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逆転戦争1

いつものように諸々の武器を仕込み、街を歩く。

時間はもう夜なので、辺りには人が少ない。

依頼人との待ち合わせ場所には、既に大人なムードの女性が。

「貴方が…虐殺王?もっと大男かと思ってた」

よく言われますよすみませんね小さくて。

「それで、依頼は警護でいいんですよね?セシリアさん」

「はい。今から半日だけ」

表情が乏しく、感情が読みづらい。

いきなりクルリと背を向けて、セシリアさんは歩き出した。

俺もそれに着いて行く。

その時。

殺気!?

何処だ、何処に潜んでる!?

少し離れたビルで、狙撃銃のスコープが光る。

あそこか!

俺は咄嗟に彼女を押し倒す。

銃弾は、俺の背中スレスレを通過した。

タァン…

遅れて発砲音が響く。

「取り敢えず逃げるぞっ!」

セシリアさんの手を掴んで、走る。

だが、圧倒的に遅い。

仕方ない。

「キャッ!」

ひょいと抱え上げる。

可愛い悲鳴だな。

そのまま、全速力で走る。

あ、やべ。何処行こ。

兎に角俺は当てもなく走って走って走って────

安全だろうと思われる所まで来て、セシリアさんを下ろした。

「えと…すみません」

「いえ…」

何だか気まずい。

取り敢えず話題────

「狙ってた奴、心当たりとか有るんですか?」

話題というか、俺が感じた疑問に思っただけなんだが。

「ええ、まあ」

余計な詮索は本来なら御法度なんだが、こんな綺麗な女性を狙うなんて。

「格安で、其奴ら根元から潰してきましょうか?」

単なる提案。

殺気を一切隠していなかったことから、狙撃の腕はいいが素人だろう。

「お願い、出来ますか?」

上目遣いで不安そうにこちらを見てくる。

「ええ。取り敢えず今は何処か安全な所に」

セシリアさんの手を取り、歩く。

周囲への気配りは忘れない。

僅かな殺気でさえ見逃すまいと気を張る。

安全な所、か。

この辺の地理は分からない。

ので、俺の今泊まっているホテルへ行った。

幸い、狙撃はされなかった。

「狙撃してきた奴らは、何者なんですか?」

普段より少し優しい声で、尋ねる。

「恐らく、マッドファミリーです」

その名前は、聞いたことがある。

この辺では有名なファミリーだ。

しかし、妙だ。マッドファミリーが、あんな柔な狙撃手を雇うか?

確実に遂行したいなら、もっと優秀な狙撃手を雇うはず。

分からない。

それは行けば分かるだろう。

「何故、セシリアさんを狙うんでしょう?」

「それは…」

桜色の唇から、次に紡がれる言葉を待つ。

しかし彼女は、口を噤んでしまった。

嫌なら言わなくていいですよ、と言おうと口を開きかけると、セシリアさんは茶封筒を差し出してきた。

差し出し人は『マッド ブルーム』。

マッドファミリーの奴だろう。

「開けても?」

蒼銀の髪を揺らしながらに頷いたのを確認し、そっと開けた。

中には幾つかの写真と、便箋。

取り敢えず、便箋を開いた。

『セシリア・リース様


我々マッドファミリーは、貴女のある情報を手に入れました。

巧妙に隠されておりました為、調べることに時間がかかりましたが…


我々は、貴女をカナユリ和平王国の姫君、シャルロット・クラクストン様とお見受けしました。

ご存知の通り、カナユリ和平王国とマッドファミリーは敵対関係にあります。


そこで、敵方の最高権力者及び、重要人物である貴女を、暗殺することに致しました。


なお、こうして書状を認めましたことは、呉々もカナユリ和平王国の精鋭には告げ口せぬよう、お願いします。


P.S. 同封の写真は、貴女がシャルロット・クラクストン様である証拠の写真です。

捨てていただいても構いません。


マッド ブルーム』

便箋の上部には、漆黒のシルクハットとその背景にmadと書かれた印があった。

おそらくマッドファミリーの紋だろう。

…というか。

「セシリア、というのは偽名だったんですか、シャルロットさん」

しかもカナユリ和平王国の姫。

そりゃあ驚いたが、表情には出さない。

僅かに顔を伏せたのを横目に、写真を取り出す。

明らかに盗撮であると分かる写真。

シャルロットさんが蒼のドレスを身に纏っている。

頭上にはティアラ。

庭園で撮られたものや、城の前で撮られたものなどがある。横顔がアップで写っているものも。

俺は取り敢えず封筒に直し、返した。

「私の国、カナユリ和平王国は今、マッドファミリーと敵対しています。ご存知とは思いますが、カナユリは大きくも小さくもない国。今もなお肥大しているマッドファミリーに負けるのは、時間の問題。そこで私が直々に指揮を執ったんです。すると、既に押されかけていた最前線が復活、今では逆転して此方が押している状況です。ですが、それもマッドファミリーの急激な肥大により危うくなってきました。いくら指揮を執る能力に長けていても、現状維持、若しくはマッドファミリーの制圧など到底出来ません」

そこで一度、シャルロットさんは区切った。

だが、直ぐに話しだす。

「そこで私は、他国の力を借りました。ここ、ナヤ共和国やアラスト公国、ラシリス連邦です。特にナヤ共和国のアリス姫とは仲良くさせていただいています。我が軍は補強され、マッドファミリーに数の戦法で優位に立ちました。あと少しで制圧可能というところまで盛り返しました。…ですが、それが仇となり、この様な私に対する暗殺予告。そしてそれを阻止する為に、俄かに有名となっている《虐殺王》である貴方に白羽の矢が立ちました」

それで現在に至ると。

成る程、さっぱり分からない。

マッドファミリーってそんな凄い組織なのか?それを俺が潰せるのか?

というか、マッドファミリーがカナユリ和平王国に負けるのを待っていればいいんじゃないか?

悶々と悩んでいると、電話が鳴った。

「もしもし、有希です」

少しシャルロットさんを気にしながらも、電話に出る。

『アリスです。そちらにシャルロット様がいるというのは本当ですか?』

その声には焦りが混じっていた。

「ええ、まあ」

『変わって下さいッ!』

事態は急を要するようだ。

「は、はい…」

俺はシャルロットさんに受話器を差し出した。

「アリスだ」

そう聞いた途端、シャルロットさんは俺から受話器を奪い取った。

「アリス姫!?どうしたのですかッ!?………はい。……えっ?そんなこと……まだそんな戦力が?…はい。分かりましたっ!」

ガチャン、と受話器を乱雑に置いた。

青ざめた表情で、自分の髪を掴んだ。

「落ち着いて下さい、どうしたんですか?」

これは予想以上に緊急事態。

「カナユリ軍の最前線が、たった一人の男に一瞬でやられたと。どうやら今までの兵は、雑兵に過ぎなかったようです。猫の集団から、ライオンが出てきた、と形容していました。ああッ、どうすれば…」

意外にも冷静に、俺は言った。

「マッドファミリーのボスを、俺が潰しましょう」

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