琴音VS鉄山
かつては人が住んでいた痕跡を色濃く残す十二区跡地。ゴーストタウンと化した町を往く琴音は細心の注意を払いつつ巣穴を目指していた。大通りに面した店のいくつかは十二区が拠点としてその役割を果たしていた時に訪れたことがあったが、今やそのいずれもが見る影もないほど荒んでおり琴音はそのことに心を痛めつつも打倒ヒトキリを胸に自らの気持ちを奮い立たせた。
「よお、まさか琴音ちゃんだけってことはないよな?」
待ち伏せるように現れた男は行く手を遮るように琴音の前に立ちはだかる。
「鉄山さん!」
「これ以上進むとヒトキリの警戒網に引っ掛かるぜ」
「では一緒に行きましょう」
「悪いがそれはできない相談だ」
「なぜ……?」
「率直に言う。琴音ちゃんでは足手まといなんだよ」
鉄山にとって琴音だけが来たというのは想定外でしかなかった。
予定では祥雲、不測の事態なら瑠璃でもよかったが琴音は戦力として論外。
とてもじゃないが琴音と組んでヒトキリに挑む気になれなかった。
「そうゆうことでしたら私一人でやりますのでそこを通して下さい」
「残念だがそれもできない相談だな」
「どうして?」
「俺が琴音ちゃんのファンだから死んで欲しくないって理由ならどうだい?」
「押し通ります」
「おいおい、マジかよ」
「私の邪魔をするのならあなたは〝人〟ではなく〝物〟です」
「可愛い見た目に反して強情なんだな。馬鹿な師匠の影響か? やれるもんならやってみやがれ」
普段の飄々とした様子はすっかりナリを潜め鋭い目付きで琴音に凄む鉄山。
お互いに引くといった選択肢はなし。
琴音は静かに腰から二雪を抜くと鉄山相手に刃を向けた。




