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親友ともう一歩。  作者: 薄桜
前編
4/20

知る事と、気付いた事と、理解した事

4話目です。

・・・ではどうぞ。

学校が終わると、朝の約束通り二人で航の家に寄った。

私は、正直どんな顔して紹介されたものかと思案していたというのに、航はただいまとも言わずに、

「母さん、この子朋花ってんだけど、学校一緒に行く事にしたから。明日の朝から迎えに来事になってるから覚えといて。」

そう唐突に、リビングでパソコンを突付いていた彼の母親にいきなりそう告げた。

「朋花・・・ちゃん? ・・・航が女の子?」

腕を引っ張っていかれた私はどうしたものか、頭を抱えたい気分のままとりあえずは名乗っておく事にした。

「・・・あ、始めまして、同じクラスの石川朋花です。ちなみに彼女じゃありません。」

だって、突然で他に言う事思いつかないし、お母さん呆然としてるから誤解は解いておきたいし!!

すると母親は、はっと我に帰ったようで、立ち上がって側までくると息子の耳を引っ張り少し離れた場所に移動した。

イテテと声を上げる息子に、

「遅刻の道連れ増やしてんじゃないよ。聡太くんにも迷惑かけっぱなしなのに、あんた何考えてんの!?」

と小声で小言を言っている。まる聞こえだけどさ・・・。

「おばさん、最悪置いていくから大丈夫だよ。朋ちゃん転校してきたばっかでまだ友達少ないし、僕達と家近いから一緒に行こうって事になったんだ。」

割って入った聡太くんの補足で、母親は表情を変えた。

「あら聡太くん、航そうなの?」

「そうだよ、痛いから、耳、耳離せ!」

「・・・あんたの言葉が足りないから、よっ。」

最後により強く耳を引っ張られて航は解放された。

「痛てぇっ!?」

結局聡太くんに、より詳しく正確に紹介された私は、紹介するって言ったのはどこの誰だよと、内心で突っ込みを入れてこの親子を見比べた。しゃがみ込んで耳を擦る息子と、取り繕って聡太くんに毎日ごめんねと謝る母親は面差しがよく似ている。愛嬌のある表情の豊かさも、さすがに親子だという所だろう。・・・余所の家族は面白い。

聡太くんの後、私にもこれから迷惑かけると思うけど、その時は見捨てていいからね。と言われた・・・ここの息子はどれだけ信用が無いんだ?

その後、この際だからと二人で見張って航に宿題をさせた。これで明日は持って行くのを忘れない限り、朝に慌てて写すような事は無いはずだ。



6時になって、どこかガッカリした様子の聡太くんと一緒に家を出た。

「結局ねーちゃん帰って来なかったな、帰りに美晴のとこ寄ってんだろうな。」

「かもね、」

玄関で二人が私の知らない人達について話した後、『また明日ね』と手を振って航と別れた。何故帰り際にお姉さんの話が出てきたのかよく分からないので、少し探りを入れてみる事にした。

「航はお姉さんがいるんだね・・・ねぇ、どんな人?」

聡太くんは一瞬驚いた素振りを見せて、それから少し挙動不審になった。

「・・・うん、いるけど・・・何で?」

「母親が面白い人だったから・・・好奇心?」

私がそう言うと、笑うのを堪えたらしい。

「面白いか・・・朋ちゃんはそう思うのか。僕は結構ハラハラするんだけどね。」

「人前であそこまでやる人なかなかいないよ? だからお姉さんはどんな人かなって。」

「えーと、葵姉はね・・・。」

へー、葵姉って呼ぶんだ。

聡太くんは何を思い出しているものか、すごく遠い感じの目をしてしばらく黙り込んだ。

「きれいで怖くて優しい人・・・かな?」

「そう、怖くて優しいんだ?」

一見矛盾するような形容詞を二つ並べた聡太くんは、また少し考えて満足そうに頷いた。

「きれいで怖くて優しい・・・うん、ピッタリな表現だと思う。」

そう言う本人もきれいな顔で思い出し笑いをしている。これまで見ていた彼は、表情をかくしたような澄まし顔や、きれいな顔が勿体無いほど眉間にシワを寄せたり、私や航に振り回され諦めや疲労の表情を浮かべてばかりいたけど・・・こんな顔するんだ。これは新たな発見だ。



今日は朋花の帰りが遅かったらしい。

どこで寄り道していたのか、兄としては是非とも聞き出したい。前の学校をあんな形で転校する事になり、益々妹の事が心配になった。あの一言・・・どころか二言三言多い、真っ直ぐ過ぎる性格はきっとまたトラブルを引き寄せる。そこは直した方がいいし、その方がこの先も楽だと思う・・・けど、そこが朋花のいい所だとも思うし、絶対に直さないって知ってる。だから、いくら過保護と思われようが、鬱陶しいと思われようが、お兄ちゃんはそんな朋花の事が心配で心配でならないんだ・・・。

「なぁ、朋花・・・。」

「何?」

夕食後、自室に戻ろうとする朋花を追いかけて廊下で声をかけると、いつものように冷たい声が返ってきた。しかし振り向く姿は、以前のように髪がなびく事が無く・・・それだけで心が痛む。

「今日・・・どこか寄ってきたのか?」

しばらくじっと俺を見上げた後、ニヤリと笑う。

「うん、友達の家。」

事もなげにそう言うが、昨日友達は男だと言った。

「・・・その友達って・・・男の子かな」

「もっちろん。」

肯定して・・・俺の顔を見て笑った。

からかわれてるのは百も承知だ。でもいい、いや本当はよくないけど、それでも朋花が笑ってくれるならそれでもいい。・・・いや、でも・・・欲を言えばもっとマシな理由で笑って欲しいけど・・・それまではピエロにだって何にだってなってやるさ!

機嫌が直ったと錯覚した俺は、朋花に気なっていた事を聞いてみた・・・が、それは大きな間違いだとすぐに気付く事になる。

「あのさ、女の子の友達はいないのか?」

言い終わらないうちに表情は一変し、体を震わせながら大きな声を出した。

「いらない! どいつもこいつも変なルール勝手に作って、みんな一緒じゃなきゃ行動できないくせに、自由に動けるやつを変な目で見て・・・あんなの理解できない! 何であんなのと友達になんなきゃいけないの!?」

敵意を剥き出しにして忌々しそうにそう吐き出しながら、俺は蹴り飛ばされた。

・・・俺は見事に地雷を踏んだらしい。



朝、三人で一緒に学校に行くために航の家に向かうと、家の前にはもう聡太くんが来ていてチャイムを押していた。

声をかけようとしたら、玄関のドアが開き髪の長い女の人が勢いよく出てきた。私が今通っている中学のすぐ側にある高校の制服を着ている。なるほど、あれが航のお姉さんか・・・確かにきれいな人だ。

航と目の雰囲気は似てる・・・かもしれないが受ける印象が全く違う。航ははっきり母親似だったけど・・・もし、残る父親の顔を見る事ができれば、DNAの不思議が理解できるかもしれない。

お姉さんは癖の無い真っ直ぐな髪を揺らして聡太くんの側まで行くと、きれいな顔をほころばせ、そして、聡太くんもそれを笑顔で迎えた。こうしてきれいな二人が並んでいる姿はとても絵になるなと、私はつい見とれてしまった。

「おはよう、聡太。いつも時間通りね。」

「おはよう、葵姉こそ。弟は?」

「着替えてる頃かな? 何なら置いてっていいわよ。」

「そうだね。」

「じゃあ、美晴待たせると怒るから先行くね。」

「うん、じゃあね、」

ただの朝の挨拶だ。

だけど、右手を上げて遠ざかる後ろ姿を名残惜しそうに見送る聡太くんは、さながら美姫に心奪われた王子のようで・・・。

なるほど、昨日の遠くを見るような視線の先にはあの人がいるって事か。しかし、おそらく毎朝の・・・たったこれだけの一時(ひととき)を大事にしているんなら、聡太くんはかなりの純情少年だな・・・・・・何か可笑しい。

この光景をあのファンクラブの連中や、こっそり慕っているようなやつらに見せたいものだ。かなりの人数が払いのけられて聡太くんは楽になるだろう。誰も物語のヒロインにはなれない・・・きっとそれがはっきりと分かるから。

あの人・・・航の姉さん意外はみんな一読者に過ぎないんだって。

今の調子だと物語が進展するかどうかはあまり期待できそうにないけど、彼の友達であるかぎり、ずっと彼の歩む物語を見る事ができるだろう。

・・・うん、それも悪くないな。

そんな事を考えているうちに、彼の視線の先にいる人は角を曲がって見えなくなった。私は一度深呼吸をして、大きく空気を吸い込んだ。

「おーい、聡太くんおはよう、・・・航は?」

「あ、おはよう、朋ちゃん。出てこないから先行く?」

よし、見てた事はばれてないみたいだ。

「あ、チャイム連打したら出てこないかな?」

「朋ちゃん? そういう事すると、おばさんにに迷惑かかるから止めようね?」

顔を引きつらせた真面目な彼に注意されてると、玄関のドアが開いて眠そうな顔した航が出てきた。

「求める者。」での縛りが影響したお話です。

「三日くらいで諦めた」って台詞のとこですね。

ホワイトデー系のお話終わったら、「求める者。」絶対書き直してやる。


あとは・・・予想外に安田家の母親出てきましたね。

パワフルで、アットホームな家庭です。

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