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難民たちの移送開始


 賢一たちは、戦いを終えたが、難民たちの我慢と疲弊は、もう限界に達していた。



「どの道、増援は期待できなかったか? それに最初から難民たちを、南側に逃していれば…………まあ、今さら悔やんでも仕方ないか」


 賢一は、真剣な顔つきになると、今できることをするべく、気を取り直した。



「マヌエル、アリアニー? 邸宅の裏にピックアップが停まっていたから、それを使って南側の橋に向かえっ! そこから先は、安全地帯になっている」


「ホテルの人たちには、話をしておきますから、まずは橋の近くにあるスーパーに向かってください」


「そうしよう? ここを拠点にするのは、一時凌ぎにしか成らない」


「ええ、早々に立ち去りましょう…………ありがとう、私たちは急いで出発の準備をするわ」


 難民たちを運ぶには、数が足りない自動車を補うべく、賢一は見つけた車両の場所を教える。


 自分の親類が避難しているスーパーを、メイスーは安全だと考えた。



 マヌエルは、二人の進言を聞き入れて、両腕を組ながら頷くと、歩き始めた。


 アリアニーも感謝すると、早速出発する準備のために、仲間たちを集めに行った。



 こうして、彼らは外に集まると、車列を成して、安全地帯への移動を開始する。


 乗用車を先頭に、三台のピックアップが走っていき、遠くへと消えてゆく。



「これから、どこに行くんだい?」


「分からない…………安全地帯らしいが…………」


 アジア系の壮年女性が不安そうに呟き、白人ギャングも怯えたような顔で答える。


 ピックアップの荷台に乗せられた難民たちは、困惑した表情を抱いていた。



「消えて行ったな? あの大型トラックが使えれば、荷台に乗せられたが、代わりにピックアップがあって良かった…………武器も大量に入手したし、あれなら安全地帯まで、無事に行けるだろう」


 賢一は、いつまでも車両部隊を見ている暇はないと思って、懐から無線機を取り出した。



「甘、頼みがある? 聞こえるか」


『聞こえるぞ? 援軍か? 砲撃支援か? どちらも現在は無理だな…………警察や軍隊は、すぐには動いてくれない』


 無線機を使い、賢一は難民たちの無事を願い、甘から助けて貰えるように連絡を行う。



「いや、スラムの連中が難民化しててな? 女子供、老人を引き連れている? ほぼ全員が武装しているが、困っているから橋を通してほしいんだ…………それから、安全地帯で彼らを受け入れてくれ」


『そうか? 検問所や防衛部隊の連中には話をしておく? 話しは、それだけか?』


 賢一の頼みは通ったが、甘は忙しいらしく、無線機を切ろうとする。



「いや、新しいゾンビを見たんだ? 巨漢デブの強酸を吐き飛ばしたり、大量のゲロを道路に吐いたり、腸から血液を噴射したりなっ! 今思えば、スピットゲローの強化版だったな」


『はあ…………ソイツは確かに、スピットゲローの亜種として、私も調べた? 太っているから、ファットゲローと呼ばれているな』


 賢一は、警察のパトロール部隊を襲った巨漢ゾンビを思いだして、甘に戦闘経験を報告する。



『弱点は、背後からの攻撃だっ! 奴は太っているから直ぐには振り向けないっ! また、正面から射撃を集中させるのも良いな』


「分かった、他に新しい情報はないか? 新しいゾンビの情報とかな」


「横から悪いね? 甘、警備員と戦ったんだけど? 一部の金持ちたちは、こちらまで敵認定しているわよ? それに、新しいゾンビに苦戦したくはないのよ」


 戦闘証言を集めていた甘は、ゾンビの死体も調査したらしく、詳細や対処方法を説明する。


 賢一は、さらなる情報を求め、モイラは人間の武装勢力と戦ったことに関して語る。



『…………済まない、研究中のゾンビばかりで、どうしても報告が後出しになってしまうんだ』


 無線機の向こうで、甘が申し訳なさそうに呟いている様子が、声が小さくなっているために分かる。



『まあ、新しいゾンビか? そちらから先に答えよう…………まだ目撃証言だけだが、レーザー光線を放つタイプ、毒ガス噴出タイプ、怒鳴り声を上げる女性型が確認されている?』


「レーザー? SF映画じゃあるまいし…………」


「なんだい、そりゃあ~~?」


「はあ、おいおい、ふざけているのか?」


 甘は、気を取り直したらしく、新型ゾンビに関して、聞き取り調査して知り得た情報を語る。


 ただ、賢一は信じられないSFワードが出てくると、アホらしいと感じた。



 同感だと思って、モイラはため息を吐くように呟きながら、呆れてしまう。


 今まで黙って聞いていたが、ダニエルも思わず反応してしまい、愚痴りながら顔を歪ませる。



『いや、私にも原理は分からないが、そう言う風に見えるタイプが出没したんだ』


 三人の声を聞いて、甘も困ってしまうが、彼も新型ゾンビを直接目撃したワケではない。



『まあ…………そのゾンビに関しては、サンプルが入手できたら、こちらで詳しく調べておくっ!』


 取り敢えず、甘は三人を説得しようとして、話題を変えようと考えた。



『さっきの武装勢力に関する質問だが? ギャング達だけでなく、右翼民兵や有力者の私兵などが内戦に乗じて、跋扈ばっこしている? 特に、プロケト・イスラム解放戦線には気をつけてくれ』


「分かったぞ、後は俺たちで何とかするからな」


「また、何かあったら呼ぶからね」


 甘は、人間勢力に関して語り、念を押すように、一番危険なテロリストの名前を出した。


 賢一とモイラ達は、それを聞いて、やはり注意するべきは、一番巨大な組織かと思った。

 


『なら、こちらも何かあったら連絡する…………話しは以上だ』


 これ以上、伝える事はないと判断して、甘は無線を切ってしまった。



「終わったな? レーザー、毒ガス、怒鳴るタイプか…………よし、ソイツらは俺たちで確認するしかないっ! ここからは新しい武器を持っていくぞ」


「だねっ! さあ、冒険の旅に出るよっ!」


「じゃあ、行きましょうか? 新しい拳銃も手に入ったし?」


 賢一は、九九式狙撃銃に、ゴボウ銃剣を着剣して、槍のように使おうと考えた。


 モイラも、ヘンリー小銃の弾を一発ずつ込めていくと、やる気を出して、ピックアップに向かう。



 得意気な顔で、メイスーは銀色の九四式拳銃を、ポケットから取り出した。


 そして、両手で大事そうに抱えたあと、銃身を小動物を可愛がるように撫でる。



「ああっ! メイスー、その拳銃に弾倉は込めるな? あと、チャンバーにも弾が入ってないか、確認しろ?」


「はあ? あの…………」


 賢一は、九四式拳銃を見るなり、メイスーに向かって、いきなり叫んだ。



「九四式拳銃…………本来は、外装パーツに覆われた部分も外に出てるから、そこが叩かれると暴発するかも知れないんだ? ま、個体の製造された時期と作り手にもよるが工作精度の低いのはヤバいんだ?」


「これも、南部と一緒で、偽物が流通しているのかしらね? それとも、二次大戦のが残っているのか…………メイスー、取り敢えず気を付けるようにね」


 賢一とモイラ達は、銃器を解説しながら、メイスーに注意を促した。



「そのどちらかだろうな? しかし、トカレフと一緒で持ち運ぶ際は、弾倉を抜いて持ち運ぶらしいから気を付けろよ」


「は、はい? 今、確認します? あ…………弾は入ってないです…………でも小型だし? 護身用と弾薬は多いんで使います」


 賢一は、メイスーの安全を気遣い、再度使用に関して、彼女を注意した。



「おい? お前ら、しゃべってないで、行こうぜ?」


「そろそろ行かないと、帰りが夕暮れになるわよ?」


 ピックアップの運転席に座るダニエルは、面倒くさそうに呟いたあと、欠伸あくびをした。


 その後ろでは、エリーゼが荷台に上がりながら、太陽を眺めていた。

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