一章:はじまり
漁師の主人公である戸塚舴は、町一番のバカで有名だった。
それは食べるとき、箸まで食べようとするほどに。
そんな舴が、誕生日の日に一人で漁に出た。
舴はまだ十六歳だった。
一人で漁に出ていいのか?
もちろんダメだ。
なぜ出たかって?
誕生日だからだ。
案の定、漁の仕方が分からず、船を動かせたのは奇跡だった。
暗くなったので帰ろうとしたが、帰り道が分からない。
とりあえず自分から見て後ろの方向に船を動かした。
そうすれば帰れると思ったのだ。
しかし、帰れるはずがなかった。
嵐が来て、船は沈没してしまった。
舴が次に目が覚めたのは、なんと十年後。
二十五歳になっていた。
周りを見た感じ、病院みたいだった。
窓を見ると、自分が乗ってきた船があった。
外には魚たちがいる。
ドアが開いて、声が聞こえた。
人間の声がして、ほっとした。
ドアの向こうには巨大な魚?がいた。
ボロボロすぎてよく分からない。
しかし声が人間なので、人間なのかと思った。
確かに心があれば、それは人間と変わらないだろう――
などと哲学的なことを考えるはずがない。
その巨大な魚は、そう、海の主だ。
舌が人間なので、喋ることもできるのだ。
しかし主が言うには、流石にもう生きることができないのだという。
そんなところに舴がきた。
舴を後継者に決めたらしい。
話をうまく飲み込めない舴は、それを了承した。
主は自分を食べるように言い、
舴は五年をかけて主を食べた。
もう察しはついているだろうが、
舴は主のIQを引き継ぎ……




