武器は買うべきか? 買わないべきか?
賢一たちは、武器商人のマリクと話をしながら、買い物をしていた。
「昨日、アンタたちの武器を調整したのも私だよ? オタクらの九九式は、どちらも日本軍オリジナル弾薬から、大口径NATO弾に変更されているわ」
昨日、没収されていた九九式狙撃銃&九九式軽機関銃などを、マリクは分解清掃していたのだった。
「恐らくは、射撃場で入手しやすい弾薬を使えるように、変更されたんだろうね」
「そこまで詳しいのか? たが、武器弾薬は足りている」
「…………ちょっと、待って? 昨日、拾った道具があるけど、代金は現金の方が良いかしら?」
マリクは、武器の考察をするが、それでもセールストークに乗るまいと、賢一は購入を拒否する。
そして、彼が踵を返して立ち去ろうとした時、エリーゼは興味深そうに商品を眺めた。
「どっちでも良いわっ! ただ、現金は足りているから、武器や道具の方が良いけど」
「じゃあ、そこの火炎瓶が欲しいわ? 一本につき、コンバットナイフ一本で、どうかしら?」
マリクが武器道具を欲しがると、エリーゼは商品を手に取って、物々交換を行う。
彼女は、さっきの言葉どおり、リカルドを捕まえた時、倒れているゾンビ達を物色していた。
そのため、ピックアップには、収納ボックス内に、いくつか売れそうな品物があった。
なので、後から荷台に積んである物を取りに行こうと考えていた。
「じゃ、それで毎度あり~~♫ あと、私はパイプガンの改造方法を知っているわよ? もう少し、何か購入してくれたら教えるけどね」
「44ラシアン弾、8ミリ南部弾、26年式の弾薬はあるか?」
「煙草や釘なら、あるわ? それでどう?」
マリクが呟いた改造武器の方法が知りたくなった賢一とエリーゼは、更なる取引を即決した。
「うっし? じゃあ、弾薬箱を渡すわっ! こうやって、ワイヤーと引き金を合わせるっ! そして、反対側をどこかに括ると、トラップの完成さっ!」
「それは知っているぞ…………」
パイプガンの引き金を弄るマリクを見て、賢一は少しだけ呟いて絶句する。
それは既に見たことがある罠だったため、商売文句に騙されたと思い、彼は落胆したのだ。
「まあーー待ちなさいっ! ただ、このワイヤーを括り罠みたいにしたり、選択バサミ、ストラップやフックなどを組み合わせれば、色んな場所に設置できるよ」
「なるほど、ショットガントラップの改良か? 創意工夫すれば、さらに便利に使えるワケだ」
「でも、私は普通に、ショットガンとして使っていますから…………」
マリクの話しに、がっかりしていた賢一は、新しい改造知識を得られて、うつむいていた顔を出す。
しかし、メイスーは自らのパイプガンを取り出し、気まずそうに両手で握りながら眺める。
「なら、このソードオフを買えば良いじゃない? そしたら、パイプガンは罠用になるし? 拡散範囲も広いから、こっちの方が便利よ?」
「うぅ? 紐は既にあるから、トラップは作れますね? どうしよう、買うべきでしょうか…………」
「メイスー、護身用に買っておくべきだぜっ! 敵に囲まれたら、ソイツで身を守るんだ」
「そうだな? 二連式で、短い銃身は便利だっ! 散弾が横に拡散するから、ゾンビに囲まれたら時に便利だしな」
二連散弾拳銃であるソードオフを、バンの奥からマリクは引っ張り出した。
ただし、メイスーは無駄な買い物をするべきではないと考えて迷う。
新しい武器を買えば、荷物が重くなるし、華奢で小柄な彼女は、体への負担を増やしたくはない。
しきし、護身用として新しい武器が必要と考えるダニエルと賢一たちは、購入を進めた。
「代金は、小ビール瓶と追加の煙草ね? 後は使えそうな物は? 無いわね?」
「軍用の手榴弾があるな? 回収してきたのか? いくつか買うとしよう」
「毎度あり~~」
賢一とエリーゼ達は、他にも購入する物を決めると、ピックアップを移動させてきた。
それで、武器と道具などを物々交換して、マリクとの取引を終えた。
「何かあったら、私の火炎瓶で」
「これ、扱えるかしら?」
そう言いながら、エリーゼは火炎瓶を、メイスーはソードオフを眺めながら呟く。
また、二人を含む仲間たちは、ピックアップの荷台に上がって、移動するために準備を行う。
「よし、じゃあ行くからな?」
「また欲しい物があったら、来てね」
こうして、賢一達はマリクと別れて、ピックアップを、もう一台の方へと運転していく。
「ダニエル、向こうの運転は頼むぜ」
「分かってるって」
「よっと」
「うーーんっ!!」
ピックアップを同じ車両に、賢一が横づけすると、ダニエルは荷台から飛び降りる。
エリーゼとメイスー達も、隣の方に飛びはねながら、サッと移っていく。
「それじゃあ、行くぜ? 着いてこい」
賢一は、ピックアップを運転して、ボートエンジンを探すべく、豪邸から出発しようとする。
警備員が、スライド式の正門を開き、そこから出ていくと、カーブした道路を下っていく。
「ここから、元の道に戻れば、橋を越える見たいだな? 向こうはゾンビや人間たちが暴れる地獄だぜ? お前ら、準備はいいかっ!」
「海兵隊員は、文句を言わないよっ! ウーラー!」
「危険を犯してでも、火の中に飛び込むのが消防士だっ!」
ゆるやかな坂を下り終えた賢一は、ピックアップをUターンさせて、本来いくべき道を進む。
その荷台では、モイラとジャン達が鼻息を荒くして、敵と戦う準備ができていると答えた。
「分かったぜ、ドラクエと同じで、橋を越えたら敵が強くなるのは現実も一緒か…………はあ」
愚痴りながら、まばらに立っている家屋や邸宅を通りすぎる景色を見ながら、賢一は呟く。
ほかにあるのは、なま暖かい潮風を受けて、靡く草原と樹木ばかりだ。
やがて、長いアーチ橋まで達した彼らは、対岸に待ち受ける建物が目に入る。
そこに到達すると、破壊されたり、事故を起こした車両が数多くあった。
「参ったな…………段々と進むのが、難しくなってきたぞ? 低速で走らなきゃ成らんし」
「不味いわね、ゾンビが走ってくると、にげきれなないわ」
「ギャングも、上から狙ってくるだろう」
四車線の路上には、自動車やトラックなどが、大量にあったため、かなり邪魔になっていた。
その合間を、賢一はピックアップを蛇行運転させて、走り抜けるしかない。
市街地は、見通しが悪く、車の陰や窓からゾンビやギャング達が襲撃してくるかも知れない。
それを警戒して、モイラはM1ガーランドを、ジャンは九九式軽機関銃を、それぞれ構えた。
「うわ、想像していた通り、厄介なことになった」
賢一は、両側をビルに挟まれた場所で、行き止まりに当たってしまった。
前方で、スクールバスと大型トラックが横転しており、他にも自動車が玉突き事故を起こしている。
「ここから先は、歩いて行くしかない? どの道、燃料が少なくなってきているからな」
「分かったわ、行軍訓練は慣れてるから大丈夫よ?」
「仕方ない、後ろにも下がっても面倒だしな? ダニエル、ここからは歩いていくぞ」
「マジかよ? ダルいぜ~~!? まあ、行くしかないかっ!」
ピックアップから降りた賢一は、大型トラックの車体と荷台を連結している部分を眺める。
そこは屈みさえすれば、向こう側に通って、行けそうだったからだ。
モイラは、右腕をグルグルと回しながら歩きだし、ジャンは九九式軽機関銃を背負う。
歩くぞと言われて、ダニエルは露骨に嫌そうな顔をしながら愚痴る。
「うん、なんだっ! 空襲だっ! みんな離れろ」
そんな仲間たちを見ながら、賢一も嫌そうな表情で、前に向きなおった。
だが、いきなり上空からプロペラが回転する音が聞こえると、彼は近くの軽自動車に隠れた。
■ 武器説明。
⭕️ 二連散弾拳銃ソードオフ。
一度に、二発しか撃てないが、ダブルバレルより軽い上に、散弾の散布範囲が広い。
ただし、射程距離と威力は逆に下がっている。
また、素早い装填も行えるため、大勢の敵を相手にした時、真価を発揮するだろう。




