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僕はぽかん、と口を開けたまま、その奇妙な生き物を見た。
2本足の獣なんて、見た事も聞いた事もなかった。
しかし、4本足であれば、目の前の獣が何なのかを僕は知っていた。
僕に気付いたその獣は僕の手にある本に目を留め、確かに、
笑った。
「成る程」
その言葉が、その獣が発したものだと僕の頭は理解する事ができなかった。それでも「それ」は事実としてある訳で…。
そして僕の口は頭が理解するよりも早くその状況を受け止めていたようで。
「喋った…」
「そりゃあ喋りますとも」
ぽろり、と零れた言葉に目の前の獣も当然のように答えた。
「君は一体何なんだ?」
獣が笑う。今度ははっきりと。
その笑みを一層深めて獣は一言だけ答えた。
「猫」と。
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