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神を殺すのに必要な弾丸の数は  作者: ハマヤ
-虚無の弾丸-
81/102

戦場のリアリスト

「どうして……お前がそれを……」


 アカツキの言葉に俺は問い掛ける。

 いや、頭の中では理解している。


――The Cake is a lie.


 相手を騙していた事を意味する慣用句ではあるが、FPSプレイヤーにとっては有名なフレーズだ。

 つまり、目の前の魔人は俺と同じ世界観を共有しているという事。


「分かっているはずだ、藤間シライ。俺もお前も同じ源流から生み出されたもの。『FPSのシステムを行使する能力』を持った者だ」


 そう言うとアカツキは右手に銃を呼び出す。

 片手で所持しているが、中型のアサルトライフルのようだった。

 しかしその形状も、俺の知っている銃とは少し違っていた。


「奏をどうするつもりだ?」

「こんな時でも女の心配か。映画の主人公気取りだな。リアル系はこれだから好かん。

 まあいい、一緒に戦った仲だ、教えてやろう」


 アカツキはくくと喉の奥で笑い、告げる。


「人間領の砦だ。オルティスタがあの女にご執心でな。大淫婦直々に迎えに来ている事だろう」

「一体何を……」

「さぁな。具体的には知らんが、オルティスタはあれを『匣の鍵』と言った。俺たちはそれに従うまでだ」

「鍵?」


 しかしそれ以上はアカツキも知らないらしく、答えるつもりもないようだった。


「俺の役目はあの女を確保する事だ。お前たちに関して言えば、特に指示されている訳ではない。

 つまり、ここで殺してしまっても問題はないという事だ」


 アカツキの言葉に、俺とアムダが身構える。

 俺は横目で倒れたイベルに寄り添っているおっさんを見る。


「イベルの状態はどうだ?」

「傷は深いが致命傷ではない。手当を行えば助かるだろう」

「ほぅ、豚の脂肪で助かったか」


 アカツキは楽しそうに軽口を叩く。


「イベルを頼む。俺たちはあいつをぶっ飛ばす」

「任せておけ」


 おっさんの頼もしい言葉を胸に、俺とアムダが飛び出す。

 アムダの右手に雷鳴が走り、それは剣の形を作る。


「雷神剣ヴィーチェ・クライフ!」


 呼び出した雷の剣を繰り出し、アカツキに斬り掛かる。

 アカツキは軽やかな歩調で後ろに跳び、そのまま壁に空いた大穴から外へと跳躍する。


「逃がすか!」

「室内では狭かろう。ここでやってやろう」


 アカツキが中庭に降り立つ。

 花が咲き乱れているが広く、戦うにはちょうどいい場所だった。

 俺とアムダも追うように飛び出し、中庭に立つ。


「気を付けろアムダ。あいつが俺と同じ能力を持つなら、銃を使ってくるはずだ」

「遠距離戦が得意という事でしょうか」

「舐めてもらっては困る、芋砂風情が」


 俺とアムダの会話に口出ししてくる。


「俺をお前みたいな砂専のキャンパーと一緒にされては困る。俺はな――突撃厨なんだよ!」


 アカツキは右手に持ったアサルトライフルを片手で構えると、こちらに向かって発砲した。

 AK74に似たデザインだが、しかし細部が違っている。

 バリバリと凶悪な射撃音に、俺とアムダが回避し、近くの花壇に隠れる。


「雷鳴よ、神の鳥となって敵を打て!」


 アムダが逃げながら魔術を放つ。雷が鳥の形を作り、アカツキへと突き進む。

 しかしアカツキは回避しようとしない。

 魔術は見事に直撃した……かのように見えた。


「魔術が……消えた?」


 アムダが驚き呟いた。

 確かに当たったように見えたが、アカツキに当たる直前、何か光の膜のようなものが現れ、魔術を消してしまった。


「魔術障壁でしょうか」

「いや……あれは見覚えがある。多分、シールドを持ってるな」

「シールド? 盾ですか?」

「いや、エネルギーシールドって言うのかな。あいつのバトルアーマーは自動的に外部の攻撃を防ぐんだ」


 あいつが着込んでいるのはFPSゲームに登場するバトルスーツだろう。

 あらゆる身体能力を上げ、超人的な活動を可能にする戦闘用のスーツ。

 そういうスーツには大抵、敵の攻撃を一定量耐えるバリアのようなものがある。

 俺の言葉に、その通りだとアカツキが答えた。


「俺のこのナノティカルバトルスーツはありとあらゆる攻撃に対し、オートでシールドを展開する。ついでに言えばシールドの耐久量は自動的に回復する。

 つまり、俺を倒したければ、シールドを突破し、さらにバトルスーツの装甲を打ち破らなければいけない訳だ」


 シールドの自動回復か。分かってはいたが厄介な能力だ。

 おそらく、10秒程度でシールドは回復してしまうはずだ。


「そろそろ理解したか? 俺とお前の能力の、決定的な違いをな」

「…………」

「俺はスポーツ系で、お前がリアル系。たとえ同じ力を持っていたとしても、そこが俺とお前の純然たる差だ」


 FPSには大きく分けると二種類に分けられる。

 アクション性が高く、非現実的な動きが可能なものをスポーツ系と呼ぶ。

 もう一つは、現実に即した武器や挙動であり、体力も低く設定されているものをリアル系と呼んでいる。

 同じFPSという括りでありながら、まったく異なるゲーム性になる両者。


「俺から言わせれば、リアル系FPSをありがたがるやつは全員noobだ。戦う腕がない癖に、他人に寄生して生きるゴミ屑野郎だ」

「ご高説は分かりました。要はそのシールドとやらが回復する前に倒せばいいのでしょう?」

「はっ、まあそれで構わんさ。すぐに思い知るだろうからな。俺のナノティカルバトルアーマーを突破するのが不可能だという事がな」


 アカツキがアサルトライフルをこちらに向けて乱射する。狙いを付けている訳でなく、単なる牽制だろう。

 俺が取り出したのは、FA-MASというフランスの軍用アサルトライフル。

 花壇から少しだけ身を乗り出し、アカツキに向かって銃撃する。

 吐き出された5.56x45mmのNATO弾は、しかしエネルギーシールドにかき消された。


「FA-MASとは中々乙な武器を使う。だがその程度のファイアパワーではシールドを抜く事は出来んな」

「ちっ、そうかよ」


 マガジンを打ち切り、俺は再び物陰に隠れる。

 その隙にアムダが横から一気にアカツキに駆け寄り、斬撃を繰り出した。

 神剣がシールドに弾かれ、緑色の粒子が飛び散る。

 さらに返す刃で二撃、三撃と放つと、アカツキを覆っていたシールドが霧散する。

 エネルギーシールドの耐久がゼロになったようだ。

 その隙を逃さず、俺はFA-MASをアカツキに向けると、引き金を引いた。

 もはやシールドは無く、アカツキが受ける事は出来ない。

 だが――


「甘いんだよなぁ!」


 魔神が左手を城の壁面に向けると、左腕からワイヤーのようなものが射出される。

 射出されたアンカーワイヤーは壁に埋め込まれると、今度はそれを巻き取り、飛ぶように移動した。

 弾丸を避けたアカツキは、そのまま垂直の壁に張り付いている。まるでスパイダーマンだ。


「残念。もう少しだったんだがな。アルティマニア並みの紙一重というやつだ」

「逃げ回るのは得意みたいだな」

「くくく、煽りたきゃ屈伸でもしてな」


 アカツキが壁から離れ、地面に着地する。

 シールドは再び回復しているようだ。

 アムダの斬撃でも何度か攻撃する必要がある。中々高い耐久のようだ。


「さてと、準備運動は終わりだ。久しぶりのアーマー装着なもんでな。少し手間取った」


 そう言うと、アカツキは小さくジャンプする。

 ピョンピョンとジャンプしながら、横に移動する。


「何をするつもりでしょうか」


 アムダが疑問を口にするのも無理はない。明らかに異様な動き。

 しかしアカツキは何度もジャンプを繰り返していく。

 先に異変に気付いたのはアムダだった。

 最初は緩慢なジャンプだったのが、少しずつ確実に速くなっていた。


「速度は十分だ。消えろnoob!」


 ジャンプを繰り返し速度を上げたアカツキが、一気にこちらへと向かってくる。

 先ほどまでとは比べものにならない速度に、一瞬虚を突かれる。


「ひゃはは! 遅い遅い遅いィ!」


 アムダに向かい、手にしていた銃を撃つ。

 さらに左手に手にしていたグレネードを、アムダが逃げる方向に向かって放つ。

 青色に輝くグレネードは、アムダの足元で炸裂し、光と共に炸裂。


「プラズマグレネード! 好きなだけ食らえ!」

「アムダ!」


 さらにアカツキが取り出したのは、赤い色のライフル。やはりどことなく近未来的なフォルムの銃だ。

 銃口は大きく、ライフルと呼ぶよりはまるでキャノン。

 砲口に光が収束していく。


「プラズマキャノンだ、吹き飛べ」


 キャノンから光が放たれ、アムダに襲い掛かった。

 だが、アムダなら何とかするはずと判断し、助けに行くよりも、アカツキを狙う。

 FA-MASから武器を対物狙撃銃であるバレットM82に持ち変える。こいつならシールドを剥ぎ取る威力が出せるはずだ。

 腰を下ろし一瞬で狙いを付ける。狙うのはあの野郎の頭。


「…………っ!」


 息を止め、トリガーを引く。

 放たれた銃弾がアカツキを覆うエネルギーシールドに防がれるが、同時にシールドも消滅する。

 すぐさま跳ね上がった銃口を押さえ、二弾目を構える。


「芋砂がチョロチョロしてんじゃねぇ!」


 アカツキが再びショートジャンプを繰り返し、その場から加速していく。

 一瞬遅れて俺の放った弾丸は、アカツキの横を通り過ぎる。

 そのままの勢いで加速したアカツキが俺の方へと向かってくる。


「だったら!」


 俺は銃を収納すると、近接武器であるバールを取り出す。

 威力的にはバールでもあいつのシールドを剥ぎ取る事が出来るはずだ。

 だが、アカツキの顔面の赤いバイザーが妖しく輝く。


「お前がバールなら、こっちはレンチなんだよなぁ!」


 やつが取り出したのは、確かにレンチ。それも巨大なパイプレンチだ。

 バールとレンチが交差し、火花が飛び散った。

 威力はほぼ互角。


「くっ!」

「どうした芋砂ァ! 肉弾戦は苦手か?」


 武器の性能が互角でも、俺とやつでは決定的に違う部分がある。

 それが使い手の能力だ。

 アカツキはバトルスーツによって能力が大きく底上げされている。

 そのままレンチを器用に扱い、俺の手からバールを弾き飛ばした。


「甘いんだよ、糞noobが!」


 アカツキが右足で俺の腹に蹴りを入れる。

 一瞬目の前が真っ暗になるほどの衝撃と痛みが走り、俺の体は後ろに吹っ飛んだ。


「ぐっ……」

「おいおい、この程度なのか、異邦の勇者とやらはよ。

 この程度の連中にレヴァストラやガガスグルーも負けたって言うのか?

 まったく、嘘みたいな話じゃねぇか、なぁ?」


 倒れてうずくまる俺に、吐き捨てるようにアカツキが言う。

 今まで戦ってきた魔神とは何もかもが違う。


「12人いた俺たちが、お前らのせいでもう半分しかいないんだ。

 もっとも、エヴァーレイスたちは既に狂ってたから仕方ないにしてもな。

 もう少し楽しませてくれるかと思ったが……所詮は劣化コピーに過ぎんか」


 そう言うとアカツキは再び銃を取り出す。


「あばよ藤間シライ。こういう時は何て言うんだっけな。ああそうだ――」


 引き金に指を掛ける。


「引く事を覚えろよ、カス」


 撃たれる――

 そう覚悟した瞬間、頭上に気配を感じた。


「ふんっ!」


 空から降ってきたのはブリガンテのおっさんだった。

 アカツキに殴り掛かり、そのまま吹き飛ばす。


「大丈夫か?」

「ああ助かった。イベルの方は?」

「オークたちに預けてきた。何とか助かりそうだ」

「そうか、それは朗報だ」


 立ち上がり、おっさんと並んでアカツキを見据える。

 おっさんに殴られたものの、おそらくシールドの防御でほとんどダメージは与えてないはず。


「厄介なのが来たか。まあいい。一人増えようが二人増えようが話にならん」


 そう言うと、アカツキは武器を取り換える。

 オレンジ色のカラフルなデザインの銃だ。

 それを右手と左手に持った二挺拳銃のスタイル。


「こいつはグラヴィティレールガン。射出された銃弾の当たった空間を削り取る兵器だ。

 不滅の肉体らしいが、さて、抉り取られても平気でいられるかな?」


 まるで西部劇のガンマンのように、アカツキは二挺の銃を乱射する。

 俺とおっさんが左右に飛びのくと、先ほどまで立っていた地面が、大きく削り取られた。

 あんなもん当たれば体の大半が持っていかれてしまう。


「どうした? 逃げてばかりじゃ話にならんぜ」

「それはこちらのセリフです」


 突如現れたアムダが横から剣を突き出し、アカツキへと肉薄する。

 しかしアムダの攻撃を予測していたのか、アカツキはアンカーワイヤーを使って大きく飛び退いた。


「アムダ、無事だったか」

「まあ、爆発は慣れてますから。誰かさんのせいで」

「そうか。その誰かさんが誰の事か気になるが、今は追求しないでおこう」


 これで三人が揃った。

 俺たちは武器を構え直し、アカツキを見据える。


「くくく、なるほどなるほど。雑魚ではないようだ、お前たちは。

 敬意を表して、全力で行くぞ――」


 そう言うと、魔神は再びジャンプを繰り返し、加速していく。

 先ほどの高速移動からの攻撃が来る。

 捉えられない動きではないが、高速移動とワイヤーによる三次元的な軌道が厄介だ。

 相手の出方を窺っていたその時だった。


「くっ……がは……」


 突然、アカツキは足を止め、膝をついた。

 一体何が起きたのか、俺たちには分からなかったが、少なくとも何かに苦しんでいるようだった。

 アカツキはどこかから注射器を取り出すと、おもむろにそれを自分の首に突き刺した。

 緑色の液体を、スーツ越しに流し込んでいるのが見えた


「……もう薬が切れたか。俺も近付いてきたか」


 薬を打ち終え、容器を投げ捨てる。


「……喜べ、この場は見逃してやる」

「なに?」

「お前らとこれ以上やるほど俺も余裕がない。三人相手だと俺も本気を出さねばならん」


 だから見逃してやる、とアカツキは言う。

 まるで三人相手でも自分の方が上だと言わんばかりだ。


「僕たちとしては、この場であなたを倒すべきなんですけどね」

「ふん、そうは言っても、お前らとて遊んでいるほど暇ではないだろう」


 それは奏の事を言っているのか。

 確かに優先すべきは奏の安全ではあるが、今はバシュトラが追っているはず。


「忠告してやる。死にたくなければあの女は諦める事だ」

「どういう事だ?」

「言葉通りの意味さ。俺たちにとっても、お前らにとっても、あの女は重要な鍵となる。

 この世界を紐解く賢者の鍵。オルティスタはあの女の力を使い、女神の匣を開くつもりだ」


 そう言ってアカツキは一度言葉を区切る。

 バトルスーツのヘルメットによってその表情は分からないが、何かを思案しているようだった。


「これは提案だが、あの女を諦めるのであれば、俺たちもお前らと戦うつもりはない」

「な、に……?」

「魅力的な提案だとは思うがな。お前たちの目的と俺たちの目的は、必ずしも対立している訳ではない。

 お前たちは元の世界に戻る為に俺たちを倒す、違うか?」


 その通りだ。そもそもこの世界に呼ばれたのも、魔神を殺せと言われたからに過ぎない。


「仮に女神の匣を開く事が出来れば、その力によってお前らを元の世界に戻す事も可能になるだろう」

「つまり、奏さんを犠牲に差し出せと、そう言いたいのですか?」

「ふん、最少の犠牲で最大限の効果を発揮出来るのであれば、そういう道もあるという事だ。

 別に馴れ合うつもりはない。俺にとってはどちらでもいい話だからな。

 だが、お前らが惨めたらしく生にしがむのであれば、あの女を諦めて、どこぞに隠れている事だ」


 アカツキは俺たちに背を向ける。

 これ以上話すつもりはないらしい。


「ここから北にある人間領と亜人両の境界に、アグラ要塞という砦がある。

 あの女はそこに連れて行かれたはずだ。

 先ほどのグリフォンライダーは、教会の選んだ五人の勇者の一人だからな」

「お前たちは教会と手を組んでいるのか?」

「さてな。オルティスタが便利だからと利用しているだけだと思うがな。俺たちにとっては人間も亜人も全員殺すべき敵だ」


 淡々と話してきた今までと違い、その言葉には明確な敵意があった。

 何がこいつをそこまで憎悪させるのか、俺には分からない。


「姫宮奏を見捨てるなら、そのまま好きに生きろ。いずれ時が満ちれば助けてやる。

 だが、あの女を取り戻すつもりならば、アグラ要塞に来い。

 そこはお前たちがかつて仲間だと思っていたはずの人間たちが守る砦だ。

 すべてを敵に回す覚悟があるのならば――そこで相手をしてやろう」


 アカツキはそう言い残し、俺たちから去って行った。

 やつを引き留める事は出来たが、なぜか俺たちは動く事が出来なかった。

 その事が無性に腹立った。






 その夜遅く、バシュトラが帰還した。

 一縷の望みを託してはいたが、しかし一人で帰ってきた彼女の姿を見て、俺は落胆を隠す事が出来なかった。

 それはバシュトラも同じだったのか、ごめんなさいと小さく呟いた。


「いや、バシュトラが無事で良かった。一人で敵陣に突っ込んでたらとちょっと心配だったからな」

「……突っ込もうとしたけど、ララモラに止められた」


 バシュトラとしても、何としても奏を助けたかったようだ。

 彼女の話は、先ほどアカツキから聞いた通り、ここから北にある人間の要塞に奏は連れて行かれたらしい。

 最前線という事もあり、かなり厳重な警備のようで、バシュトラでも入り込むのは難しかったようだ。


「多分、要塞にいた兵士は……トリアンテの人たちだと思う」

「……そうか」


 少なからず予想はしていたが、やはり、と言うべきか。

 かつて世話になった相手と、戦う事になる。

 もしかすれば、ファラさんとも刃を合わせる事になるかもしれない。

 アカツキの声が蘇る。

 すべてを敵に回す覚悟、か。


「それでも……それでも俺たちは戦わなければならない」

「そうですね」


 アムダが頷いた。いつも通りの優しげな笑みだが、今はそれも頼もしい。


「奏を見捨てる事は出来ん。元の世界に戻る時は全員共にあるべきだ」


 おっさんも同じ気持ちのようだ。

 そしてバシュトラも、こくりと頷いた。


「……助けたい」

「なら決まりだ。奏を助けに、俺たちはアグラ要塞へ向かう」


 たとえそれが、すべてを敵に回す事であっても、俺たちは奏を助ける道を選ぶ。

 

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