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我輩は猫  作者: かずほ
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はじまり

青年は途方に暮れていた。


目の前に広がる荒れた大地は青年の心をそのまま写し取ったかのよう。


みすぼらしい粉に塗れた衣服に古ぼけた奇妙な本。


それが今の青年の全財産だった。





父が死んだ。


哀しみはあったが、死の別れよりもむしろ、先立った父を羨む気持ちの方が大きかった。


母は早くに亡くなり、父と兄2人、そして僕の4人家族だった。

かつては緑豊かだった土地も今は枯れ果て、そんな中で僕ら家族は粉挽き小屋一つで生計を立てていた。


生きるだけで精一杯だった生活の中で、当然父が遺せるものなどそれ程ある筈もなく、精一杯の遺産は粉挽き小屋と痩せたロバ、そして一冊の「本」。


当然のように順当に遺産は配分され、上の兄は粉挽き小屋を。

下の兄はロバを。そして末っ子の僕には一冊の「本」。


それは風変わりな装丁の本だった。表紙には見た事もない文字でタイトルなのだろう、縦に綴られ、綴じ方も左右全く逆だった。


2人の兄は哀れみと嘲笑を込めた目で僕を見ていた。


それは当然の事で、僕自身も途方にくれる事しかできなかった。


売り払った所ではした金にしかならないだろう。


食べるのに精一杯だったこの生活で本を買う余裕が何処にあったのか。しかも読めもしない本を。


僕は仕方なくその手の中に収まっている本を開いてみた。例え字が読めなくともなんとなく中身が気になった。


ぱらりとその本を開い た瞬間それは起こった。


「 な、なんだ!?」


本からぼふん、と煙があがり、僕は慌てて本を取り落とすのにも構わず両手で顔を覆った。


煙が収まるのを待って顔をあげるとそこには一匹の獣が2本足で立っていた。


それは、まるで


「猫」


僕は思わず声に出していた。


ぴくり、と獣特有の反応でこちらを見るその仕種に僕の体は猛獣を前にした時のように一瞬で体が強張った。




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