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親友ともう一歩。  作者: 薄桜
前編
2/20

つるむという事

2話目です。

・・・ではどうぞ。

一週間も経たないうちに朋花の周りに集まるヤツはいなくなった。

まぁ、あれだけ態度が悪ければ当然だろう。ずっと観察してたから間違いない。だが朋花は逆に気楽そうな様子で本を読んでいる。

「・・・航、あんまりジロジロ見るのはどうかと思うぞ?」

呆れ気味の聡太が、机の上のプリントを取り上げて言った。

「あ? ・・・でも向こうもよくこっち見てんだ。」

再び朋花を振り返ると、やっぱり今日も目が合った。

「なら毎日眺めてるだけじゃなくて、直接話せばいいんじゃないか? それより写し終わったんなら持って来いよ。毎回毎回、どうして貸してる僕の方が取りに来なきゃならないんだ?」

「そっか、そうだな・・・聡太の言う通りだ。」

確かに一理ある。聡太のくせにいい事言うな。

じっと見てたってどうにもならない。ここはやっぱり話をしてみるべきだろう。

「航?」

俺はそのまま朋花の前まで行き、こう言った。

「朋花、俺お前に興味がある。今日の帰りに話しさせてくんない?」


周囲の視線を一身に集めた目の前の安田くんは、騒然とした空気を一向に気にした様子もなく、にこやかな顔で私の返事を待っている。

「航、お前またいきなりそんな無茶を・・・石川さんごめん、こいついつもいきなり呼び捨てにするから・・・」

航と呼ばれた安田くんは、追いかけて来た為井くんに何事かを目で訴え、逆に睨まれて少し怯んだ。・・・可笑しな組み合わせだと思っていたが、やっぱり可笑しい。

何事もソツなくこなし、女子に人気がありながら誰にもなびかず・・・しかし、安田くんに対する態度から、実は結構いい性格をしてそうな気がする為井くん。一方、ふざけてばかりで毎回先生に怒られているくせに一向に反省する様子もなく、それでいて先生からの信頼を得ているような所のある安田くん。今、その二人が、ちょうど私の目の前にいる。

・・・だったら答えは当然こうだろう。

「いいよ話しよう。ただし君達二人セットでね。あ、それと、朋花って呼ぶんなら、もちろん私も航って呼ばせてもらうよ?」

一気にそう言うと二人は顔を見合わせ、一人は妙な顔をし、一人は舌打ちをした。


いつものように昼休みに雑誌を広げて一人でお弁当を食べていると、一人の女の子が声をかけてきた。

「ねぇ、石川さん、為井くんまで誘ったのはどうして?」

余計な挨拶も前置きも無く、はっきり疑問をぶつけてきたのは好感が持てるが・・・全体の印象は悪い。やっぱり目の笑っていない笑みは見ていて気持ちが悪いと思う。

「・・・どうしてって、あれはセットで面白いから。」

そう言うと、眉がピクッと動いたような気がする。

「・・・その理由はよく分からないけど。為井くんはファンが多いから気を付けた方がいいよ。」

別にこっちも分かってもらおうなんて思ってない。でも、コソコソと・・・さも他の人に気をつけろって感じの言い方は気に入らない。自分は違うんだってアピールして、良い人ぶろうとしているこういう人間が私は嫌いだ。

「大原さんもファンなんでしょ? 遠回しな言い方は嫌いだから止めてくれる?」

胸の名札に大原とあるので、大原さんでいいんだろう。

すると彼女は一瞬凄い顔して、

「何それ!?」

と、声を荒げた。

「興味無いなら放っておくし、気になっても度胸が無いなら来ないでしょ? でもわざわざ釘を刺しに来た大原さんは、かなりのファンって事なんじゃないの?」

彼女は何かを言いたそうにしているけれど、口からは何も出てこない。

結局言葉が見つからなかったのか、

「私はそういう人もいるって言いたかっただけよ、どうなっても知らないから!」

不機嫌にそれだけ言い残し、背を向けて離れて行った。

どうなってもって、強硬派がいるんだろうか? じゃぁ逆に穏健派とかあって、そのファンクラブ同士の対立とかが繰り広げられてるんだろうか? 大原さんの捨て台詞のおかげで頭の中で妙な世界が広がり、可笑しくなってきた。

一人でクスクスと笑っているとふと思い出した。そういえばあの子は、初め頃の周りに集まっていた輪の中にいたような気がする。彼女達は何のために私に為井くんの話を聞かせていたんだろう? 乗ってきたら釘を刺すつもりでもあったんだろうか? まあいいや・・・深読みのし過ぎかもしれないし、どっちでもいい。

・・・いずれにせよ、この学校も面倒事が多そうな事に変わりは無い。

あー、前の学校より面倒な気がしてきた!!


「おい、朋花帰ろうぜ。」

にこやかな航と、諦めた表情の為井くんが近づいて来た。

先生が出て行ってすぐにだ。

「・・・早いね。」

「いつもこんなもんだ。なっ?」

「うん、面倒だからさっさと逃げるんだ。」

「・・・そう。」

そんな言い方をされると、私も早くしないといけないような気がして、手早くカバンに荷物を詰めて立ち上がった。

「いいよ、行こうか。」

かなりの数の視線を背に受けながら教室を出て、それ以上の視線を浴びながら学校の敷地から出た。

「・・・ねえ、いつもこうなの?」

どちらかと言えば、自分は人の目を気にしないタイプだと思っていたが・・・これはきつい。視線だけでここまで嫌な気分になったのは初めてだ。もちろん、はっきりとした敵意ばかりでなく、好奇の目の方が多かったとは思う。だけどここまで多いと、変な緊張で背中にびっしり汗をかいて気持ちが悪い。強硬派とか穏健派とか勝手に想像して面白がっていたが、実際にあってもおかしくないような気がしてきた。

「ごめん、大丈夫? 今日は特別凄かったから。」

「朋花がいたからだろ? いやぁ怖いね~嫉妬。」

謝る為井くんに対して、航は楽しそうだ。慣れている二人はさすがの余裕で、特に航は完全に人事なので、この状況を面白がっている。こちらもなかなかいい性格の持ち主のようだ。

「そうだ、朋花の家ってどっちだ?」

今更ながらに航が聞いた。もし方向が同じならその道すがら話ができるし、違った場合にはどこかに寄り道する事になるのだろう。

「うちはあっち。」

川の向こうの下手を指すと、航が吠えた。

「おー、同じ方向だ!」

為井くんも、驚いている。

「ひょっとして近所だったりして・・・うちは青葉2丁目なんだけど。石川さんは?」

「青葉1丁目。」

「近っ!?」

二人はさらに驚き、見事にハモった。

へー、そうなんだ。ほとんど家まで一緒に帰れそうだ。


惚れただ、興味があるだと言っただけはあり、航は石川さんを質問攻めにしている。

「朋花は一人でいる時気楽そうだな?」

「うん、面倒事が無くていい。」

石川さんも基本的に、いいテンポでそれに答えている。

ただ、前の学校に関する事はパスと言って答えなかった。その辺のバランス感覚に長けた航は、さっさと質問を変えて、彼女に関する情報を引き出そうと躍起になっている。

「そっか、何で俺らはセット扱いなんだ?」

「だってセットでしょ? 二人一緒の方が楽しそうだし。」

「そうか? ・・・じゃあ何でそんなに髪が短いんだ?」

「・・・それは、パス。」

これも前の学校に関する事なんだろう。前の学校でどんな嫌な事があったのか、傍で聞いていても気になるが触れてはいけない部分なのだろう。

「そっか、じゃあ付き合って欲しいんだけど・・・俺朋花に惚れた。なぁ駄目か?」

何故か航の質問攻めは、突然告白に行き着いた。・・・って、どんな流れなんだそれは?

僕も、石川さんももちろん唖然としていたのだが、彼女は急に笑い出した。

「何て突然だ? 航は一人でも面白いな、」

褒めてるのか(けな)してるのかよく分からない言葉なのに、航はまんざらでもない様子で頭に手をやる。

「そうか?」

「でも保留。私、航の事よく知らないもん。」

そう言うとチラリと僕の方を向いて笑いかけてきた。

「為井くんの事も知らないけどね。」

「えっ、あぁ、・・・そうだね。」

完全に傍観者を決め込んでいた僕は急に振られて言葉に詰まり、そのまま石川さんのペースに巻き込まれた。

「ねぇ、為井くんの事も呼び捨てでいい? 聡太だったよね? 私の事朋花って呼んでいいから。」

「・・・はっ?」

何で僕まで?

「いや、急にそんな事言われても、航と違って呼び捨てはちょっと・・・」

呼ばれるのは構わないけど、呼びにくい。

「じゃあ、聡太くんって呼ぶから、そっちも下で呼んでね。」

強引な子だな、・・・でもこういうタイプは引かない。(いささ)か独善的で自信に溢れている数人の顔を思い浮かべて苦笑した。僕の周りはそんな人達ばかりだ。

えーと、朋花ちゃん・・・は言いにくいな、

「・・・じゃあ、朋ちゃんでいい?」

「OKいいよ、それでいこう。」

その後は先程とは逆に、上機嫌の朋ちゃんが航を質問攻めにしていた。長い付き合いの僕は取り立てて聞く事も無いと思っていたのだけれど、真面目に答えている航を見るのは結構面白かった。

・・・聡太くんはどんな人なんでしょうね?

書いてる人が言っちゃいけないって?

一番最初の話書いた頃の落書きはあるんですが、それとは少しずれたかなと。

しかも、段々性格が確定してきて、情けない子になってきてます(私の中では)

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