工場に戻ったら???
邸宅の中を歩き、賢一たちが廊下の突き当たりにくると、両端の方に階段が見えた。
そして、正面には、バルコニーに出るためのガラス両ドアがあった。
「俺は、外に向かうが? バルコニーから下を調べる…………向かい側に敵が潜んでいるかも知れないからな」
「エリーゼとモイラ達が戦っているはずだ? 二人とも、背後から静かに行くと言っていたからな? 俺は下に向かう? まだ敵が残っているかも知れないからな」
「お前らに上は任せたぜっ! 俺も下にいく、援護を頼んだぜっ! ブラザー」
「あっ! じゃあ、私は…………賢一さんと…………」
賢一は、裏手にあるバルコニーの両ドアへと向かったが、足音は立ててなく、緊張感も解いてない。
まだ、やるべき仕事が残っていると思う彼は、やつれた顔を引き締めると、外を眺めた。
ジャンも、気難しそうな顔で後に続き、九九式軽機関銃を握る手に力をこめる。
彼が左側の階段に向かうと、ダニエルは反対側から下に降りていく。
メイスーは、後ろを気にしながら、恐怖の滲んだ顔をしながら歩いてきた。
静かな時間の方が、いつ攻撃されるか分からず、不気味に感じられるからだ。
「ん? 早速、敵…………じゃなくて、モイラかっ? エリーゼも?」
「賢一じゃないか? こっちは終わったわよ? 二人で逃げようとしている連中を片付けたのさ?」
「奇襲を仕掛けたら、一気に方は着いたのよ」
バルコニーから、賢一が裏側に面した駐車場を見ると、三台のピックアップが停まっていた。
モイラは、そこで死体を調べており、エリーゼは周囲を真顔で見張っている。
「終わったのか? ふぅ~~やっと、一息つける…………」
「どうやら、そのようですね? 後ろは大丈夫でしたよ…………気になったんで、調べてきました」
賢一とメイスー達は、バルコニーから地上を見下ろしながら呟いた。
左側にあるピックアップの側では、白人警備員が倒れており、AR15が落ちている。
そこから少し離れた場所では、アジア系の警備員 が、AR15を握ったまま事切れていた。
道路には、アジア系の女性生存者が、ミニボウを抱えながら血塗れになっている。
その側では、ヘンリー小銃を背負っている白人女性生存者が横たわっていた。
二人から離れた位置に、ラテン系の女性生存者が死んでおり、レミントンM700もある。
「メイスー? 居たのか…………取り敢えず、さっきの空襲が気になるから、一度は工場に戻ってみよう」
「そうですね、武器も集めたいですけど、その前に工場の人たちが無事か、確認しに行きましょうか」
賢一とメイスー達は、二人とも工場の様子を気にして、帰ることにした。
「じゃあ、行こうか? モイラ、エリーゼ、ジャン…………いったん戻るぞっ! 武器の回収は後回しだっ! さっきの空襲が気になるからな」
「分かったわ、二人一組で、ピックアップに乗って、戻りましょう」
全員に聞こえるように、大きな声で賢一が叫ぶと、モイラはすぐにピックアップに向かった。
こうして、邸宅の制圧は無事完了したため、彼らは工場に戻っていった。
「撃つなーー!? 味方だあっ!! こっちの敵は全滅させたっ!!」
「撃たないでくれよ? 両手を振って知らせねぇと、分からないかっ!」
モイラが運転するピックアップに全員が乗ると、荷台の上で、賢一が頭上ゆAR15を掲げる。
同じく、ダニエルも両手をバタバタと振って、身振り手振りで、攻撃されないようにする。
「お前たち? 無事だったかあーー! こっちも、何とか勝ったぞ」
ピックアップが、工場の右側に近づくと、ウージーを握るユンが走ってきた。
「ユン? なんで、アンタが武器を持っている? 怪我は大丈夫なのか?」
賢一は、道路に飛び出てきたばかりのユンを不思議に思い、質問してみた。
「ああっ! 後ろから警備員たちに襲撃されて、全員で応戦したんだっ! 奴らは落とし穴に落ちたり、ゾンビと戦っているうちに、飛行機に殺られたんだ」
疲れきった表情で、ユンは背中を丸めて、両手を膝に着けながら語る。
「それで…………そっちの負傷者は? 無事で済むはずが無いだろう? 何人殺られた」
「また、民間人が犠牲になったか? ぐっ!」
「仕方ないさ、これが戦争なんだよ」
渋い表情で、賢一は質問すると、ジャンが拳をピックアップの屋根にぶつける。
揺れる運転席の中では、モイラが憂いを帯びた顔で、ハンドルを握りながら静かに呟く。
「ああ、何人か死人と負傷者が出た…………だから、俺も戦わざる終えなかった」
ユンも、眉間に皺を寄せながら、戦死した人間のことを、溜め息を吐くように話した。
「そうか? ここは強化するか? 速めに避難させないとな? 取り敢えず、俺たちは武器を取りに戻るっ! 話は、その後にしよう」
「それを、マヌエルとアリアニー達に伝えてくるっ!」
「じゃ、ピックアップはUターンしないとね?」
こうして、賢一は武器を回収しに戻ろうとして、ユンも整備工場に戻っていく。
モイラは、ピックアップを邸宅の方向に向かわせて、アクセルを踏んだ。
それから暫くして、工場に戻った面々は、老人や子供たちの怯えた様子を目にする。
彼らは、戦える若いギャング達が、ほとんど死んだため、ただ次の襲撃に怯えるしかない。
しかも、死んでいった連中の中には、かなり親しくしていた親戚や知人であった者も多かった。
「アンドレア…………」
「くうう」
「お兄ちゃんはっ!」
「…………もう居なくなったの」
壮年の白人夫婦は、顔を手で覆いながら、すすり泣き、暗い雰囲気を漂わせる。
アジア系の子供は、黒人女性ギャングの体を叩きながら、駄々をこねる。
「まるで、葬式会場だな? 嫌な雰囲気だぜ」
賢一は、赤と青のスポーツカーに挟まれた小道を歩きながら、険しい表情で呟く。
「作戦中に何回も見たわ、未だに慣れないものね…………昔よりは、平気になったけど」
「ギャング仲間が、喧嘩で死ぬのは中学以来だぜ」
「うぅぅ…………私たちに、もっと力があれば」
「そうだ、もっと力が欲しいっ! 人を助けるパワーがっ!」
「ふぅ、落ち着きなさい? このまま暗くなってても前に進めないわ」
秘密任務の時に、モイラは水葬せざる終えない戦友を見たきたが、今でも脳裏に嫌な記憶が浮かぶ。
不機嫌な顔になっているダニエルは、愚痴りながら、トラウマになった出来事が脳裏によぎる。
自分の不甲斐なさに、メイスーは申し訳なさを感じて、背中を丸めながら歩いていく。
同じく、ジャンも消防士として、人が救えなかった事で、自らに腹が立つ。
そんな彼らに、エリーゼは困った表情から、いつものポーカーフェイスを無理やり変えながら呟く。
「君たちか? 事務所から、軍や警察に電話をかけたが、援軍を断られてしまった」
「人手が足りないし、こっち方面は、私兵部隊やギャングが多いから無理だと言われたわ」
正面大門の方で、マヌエルとアリアニー達は、相談していたが、こちらを見ると話しかけてきた。
「電話か? 色々あって、すっかり無線が使えるのを忘れてた…………拠点を強化している時に呼べば良かったか」
「いんや? どの道、今の話しの通り? 救援部隊は来なかったわよ」
「甘さんに、無線をかけたら?」
「いや、地位が高いとは言え、彼もただの民間人に過ぎない…………恐らくは救援を寄越せたとしても、時間がかかっただろう」
「それに、見たでしょう? ゾンビに苦戦している警察部隊を…………あと、敵の航空機が飛んでいるし」
ユンが現れたことや、襲撃部隊が来たことで、賢一は無線機を使う暇なく戦闘するしかなかった。
ただ、モイラが指摘したとおり、援軍が現れる可能性は低く、また時間を要しただろう。
メイスーは、それでも使っていた場合を考えて、顔を暗くさせてしまった。
しかし、ジャンとエリーゼ達は、彼女の考えに対して、首を振って答えた。
■ 武器説明。
⭕️ レミントンM700。
民間で販売されている、スナイパーライフルであり、命中率が高く反動が小さい。




