったら直ぐに行動。
手の中にある情報紙には12月上旬にて京都の京都駅の近くにある、ホテル主催の婚活パーティーの記事が記載されていたので申しこむことにした。