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逆転戦争4

ザシュッ

右腕に鋭い痛み。

見ると、見事に斬られていた。

だが、見えなかった。

何故だ?

「チェックメイト、だ。少年」

鎌鼬の男は、そう言った。

不味い。

そう思い、咄嗟に距離を取った。

鎌鼬が頬を掠めたらしく、血が伝う。

このままでは、負ける!

舌打ちしたい衝動に駆られる。

待てよ…?

確か鎌鼬は、日本では…

『体を物にぶつけても触れてもいないのに、鎌でできたような切り傷ができる現象。厳寒時小さな旋風の中心に生じた真空に人体が触れて起こるといわれている』

と、まあこんな感じだった。

同じ現象でおきているのなら、鎌鼬の周りは冷たいのでは…

俺は一縷の望みに縋り、目を閉じた。

「諦めたか?まあ、いい」

男の声がする。

集中して、気温が急激に下がっている所を感じるんだ…!

────右前方から、接近している!

それさえ見切れればいい。

どうやら一度に何個も作れないようだったので、これさえ避ければ…

俺は左前方に飛び出し、鎌鼬の男に長剣を向けた。

驚いた表情をしている。

反面俺は、薄く笑っていることだろう。

真っ直ぐ首に、長剣を突き刺す。

血飛沫が上がる。

俺は正面からモロに血を浴びた。

これで少しは敵の動きが鈍るはず。

なんせ指揮官を殺ったのだ。

周りの数人が指揮官の様子に気づき、動揺する。

このまま、うまく行けば動揺がひろがり、隙になるのだが…

「そう上手くはいかない、か」

構わずに猛進していく者が大半を占めている。

「!」

背後から、僅かな殺気。

慌てて左に飛ぶと、さっきまで俺の首があったところに、ナイフが飛んできた。

飛ばしたのは───

指揮官(そいつ)を殺ったところで、何も変わらない。私達は、ほとんど個人で動いている」

強い信頼関係の上に成り立つ、鉄壁。

俺にそれを言ったのは、少年と見紛う容姿の、少女だった。

だからと言って侮れない。

ナイフの攻撃だって、ギリギリで躱したにすぎない。

───強い───

その目はどこまでも(くら)くて。

その顔はどこまでも虚無だった。

空虚な人形。そんな印象を与える少女。

「子供を殺るのは趣味じゃない」

そう言うが、俺の額には冷や汗が滲んでいた。

「なら黙って殺されて?」

少女ならではの、少し高い可愛らしい声。

どうやら衝突は避けられないらしい。

黙って剣を構える。

少女は何も動かなかった。

暫くそのまま見つめ合う。

「やーめた」

少女はいきなり声を出した。

「君が必ず、マッドファミリーを鎮圧するなら、わたしは君に付くよ」

その言葉に、俺は少し拍子抜けした。

「いいのか?」

「勝つ方に付く。それが賢い生き方」

少女は薄く微笑んだ。

「名前、聞いてもいいか?俺はユキだ」

「わたしは胡蝶だよ。よろしく、ユキおにいちゃん」

微笑んでも、昏い眼光は変わらない。

それが気に掛かったが、あまり踏み込まないことにした。

あくまで、いつ裏切られてもおかしくない同盟、という認識にしておこう。

「武器は?戦えるか?」

「うん。でも武器は言わないよ。まだ信用しきってはないから」

疑っているのは向こうも同じか。

「それでもこの軍勢を全滅させるというのは非現実的だな。何か良い案はないか?」

雄叫びを上げ突っ込んでいく敵軍を横目で確認する。

「わたしも、あんまり死人は出したくないな。どうしよっか」

ふむ、頭脳としてはあまり使えないかもしれない。

まあそりゃそうか。まだ10歳前後の少女だ。

期待するのはよくない。

「取り敢えず全員気絶させる?」

「どうやって?」

胡蝶は少し間を空けてから答えた。

「一人ずつ?」

呆れた。

「殺す方が楽だろ、それ」

いや待てよ、と俺はしばし黙考する。

「取り敢えず止めれば良いんだろ。…なら、出来るかもしれない」

ニヤリと笑う俺に、胡蝶は肩をすくめてみせた。

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