第4話
「良かったね」
「うん、綺麗だった」
「また、来年も来ようね」
駅で、優理子を待つ俊幸の耳に、ルミナリエへ行って戻ってきた人達の声が届く。
俊幸は携帯を取り出すと、また、時間を確認した。優理子から電話があってからもう30分。9時半を過ぎていた。
「はぁー」
俊幸は大きく1回息を吐き、それから、優理子の番号をダイヤルし始めて、少し迷った後、携帯をまたポケットへと戻した。もし、また繋がらなかったら・・・と、怖くなったのだった。
今の俊幸には、もう待つことしか出来なかった。
「もう来るはずないか・・・」
俊幸は小さく呟くと、駅の構内を出て、東遊園地へと歩き出した。
夜の10時。さすがに人通りも少なくなっていた。
東遊園地へと続くフラワーロードも、クリスマスという事もあってか、それなりにライトアップがされていた。けれども、それは、俊幸の心をとても寂しくさせた。
この道を、優理子と歩きたかったなぁ。
俊幸はそう思いながら、自分の気持ちを整理していた。ルミナリエに来ないという事が、優理子の返事なのだろうか? もしかすると、優理子は、今日、俊幸がはっきりとした返事を求めている事に気づいていたのではないだろうか? だから、来なかったのではないだろうか? 俊幸は、ふとそんな気がした。そして、そう自分に言い聞かせていた。そうでも思わないと、やっていられない気分になりそうだった。
俊幸が東遊園地へ着くと、もうライトアップは終わり、辺りは暗くなっていた。けれども、ルミナリエのイルミネーションの名残が残っているのだろうか? それとも、周りのビルの窓からこぼれる光のせいだろうか? うっすらと、けれどもはっきりと周りの人達の顔を見ることが出来た。
ライトアップも終わっているというのに、そこは、若者の集団とカップルで賑わっていた。12月最大のイベントの日だからであろうか? 10代後半くらいの若者の集団が騒いでいた。少しお酒も飲んでいるみたいだった。そして、そんな中、まれに小さい子供を連れた家族の姿が目についた。けれども、俊幸のように1人で来ている者は居なかった。
俊幸はケジメをつける為とはいえ、1人でこの場所に来た事をとても後悔した。あのまま電車に乗り込み、帰るべきだったと思った。
いつしか、俊幸は涙目になっていた。
「これでいい。これでいいんだ。好きじゃないのに、無理に付き合ってもらっても、辛いだけだから」
俊幸は、そう自分に言い聞かせ、そして、帰ろうと振り返ったその時だった。
「優理ちゃん・・・」
俊幸の目の前には、優理子が立っていた。