大事だからこそ
15話目です。
・・・ではどうぞ。
私はベッドの上で壁にもたれ、膝を抱えていた。
普段ならずっと流しっぱなしの洋楽や、ロックも最近さっぱり聞いてない。全然そんな気分にはなれないから。
ここ最近は、学校から帰ってやる事だけ事務的にやってしまうと、後は段々と暗くなっていく部屋で、灯りも点けずにこうやって、今までの自分を反省していた。
最初のうちは航に対しての怒りが少しはあったけど、段々落ち着いてくると、自分の何が悪くてこうなったのかを延々と考え続けた。そうすると思い当たる事があまりにも有り過ぎて、航に見捨てられても仕方がなかったんだなと・・・落ち込んだ。
気が強い事も、わがままなのも、キツイ性格である事も、それが私なんだと思っていた。私は・・・この自分勝手な私を受け入れてくれた人しか相手にしないって・・・そう思っていた。ふざけんなってくらい傲慢な人間なんだと思って、ますます落ち込んだ。
聡太くんは、今の私はらしくないって言ってくれたけど、やっぱり反省して直さなきゃいけない所はいっぱいある。直したらもう一回航とちゃんと向き合えるかな? それとも、もうこれで駄目かな?
・・・そんなどん底にいる時ノックの音がして、私は返事もしなかったのに勝手にドアが開いた。
荷物だけ部屋に置いて制服のまま朋花の部屋に行った。ノックをしたけど返事は無い。だがそれも今更だなと思いそのままドアを開けた。
うわっ、暗い。
明かりの点いてない薄暗い部屋で、そこにいるはずの妹の姿を探すと、ベッドの上にうずくまっていた。
朋花・・・それはいくら可愛い妹でもさすがに怖えーよ!? 未練たらたらの幽霊みたいじゃないか、それ?
問答無用で電気を点けたが・・・もちろん、朋花が怒りだすのを覚悟してたのだが、少し身をよじっただけで何も言わなかった。
あの安田ってやつのせいで・・・本当にあいつのせいで、朋花はこんなになるのか?
いつもの俺に対する態度とあまりにも違う姿に、半分驚いて・・・半分は悔しかった。
朋花の正面に当たる場所に直に座り、小さくなっている妹を見た。
今までは、いくら母さんにきつく怒られても、前の学校でひどい目にあったって、ここまで落ち込んだ姿は見た事がない。あの時は、落ち込むなんて事はなく『暴れた』が正しいんだが・・・。
「朋花・・・暗いぞ。」
見たままの感想を口にしてみたが、微動だにもしない。
「朋花。さっき安田ってやつと話した。」
やつの名前を出しただけで朋花は顔を上げた。
「・・・なんで航?」
握った手に自然と力が入るのを感じ、大きく陣呼吸をして力を抜いた。
「偶然。・・・色々聞いたぞ、学校での事。」
「何で?」
「心配だからだ。」
「心配なんかしてくれなくていいよ! だって私酷い人間なんだよ!?」
珍しく後ろ向きな言葉を叫ぶ妹に驚き、そんな姿を見たくない俺は慌てて否定した。
「酷くない!朋花はそんなやつじゃないから大丈夫だ!」
「・・・何が大丈夫よ、気休め言わないでよ・・・私航に酷い事したんだよ? 和樹にだっていっぱい酷い事してきたよ!?」
「俺はお前の兄ちゃんだから平気なの! あいつだって平気だ。俺も・・・安田も、お前の事すっごい心配してるんだ。」
「でも・・・、」
敵に塩を送るような事を言うのは癪だが、朋花には元気になってもらいたい。俺の気持ちはとりあえず押さえ込んでおくしかない。
「あいつはお前の事好きだって言ったんだろ? なら信じてやれよ。俺は好きになれないが、悪いやつじゃないとは思う。」
「・・・知ってる。」
くそっ、そんな愛しそうな目をされると、胸に何か鋭い物を差し込まれた気分になる。
「なら、そんな所で小さくなってないで、仲直りする事考えろ。」
俺の言葉に妹は少し表情が緩んだが、それは再び曇った。
「・・・でも、キャンセルって言われたんだよ?」
「は? 何だそれ???」
・・・あいつ、何か都合の悪い事隠してやがったのか?
俺の中にあった、安田に対する信頼は、今この瞬間に消し飛んだ。
むー、ここも少し短いですね。
文脈で区切ってるので、勘弁してください。
次が本編ラストで、少々長いです。