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覚悟の違い

 「十二区のメインストリートだというのに妖魔がいませんね」

 「おそらく今は冬眠期なんだろ」

 「冬眠期……?」

 「なんだ、知らないのか? 安定した巣穴は活動期と冬眠期を交互に繰り返す。巣によってそのインターバルは違うんだが叩くなら今が絶好のチャンスってわけだ」

 そうは言いつつも祥雲は警戒を怠らない。祥雲たちが今いるのは鉄山との合流予定ポイントだったが、そこに鉄山の姿はなく祥雲は漠然と嫌な予感を募らせながら周囲の様子を注意深く窺っていた。

 「マジか……」

 目の端で捉えた僅かな違和感。祥雲は慌てて半壊した建物に駆け寄った。

 「遅かったな。けっこう派手にやられちまったぜ……」

 「なにがあった?」

 「いやまぁ、ちょっとな……」

 リビングで豪快に大の字で倒れていた鉄山。

 激闘だったらしく法衣は半壊し、右肩に至っては素肌のほとんどが剥き出ていた。

 「察するに妖魔とやりあって苦戦したってわけでもなさそうだな」

 「当たりめえよ。ここいらの妖魔なんて俺の手に掛かればイチコロよ」

 「って事はつまり……」

 「琴音ちゃんだ。ヒトキリと戦いたければ俺を倒していけと言ったらご覧の通りコテンパンにやられたってわけよ」

 「くだらん嘘をつくな。実力はどう考えてもお前の方が上だろう」

 「そりゃ平常時の話だろうが。覚悟を決めた奴の強さは半端ねえ……。こっちは加減してやってるってのにそんなのお構いなしに全力で殺しにきやがるんだからな」

 まともにやり合えば鉄山が琴音に敗れるという結果はまずあり得ない。

 だが事実として鉄山は琴音に敗れた。

 それは覚悟の違い。殺す気で戦う者とそうでない者。

 実力を発揮するという意味において両者の間には明確な違いがあった。

 「立てるか?」

 「手ぇ貸してくれたらな」

 祥雲が差し出した手を取り立ち上がる鉄山。格下だと目した琴音に敗れたことがよほどショックだったのか、普段の饒舌はすっかりナリを潜めていた。

 「ここから巣穴まではまだ距離があるな。走れるか?」

 「こちとら余力を残して戦ったんだからそんぐらいは平気だ」

 「よし、では急ぐぞ」

 連戦で霊力が落ちているとはいえ祥雲の気読陣でも捉えられなほどの距離。

 焦る気持ちを律しつつ祥雲は弟子の無事だけを祈り目的地に急いだ。

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