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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人差し指

作者: 瑞ノ星

僕の友達は人差し指を立てる癖があった。


人差し指を、天に示すように立てて、何かと一番だと自慢していた。

ある時はかけっこで、ある時は木登りで、またある時は学校のテストで。


僕は、そんな友達が大好きだった。


一学期の時から、友達はいつも一番前にいた。追いつこうとしても、届かない。僕はずっと、底のほうにいたから。


クラスのみんなに、馬鹿だ、グズだって笑われても、言葉が喉の奥でつかえて、何も言い返せなかった。


そんな僕の前に、友達はいつも立ってくれた。


叩かれて、転ばされて、服を汚しながら、それでも最後には立ち上がって、ほら、勝っただろ、と言うみたいに、人差し指を天に向けた。


その時、僕もこっそり真似をした。ちょっとだけ人差し指を天に向けてみた。

その瞬間だけは、僕も強くなれた気がした。


…それが僕らの象徴のようなものだった。


僕はこの友達と一緒にいれば、なんでもできる気がしていた。だって、実際に何でも一番になれたから。僕の友達がいつも味わっていた一番を、僕も味わうことができたんだ。かけっこも、木登りも、学校のテストも。

一緒の一番になれた時、僕らは二人で、人差し指を天に向けていた。


でもね、気づいちゃったんだ。

本当の一番をとれるのは一人だけ。当たり前のことなのに、僕はそれで満足しちゃってた。今まで、友達だけがずっと一番を味わっていたんだ。独り占めしてたんだ。


二学期が終わった時、成績表を見せあった。

友達はずっと優秀で、僕は途中から。


気づかなければよかった。君はずっとそうだった。

今までみんなを蹴落として、一番になってたのは、たった一人の友達だった。


あの時かけっこで一番になれたのは、周りの子が君に怯えてわざと遅くしてたこと。木登りで一番だったのは、みんなその木が学校の御神木だって知ってて傷つけたくなかったってこと。僕が虐められていたのも、君が僕を孤立させるために嫌な噂を流したってこと。


全部、知っちゃったんだ。いじめっ子にこっそり教えてもらったんだ。

僕だけが、友達だと思ってただけだったんだ。


放課後の教室の隅、窓から差し込む夕日を背にした君の首に、今、僕の指が伸びている。


君は、もう人差し指を天に向けられない。

最期に君が指を向けたのは、僕だった。


動かなくなった君を見下ろして、僕は人差し指をゆっくりと、教室の床に向けた。

これで僕は、本当の底辺だ。


大切な友達を殺した、最低の人間だ。

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