嘘吐きの恋
「好きですよ」
嘘吐き。
彼方が好きなのは私じゃなくて、違う人だってことぐらい知っている。
「何度も言ってるじゃないですか?」
いつになったら信じてくれるんです、と。
それが嘘だと理解しているのに、その嘘ごと理解しろと、彼方は言う。薄く微笑う表情の下。目の前にいるのは私のはずなのに、彼方の眼は、私ではなく違う人を見ているんですね。
ああ、所詮。私は身代わり人形なのです。
彼方が望むのなら、私はそれにすら気がつかない振りをし続けましょう。
「 」
彼方が呼ぶ声は、決して、私のモノにはなりはしない。
「好きですよ」
それが解っているのに、あえて、私は彼方に騙された振りをする。
「いつになったら君に、この想いは届くのでしょうね」
「さあ」
本当。
嘘ばかりの恋でした。