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Miracle Sound 【本編】  作者: 柏田 華蓮
第3章 イミテーションの輝き
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線引きの外側02 side 果琳

 彼お手製のフレンチトーストをほおばりながら、あたしはついていたテレビに見入っていた。

 もちろんあたしの家みたいに字幕表示なんかしてある訳が無い。


 その時ついていたのは、朝の報道ニュースから少しズレたブランチのワイドショー番組だった。

 あたしは、ただ口や体なんかを動かしているコメンテーターだとか、パネルを使って丁寧に解説している文字を必死に追っていた。

 けど、何か忘れてる気がしてならない。


(何だろう? ……なんかすごく大事な事を忘れてる気がする)


 大事なようだった気がしたけど、あまりにもフレンチトーストがおいしすぎて、まあいいかと忘れてしまった。


 Lenもあたしの隣でテレビを眺めている。

 普通に考えれば平凡なあたしの隣に、人気アイドル歌手が一緒に朝ごはんを食べる風景とか、あり得ない状況なんだけれど。


 でもそのあり得ない状況が今、あたしの目の前で起きている。


 Lenは恐らく部屋着と思われるグレーのスラックスの上に、黒のTシャツを着ていた。

 ぱっと見でも分かるくらい、鍛えられた胸板の厚さと引き締まったウエストと細い腰。

 そして、その綺麗なボディラインを司る逆三角の広い背中。

 爽やかな笑顔が似合った耳にかかるくらいの髪の毛だったり……。


 世の中にはこんなに整った、“みんなのアイドル”がいるんだって思い知らされた。


 今までは音が聞こえないから、歌番組すら見ていたか怪しいあたしだったけど、Len本人を目の前にしてあたしはこんな綺麗な人を見逃して来ていたんだって思うと、後悔でため息が出そうになった。


 Lenをじっと見つめたままだったから、あたしの視線に彼が気がついて、テレビから視線を移して「ん?」って首を傾げたような気がした。

 あたしは彼の視線にドキッとして、つい癖で手話で「何でもない!」と答えてしまった。


 でも、Lenは健常人。

 手話なんてわかる訳が無い。


 あたしの手の動きに更に首を傾げて、「どういう意味?」って口を動かした。

 その動きであたしは、「あ!」って思いだして、冷静さを取り戻しつつあった。


『ごめんなさい。 あたし、雑誌でしかLenを見てなくて、今まで音楽番組を見なかったのが、惜しかったなって思って』


 脇に置いていた携帯のメール画面で、早急に打って見せると、それを呼んだ彼は急に眉間のしわをぎゅって寄せた。


 そしてあたしの携帯を取り上げると、彼が文字を打ってあたしに見せた。


『あまり良いもんじゃない』


 彼の心の嵐が読み取れる一文だった。

 でも、なぜだろう?


 そう頭を悩ませている最中、その答えの気配がして、あたしは頭を上げた。


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