閻魔大王様、登場
「ふわぁ~ぁ、うるさいですねぇ。小野さんがそんなに怒るなんて、何事ですかぁ?」
廊下からひょっこり顔を覗かせた、5歳位の少年があくびをしながらそう言った途端、ぴたっと怒鳴るのを止めた小野さんが床に片膝を次いで少年に頭を下げる。
「お騒がせして申し訳ありません閻魔様。死神課の新人が、間違って別人の魂を狩ってきてしまいました」
そう言った小野さんの横で、がたがた震える土下座ーズを白い目でちらっと見た少年は、
「えぇ~、大問題じゃないですかぁ。そちらの方ですか、私の部下が大別申し訳ありませんでした」
と、私の前に来ると、きっちり頭を下げて謝ってくれました……え~と、死んだのはもうしょうが無いですけど、この美少年が閻魔様?
「今更生き返れる訳でもないみたいなので、もういいです。それより私、これからどうなるのでしょうか?」
私の言葉にほっとした顔をした少年が、小野さんと何かそうだを始めました……魂の消滅って痛いのとか苦しいのは嫌なんだけどなあ。
「高木さん、貴女の魂は輪廻の輪を外れてしまったので、このままでは消滅してしまいます。もし良かったら、新しい体を用意するので閻魔庁で働いてみませんか? 実は今、ここは人手不足で困ってるのです、どうかお願いします」
「高木さんの魂はまだまだ若いから、消えちゃうのは勿体ないですぅ。だから、お願いしますぅ」
申し訳なさそうな顔の小野さんの横で閻魔様もそう言ってくれてるし、人手不足の会社が大変なのは分かるしね、私で出来る事があるなら閻魔庁でお仕事しましょうか。
「はい、よろしくお願い致します」
「ありがとうございます、たすかります。では、新しい体をご用意いたしますので、こちらにどうぞ」
小野さんに促されて応接室を出る時、ふっと振り返った私の目に映ったのは、未だがたがたと震えながら土下座している2人と、さっきまでのニコニコ笑顔が嘘のような冷たい目をした閻魔様の姿でした。
「さてと、君ですかぁ間違って別人の魂を狩ってきたのはぁ。指導係は、何を教えたんですかねぇ、課長さん? 君も、魂を間違うような人は死神に向いてませんからぁ、転職したらどうですかぁ?」
間延びした口調に、白いフリル付のシャツ、サスペンダー付の黒い半ズボンという、どう見ても七五三か小学校の入学式にしか見えない5歳位の美少年が、蔑んだ冷たい目で土下座を続ける男達に声をかける。
「ふ~ん、合コンに遅刻しそうで焦ったからぁ、間違っちゃったんだぁ。それでぇ、僕に何か言うことは無いんですかぁ」「「申し訳ありませんでした~!」」
「謝って済むんだったらぁ、僕の仕事は要らないんじゃないかなぁ? 課長さんはぁ、重罪人監獄の掃除係に左遷で新人君はクビね」




