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親友ともう一歩。  作者: 薄桜
後編
16/20

恋する乙女の暴走

16話目、本編ラストです。

・・・ではどうぞ。

朝、いつものように航の家のチャイムを押し、出てきた葵姉と話をしていたら、葵姉がふっと僕の後ろに視線をずらした。釣られて僕も振り向くと、少し強張った表情の朋ちゃんの姿があった。

「朋ちゃんおはよ、久しぶりに・・・。」

無言で僕の脇を通り過ぎた朋ちゃんは、門の前で止まるとチャイムを押した。

1回・・・2回、3回、4回・・・

つい呆気にとられ、止めるのを忘れてしまってたけど、我に返って朋ちゃんの手を掴んで止めた時には、7回目の音が鳴ってしまっていた。

「朋ちゃん、連打はしないでねって・・・前に言ったよね?」

いつか冗談で言ってた事を本当にやった彼女に驚き、同時にそんな事をしでかした彼女が心配になった。

「・・・航が早く出てこないからだ。」

おまけに、背中を向けている朋ちゃんの顔は見えないけど、声は泣きそうで、掴んだ手からは緊張が伝わってくる。

「・・・ねぇ聡太、その子は?」

遠慮がちに葵姉が質問を口にした。とりあえず振り返ってみたけど、何と言って説明したものか迷い、

「僕等の親友。」

と答えた。でもきっと僕はあまり説得力の無い顔をしているだろう。

「・・・そう。」

葵姉は納得より、戸惑いの表情を浮かべている。

「加えて言うなら、若干、航と交戦中?」

「え、喧嘩してるの?」

「・・・少し違うけど、そんな所。」

その間も、朋ちゃんの手には力が入ったままで、必死に泣くのを(こら)えているようだった。


「何だよ、今日はどうしたんだ?」

玄関が開く音と同時に聞こえた声の主に目をやると、

航は欠伸を噛み殺しながら出て来て、動きを止めた。

「あ、朋花・・・。」

間の抜けた声を出す親友に勝手に目配せし、朋ちゃんの手を離した。

・・・後は任せた。


葵姉の側まで下がると、葵姉がこそこそ聞いてきた。

「これ本当に喧嘩? ・・・修羅場って言わない?」

それも何か違う。

「これからどうなるかで、呼び方決まると思うよ。」

でも一応僕の中に答えはある。途中経過の予想はまったくつかない二人だけど、最後がどうなるかってのは、よく分かってる。


「ごめん・・・航。ごめんなさい!!」

勢いよく頭を下げた朋ちゃんに、航は慌てて駆け寄った。

「止めろって、俺が悪いんだってば。」

「違う、私航なら許してくれるって・・・何か勝手に思ってて、航の困った顔見たくて、つい色々ちょっかいかけて・・・ごめん。だがら、キャンセルなんて言わないで! ・・・私・・・私、航の事好きだから・・・だから、そんな事言わないでよ・・・。」

きっと必死で泣くのを堪えていたんだろう・・・言い終わると同時に嗚咽が聞こえた。そんな朋ちゃんを航は優しく引き寄せた。

「悪かった。そんなつもりじゃなかったんだけど・・・泣かせるような事言ってごめんな。俺も朋花の事好きだから、なっ、だからそんな顔しないで笑って、いつもの真っ直ぐな目を見せてくれよな。」


涙を拭いてやりながら、いつもと変わらない調子で話しかける航は正直凄いと思う。

二人とも、思った事をはっきり口にする性格だから、仲直りもくっつくのも驚くくらいあっという間で・・・うん、上手くまとまってよかったんだけど・・・僕達は非常に気まずい。


「・・・私、先に行くね。」

「待って、僕も行く。」

正視できずに逃げようとする葵姉を、もちろん僕も追いかけた。

今日あの二人と一緒に行くなんて、絶対無理だ・・・もう二度と痴話喧嘩に巻き込まれるのは、御免被りたい。


途中葵姉の携帯に『遅い』っていうメールが入って、僕達は特に会話も無く急ぎ、大通りの横断歩道を渡って美晴さんと合流した。

「やっと来た・・・って聡太くんも? 珍しいね、どしたの?」

意味ありげにニヤニヤしながら、僕と葵姉を交互に見る美晴さんに呆れて力が抜けた。

「・・・色々ありまして。」

「美晴、私達朝から凄いもの見ちゃった。」

「何?」

「相談してた件です。」

興奮気味に語ろうとする葵姉を、僕は一言で抑えてしまい・・・少しいじけてしまった。

「何よ、知らなかったの私だけ?」

「ごめん葵姉、話してなくて。・・・でも弟の事だから言いにくくてさ。」

「じゃぁ、まとまったんだ? で、何があったの?」

「とりあえず、歩きながらにしません?」

携帯で時間を確認し、二人にそう促した。



「ほら、何もしなくてよかったよね?」

「美晴さんは、こうなるって思ってたんですか?」

「んー、こうなるとは思ってたけど、正直こんなに展開が速いとは思ってなかった。やるね航。朋花ちゃんだっけ? いいねーその子も。」

最終的にこうなる事を始めから予測し、予想を裏切られたと余裕で笑う美晴さんはやっぱり得体が知れない。

「聡太くん、先越されちゃったね?」

「・・・放っておいて下さい。」

「ねぇ、そんなに自信無いの?」

「・・・ありません。」

「ふーん。」

そのニヤニヤ笑いは止めて欲しい。

「何が自信無いの? 何の話になってるの?」

隣を歩いていた葵姉は、途中から会話を外れ、本人も少し下がった位置にいた。

「聡太くんが意気地無しって話。」

詳しく説明されても困るけど、そんな一言で片付けられるのも悲しいものがある。

「よく分からないんだけど?」

「うん、葵には内緒の話だからいいの。」

「・・・じゃぁはっきり聞こえる所でしないでよ・・・気になるじゃない。」

この人は僕の逃げ道を潰していく気だな・・・。明らかに楽しんでいる目を僕に向けて、葵姉をはぐらかしている美晴さんが悪魔に見える。

携帯の番号とアドレスを渡したのは、早まったかも知れない・・・。



一時間目が終わろうかという頃になって、ようやく二人が学校に来た。

遅刻してきたくせに航と朋ちゃんは余裕で・・・二人とも晴れやかな顔で手を繋いだまま教室に入ってきた。今まで一体何をしてたんだか。

でも、考えるのもバカらしいから、もう考えない。

先生の苦言も気にせず、皆の冷やかしの声にも動じず・・・まったくこの二人はすごいよ。

僕があれこれ気を揉んでいたのは、本当に無駄だったのかも知れない。

・・・うん、本気で馬鹿らしくなってきた。

本編終了です。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

続いて、おまけが少々入ります。


朋花と航は意外と動いてくれない。

1回目は、無理やり(?)考えた話は、もう航が「俺達こんなんじゃねーよ」とばかりに完全停止。

2回目に書いてたのは、スタート同じなんですが、流れが違って、それは朋花が「違うでしょこれ」って止まってくれた。

じゃぁこれなら!?と、書き直した3回目は、すんなり流れてくれました。

・・・動かないじゃなくて、主張が強いのか?


おまけの聡太くんサイドは、現在暴走して迷走中です(汗)- 3/23現在

これUPした後、紙ベースで再考します。

2話で収まらないかもしれません。

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