夢視る少女
「赤い鼻緒の草履を履く時には
わたくし、黄泉の合引に出かけていたのです」
蛭の住む川を越えて
蔓の巻く門を越えて
歳老いた墓守には たおやかな会釈を忘れず
夢視る少女は夜霧の中
墓場へ向かって歩いてゆくよ
そこには愛しいあの人がいて
でも 別の誰かに恋してた
いつも気持ちはまやかしの奥
夢視る少女は墓場の隅
死人に唄を聴かせるよ
そこには愛しいあの人はなく
もう 別の誰かを愛してた
(少女の知らぬ とても明るい場所で)
少女は声を空中に
飛散させて 俯いたのさ
石を蹴ったらあっさりと
塀を越えて 外界へ飛んでいってしまった
「わたくし、彼の墓を破壊してやりましたのよ
そうしたら何故か、蝦蟇が赤子のように泣いておりました」
オチがついているようでついていないような…
蝦蟇はヒキガエルのことですが、私は蛙全般に辛い思い出があったりしまして……
とにかく蛙は苦手です。
ついで基本的に虫も駄目です。ちょうちょすら駄目です。ダンゴ虫は大丈夫です。そういえば私、右手のひらの上でダンゴ虫に卵を出産されたことがありました。