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親友ともう一歩。  作者: 薄桜
前編
6/20

焦燥と傷痕

6話目です。

・・・ではどうぞ。

「ねぇ、石川さんいいかな?」

次の授業の準備をしていると、何となく聞き覚えのある声で名前を呼ばれたので、気乗りしないままに見上げるとこの間声をかけてきた子だった。

名札に松下と書いてあるから間違いないと思う。

「よくない・・・って言っても聞かないよね、どうせ?」

わざとバカにしたように言ってるのに、通じた様子も無く話を続けてくる。

「ねぇ放課後、美術室に来てくれない?」

・・・呼び出しか? つまんないやつだな。

「何か言いたい事あるなら、今ここで言えば?」

「いいよ、放課後にしとく。」

そう謙遜するようにはにかむその態度がどうにも嫌な感じで癪に触り、気持ち悪い・・・そう思った。



「あれ? 朋花いないぞ。」

「本当だ、朋ちゃんどこ行ったのかな?」

いつものように一緒に帰ろうとしたら、朋花がいなかった。

ちょっと皆川ちゃんに捕まっている間に、どこかに行ってしまったらしい。聡太も見ていなかったらしく、二人して顔を見合わせる事になった。

「なぁ、朋花知らないか?」

朋花の隣のやつに聞くと、不思議そうな顔をした。

「石川さんだよ。」

聡太が補足を入れると、納得がいったらしく口を開いた。

「あぁそれなら、終わってすぐ急いで教室から出て行ったよ。」

「どこに?」

「それは知らないよ。そのうち戻ってくるんじゃない?」

確かに荷物は机に置いたままだ。

そいつはそれだけ言うと、用事は終わったとばかりに荷物をまとめて教室から出て行った。


・・・が、10分、15分と過ぎても戻ってはこない。手持ち無沙汰のまま黒板の上の時計の針は動き、時間だけが過ぎて行く。時間が経てば経つほど、俺の中で嫌な想像が膨らんできて落ち着かない事この上無い。

既に教室の中は俺と聡太だけになっている。廊下の方から少し声はするが、部活の連中はとっくに部室や更衣室に向かっているし、何もしてないやつらはとっとと帰っている。

「・・・どこ行ったんだ!?」

もう絶対トイレとか、そういう事は無いはずだ。

「そんなに苛つかなくても・・・。」

椅子に後ろ向きに座った聡太は、暢気な事を言う。

「だけど、もし・・・」

俺達・・・いや、聡太と仲良くしてる事で厄介な事に巻き込まれてたら・・・とは、さすがに本人に言えないので言葉を濁した。

「・・・俺ちょっと探してみる。聡太はここにいてくれ、戻ってくるかもしんないし。入れ違いになっても面倒だから。」

「あぁ、分かった。」

・・・もしこの嫌な予感が当たっていたら・・・聡太にはそういう所は見せたくない。

「じゃ、行ってくる。」

できるだけ笑顔で聡太に言って、教室を出た。

・・・さて、どこに行ったものか?



やっぱり嫌な目だ。

気持ち悪い。


こういう面倒な事は、さっさと済ませたいからHRが終わるとすぐに美術室に来た。

私が一番乗りで、呼び出した側のやつはまだ誰も来ていない。さて何人来るんだろうか・・・ああいう輩はどうせ群れでしか行動しない。

・・・前もそうだった。

もちろん二人には何も言わずに来た。こういう逆恨み的な事で二人を・・・特に聡太くんを困らせたくはない。

時間潰しに石膏像に描かれた鉛筆の落書きを眺め、それから、ブロックを重ねたような色見本を眺めていると、外からきゃぁきゃぁと甲高い女の子の声が近付いてきて、開いたままだったドアから三人の女の子の姿が見えた。

・・・三人か、まぁ少ない方か。

当然向こうも私の姿を認めたのだろう。あれだけ賑やかだったものが水を打ったように静かになる。もちろん最初に声をかけてきた子も、二番目に声をかけてきた子の姿もある。もう一人は違うクラスなのだろう、まったく見覚えが無かった。

あえて腕組みで偉そうな態度をとって出迎えると、最後に入ってきた子はご丁寧にもきちんとドアを閉めた。慣れてるって事か?

「で、何の用?」

そう声をかけると、三人はこそこそと目配せを始めた。

うわっ、面倒な連中だな・・・。あんた言いなよ、いやよスーちゃん言いなよと譲り合っているばかりで、何も始まらない。

「・・・ねぇ、話無いなら帰るよ?」

呆れた私がそう言うと、ようやく一人が口を開いた。

「石川さん、為井くんと仲いいよね?」

えーと、確か・・・大原さんだっけ?

「そうだね、友達だけど何か?」

そんな事わざわざ確認しなくたって、見ててそう思ってるからこうやって呼んでんでしょ?

「行き帰りも一緒だよね?」

「そうだよ、だから何?」

「お弁当も外で一緒に食べてたよね?」

「・・・よくご存知で、」

「そりゃ、よく見える場所だもの。」

大原さんがそういうと、他の二人がクスクスと笑った。

あーこういうの、本当に苛つく。

「名前で呼び合うほど仲良いんだね?」

「だから・・・羨ましいなら、そう言えばいいんじゃない?」

きっぱりそう言うと、三人は睨み付けてきた。

「目は口ほどに物を言う。口が役に立たないんなら、呼び出さないでくれる?」

鼻で笑って出て行こうとすると、待ちなさいよと手首を掴まれた。その時一瞬、その手ではない違う手に掴まれた自分の手首が脳裏を過ぎった。・・・何これ?

「放せ。」

「まだ話は終わってないわよ。」

後ろの知らないやつの口がそう動いていた。

「話も何も、何も言わないのはそっちだよね?・・・私には、自分は何もしないでただ人を羨んでるやつらと・・・話す事なんか無いから。」

・・・気持ち悪い。

あの目は嫌だ。

「そっちに無くても、こっちにはあるの。」

誰が言ったなんて、もうどうでもいい。とにかく気持ちが悪い。

「・・・じゃぁそれ早く言ってよ。」

何かこれ・・・心臓の鼓動早くない? 変に息苦しくて汗かいてきた。

「為井くんに近付かないでくれる?」

この気分の悪い時に、何わけの分からない事を言ってんだか・・・

「どうして? 友達と話して・・・友達と一緒に帰って何が悪いの? ・・・そんな嫉妬に、どうして、私が付き合わなきゃ・・・なんないの?」

駄目だ・・・最高に気分悪い・・・そろそろ限界。何か言ってる気がするけど・・・もう無理。

「ごめん・・・今、私・・・気分悪い・・・。」

しゃがみ込もうとして、掴まれたままだった腕を引っ張られると、再び以前に見た光景が頭の中で再生される。

「やめろっ!!」

腕を振りまわして、掴まれていた手を振りほどいた。

・・・だめだ・・・何でだ? 今じゃないだろう、これ・・・あぁ、何だか頭まで痛くなってきた・・・。

ズキズキと痛む頭を両手で抱えて目を閉じると、再び頭の中で嫌な場面が繰り返される。

数人の女生徒、捕まれた腕、光るハサミ、嫌な目、床に散らばる髪。

・・・私が転校するはめになった事件の光景だ。

「はっきり物を言って何が悪い! お前らも言いたい事があるなら言えっ! 影でこそこそ言ってないで、堂々と胸を張ったらどうだ!?」

そう、あの時も確かそんな事を言った。

「朋花っ!」

・・・結局逃げる結果になってしまった自分が悔しくて、涙がこぼれそうになった時、航の声が聞こえた気がした。

朋花のトラウマスイッチON。

似た状況に反応したって事で。


お話とはいえ、悪役にしちゃった子達に申し訳ないと思ったり・・・

端役に詳細な設定など考えてませんが、勧善懲悪は目指してないので、

少し、どうしようかと迷いましたが・・・結局GOです。

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