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親友ともう一歩。  作者: 薄桜
おまけ - 聡太くんの憂鬱 -
20/20

露見

この前の話で終わりのはずだったのですが、

「憂鬱」繋がりでもう一本。

短編です。


ではどうぞ。

お弁当を食べた後、トイレに行って戻ってきたら、廊下に5人くらいのクラスの女の子達が集まっていた。

その中には雅美ちゃんもいたから、ちょっと気になった。


雅美ちゃんは、この学校に転校してから初めてできた女の子の友達だ。

私と同じくロックが好きで、よくアマチュアバンドの動画で話で盛り上がったりする。

きっかけは、私が読んでる雑誌を雅美ちゃんも読んでたのを見つけた事。それで私から声をかけて・・・これまでの私の態度があれだったから最初は驚かれたけど、今は普通に話せる仲になったと思う。

雅美ちゃんと仲のいい子達も、最近は話してくれるようになり、以前の自分より少しはマシになったと思う。


「雅美ちゃん、何してんの?」

何となく割って入ると、別の子が数枚の写真を持ってて・・・ってそれ聡太くん?

「あー朋ちゃん。これはね、えーと・・・」

どこか気まずそうにする人達の中、私一人だけ驚いた顔をしていた。



「って事でこれ、聡太くんの妹がくれたんだけど。」

机の上に置かれた3枚の写真に目が釘付けになった。

おそらく下校中に撮られたらしい写真が2枚に、もう1枚は家のリビングだ。

もちろん僕には撮ってもらった覚えは無い。

「・・・何これ?」

「だから、雅美ちゃんに写真の出所を聞いたら2年生の子だって言うから、2年生に聞いてみたら、聡太くんの妹紹介されたの。もう一人友達もいたけどさ、一緒に売ってるみたいだよ?」

・・・そうか、いつ撮られたのかは分からないけど、リビングの写真は当然理佐の仕業だな。で、他の2枚は・・・

「ねぇ朋ちゃん、その友達の名札に『大垣』って書いてなかったかな?」

「あー、そうだったかも。じゃぁ心当たりがあるんだ?」

このやり取りを「俺半分に切れてるなー」とか暢気な事を言って写真を眺めていた航が、急に笑い出した。

「そっか、それなら分かる。あいつならやりかねねぇー!!」

「何? ねぇ私だけ分かんないの?」

いい、朋ちゃんは分からなくていい、朋ちゃんはどこか気が合いそうな気がするから、あまりあの人に会わせたくない。

・・・あの3人に、朋ちゃんまで加わるなんて恐ろしい事は考えたくない。

「朋ちゃん、教えてくれてありがとう。」

感謝の言葉を笑顔で言ったつもりだったんだけど、二人はどこか引いていた。

「ちょっとごめん、用事ができたから・・・。」

そう言い残して席を立ち、胸ポケットに入れてある携帯を握り締めた。



「ねぇねぇ航、あれ相当怒ってるよね。」

「だな。」

「ところであいつって誰?」

「あー、うちのねーちゃんの友達。って朋花は知らないか、こういう事を面白がってやる、性格に難有りの人物だ。」

「・・・そ、なんだ。大変だね聡太くん。」

「だよな。」


聡太が消えた後・・・どうせ抗議のメールでも送ってんだろうな。俺は、美晴のこれまでのイタズラの数々を面白おかしく朋花に聞かせてやった。

多少の誇張があったかもしれないが、朋花が笑ってくれたから、まぁそれは些細な事だ。やっぱり、朋花は笑っている方がいい。

もうあの時みたいに泣かせるようなマネはしたくない。



メールを1件送ってから、妹のいる教室に向かった。

そこで理佐と和歌奈ちゃんを捕まえて引き立て、荒む心を何とか宥めながら二人から事情と言い訳を聞いた。

特に妹が不満気な様子であまり反省の色が見られないが、予鈴がなったので厳重注意を言い渡してとりあえず開放した。


所詮この二人は協力者に過ぎない。

主犯は当然あの人・・・いや、あの悪魔だ。



学校が終わると、帰り道にある高校の前で待ち、15分くらいその場に立ち尽くしていると、やがて目当ての人の姿が見えた。

「あーあ、とうとうばれちゃったか。」

近付いてきた美晴さんはまるで悪びれた様子も無く、とても残念そうな顔で聞き捨てならない台詞を吐く。

「・・・とうとうって、いつからこんな事してたんですか?」

「ん? 半年くらい?」

「・・・何で、こんな事したんですか?」

「そりゃ、需要と供給。」

・・・駄目だ、聞けば聞くほど何かが消耗していく。

テンポよく返ってくる言葉に、罪悪感は微塵も感じられない。

「・・・とにかく、こういう事はもうしないで下さい。迷惑です。」

「まぁまぁ、そう言わずに・・・そうだ、こういうのもあるんだけど?」

そう言いながらカバンを探り、水色の封筒を取り出した。

「今の手持ちはこれくらいしかないんだけどさ、これあげるよ。」

その封筒からさらに何枚か抜いて差し出された物は、やはり写真で・・・あまりにきれいな葵姉の姿に思いっきり赤面し、今まで怒っていた事を一瞬忘れそうになった。

・・・これ、きっと修学旅行で着たって言ってた太夫の格好だよな。葵姉は恥ずかしがってその時の写真をまったく見せてくれなかったけど・・・って待て待て、美晴さんがこうして持ってるって事は、葵姉の写真もばら撒かれてるって事か!?

「・・・まさか、これも売ってるんですか?」

「ん? 結構人気だね。」

「で、これで僕を買収して黙らせる気ですか?」

「さぁ? だといいなとは思うけど、その様子は黙ってくれないよね? あーでも写真はあげるから大丈夫だよ。ほらほら、需要と供給だから。」

よくもまぁ、次から次へとこの人は・・・

とりあえず写真をポケットに仕舞って、腕を組んだ。


「これまでの事はもうどうにもできないけど、もう二度としないで下さいね。」

自分でも幾分勢いが落ちたのは意識している。でも、言っておかねば成らない事は言わねばならない。

「んー、じゃぁ努力目標として掲げておくから。」

「目標じゃなくて、命令だと思って聞いてくれませんか?」

「じゃぁ善処・・・」

「厳守してください! まったく口の減らない人ですね、あなたは。どうしてこんな言葉遊びになるんですか?」

このやり取りで下火になっていた勢いが再燃する。まったく、この人と話をしていると苛々してくる。

「・・・もー、冗談が通じないなー聡太くんは。」

「そんな冗談止めてください。勝手に人の写真を撮って、しかも売りさばくなんて、何でそんな事思いつくんですか?」

「だから、欲しいって人がいたからあげたの、それが発端。モテル男は辛いねー。」

癪に障る軽口に、埒が明かないやり取りに、反省の無いこの人に、僕はもう一気に脱力し、話をするのも嫌になった。

「・・・嬉しくもなんともないです。とにかく迷惑だから止めてください。」

「心配しなくても止める時が来たら止めるよ。」

「即刻止めてください。」

「はいはい、聡太くんの意向は覚えておきますよ。」


僕や葵姉の写真が、どのくらい出回っているのか分からないが、しばらくは会う人のすべてを疑ってしまいそうだ。

羞恥心と嫉妬心と猜疑心。

負の感情ばかりに取り付かれた僕の眉間の皺は、当分消えそうにない。


結局、この不承不承の返事は守られる事無く、その後も何度か売られていたらしい。

美晴さんの言う『止める時』が来るのは、まだしばらく先の事になる。

読んでいただきありがとうございました。


またストレス発散です(^^;

「君を求める。」のリメイクの草稿をあげたのですが、それが思ったより自分の消耗が激しくて、

一度書いた物を、もう一回。しかも場面によっては「大人になるまでに。」でやってるので三度目。

こういうのは結構きついなと、思い知りました。

だから、そのまま紙での修正に入る気分になれず、

おまけに、功一くんの最終話も結局迷走したままで、書き直した方がいいのかなって、

・・・ちょっと逃げました。


これまでの会話に何度も出てきた写真の件。

前回の話で前振りのように書いてしまったので、じゃあこれでって、そんなノリで。

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