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大切な人  作者: erika
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第1話

12/6から毎年恒例のルミナリエが始まりました。

関西で生まれ、関西で育ち、震災も体験した筆者が色々な気持ちで過ごした2000年の12月に書いた作品。

あなたの大切な人が誰か見つかるといいですね?

「うー、寒っ」

  俊幸は、ダウンジャケットを羽織り直すと、両手をジーパンのポケットに突っ込んだ。

  日曜日、夕方6時過ぎの三宮駅。今日は、クリスマスイブという事も重なってか、いつもよりも人が多かった。いや、それだけではない。この季節、この時間、こんなにも人が多いのは、今日が、毎年、恒例となっている神戸ならではのイルミネーション、ルミナリエの最終日2日前だからだった。その為、駅は、ルミナリエを見るために集まった人々でごった返していた。

  優理子とは6時に待ち合わせていた。けれども、まだ姿は見えない。

  3日前、俊幸は、断られるのを覚悟で、優理子に、「クリスマスイブに会わないか?」と電話した。「一緒に、ルミナリエを見よう」と誘った。けれども、優理子の返事は、今ひとつだった。

「バイトがあるから」

  それは、決して嘘ではないだろう。けれども、それが好きな相手なら、「遅くなってもいい?」と聞いてくるはずだった。けれども、優理子はその言葉を言わない。


  俊幸は、仕方なく、もう一押ししてみる。

「何時に終わるの?」

「んー、たぶん5時」

  優理子は、生半可な返事をした。

  自分のバイトの事だろう?たぶんって何だよ、たぶんって・・・ 俊幸は、ため息が出そうになるのを抑えて、続けて押す。

「じゃ、その後にでも、会わない?」

「・・・・・・」

  やっぱり、優理子からの返事はない。

  即答してもらえるなど思っていなかった。それは、優理子に告白した時からわかっていた事だった。俊幸は、1ヶ月程前に、優理子に告白していた。そして、その時の優理子の返事もあいまいだった。だから、優理子のそのあいまいな返事は、ある程度は覚悟していた。けれども、無言になるのは、少しずるいと思ったりもする。嫌なら嫌だと言って欲しい時もあるのだ。

「会って欲しいんだけど・・・」

  少しの沈黙の後、優理子は仕方ないという風に、鈍い返事をした。

「んー」


  俊幸は、まだ一度も、ルミナリエを見た事がなかった。いつも、なぜか、このシーズンになると、1人になり、幸せなクリスマスを過ごした事がなかった。

  2000年のクリスマス! 今年こそは、一番好きな人と、一緒にルミナリエを見に行きたい! 俊幸は、そう強く思っていたのだった。だから、何が何でも、優理子と行きたかった。そして、勇気を出して電話したのだった。

  断られるかもしれない・・・

  俊幸は、そう思っていた。けれども、心のどこかでは、もしかするとという期待がないわけでもなかった。けれども、優理子ははっきりとした返事をしなかった。優理子は、いつも、どっちつかずの返事をする。そして、今回も、どっちつかずのまま、とりあえず6時に駅でと約束された。

  優理子が、生半可な返事をするには訳があった。要は、俊幸の事が好きではないのだ。世間では恋人同士が楽しく過ごすであろうクリスマス。そんな日に、彼氏でもない相手と過ごしてくれる訳がないのはわかっていた。けれども、俊幸は、それでもいいと思っていた。ずっとそれでもかまわないと思っていた。そう思いながら1年を過ごそうとしていた。けれども、それも、そろそろ限界だった。

  クリスマスイブに会って、ルミナリエを見て、そして、雰囲気が良くなった時に、もう一度告白! 今日こそは、きちんと返事をもらうつもりだった。なんとなく、そういうムードで持っていくと、いい返事がもらえるのではないか?と期待していたのだった。 

  けれども、実際は、クリスマスでなくても良かった。雰囲気に、ムードに、イルミネーションに頼ろうなどとは思っていなかった。ただ、告白の返事がO.Kじゃなかった時に後悔したくなかったのだった。断られるかもしれない、そう思うからこそ、最後の思い出として、ルミナリエを持ってきたのだった。


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