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2 猫
吾輩は猫。
名はない。
何故猫に過ぎない吾輩がこのような処にいるのか。
それはむしろ、吾輩こそが問いたい。
緑少ない痩せた土地。
目の前には痩せたみすぼらしい人間の男が大口をあけた間抜け面でこちらを凝視している。
その男の足下にある本に目を留め、吾輩はうっすらと目を細めた。
「成る程」
吾輩の呟きが聞こえたのか、男はさらに驚きの目で吾輩を見る。
「喋った…」
「そりゃあ喋りますとも」
「君は一体何なんだ?」
吾輩が笑うとさらに怯えた表情で吾輩を伺い見る。
吾輩は笑みを一層深めて一言だけ答えた。
「猫」と。