邸宅の中へ
賢一とメイスー達は、二人だけで、弧を描くように森の中を迂回しながら、邸宅に向かっていた。
「メイスー、早くしないと後ろの連中も危ないっ! 敵はプロだから、回り込んでくるだろう」
「はいっ! 一応、難民の方々にも、銃撃戦に備えて武器を渡してましたが、安心できませんからねっ!!」
額から、大量の汗を垂らして、ひたすらに深い森を、賢一は突きすすむ。
メイスーも、彼に置いてかれぬように、足早に走り、古木や草葉を踏みしめていく。
「連中、銃は持ってないが、大丈夫なのか? 裏から敵が来たら全滅するんじゃないのか…………」
「丸ノコ、ペティナイフ等が、いくつか余ってましたから、待ち伏せくらいは~~はあっ!?」
邸宅の正面にまで、賢一とメイスー達は、密かに近づくことに成功した。
二人は、守るべき難民たちが、襲撃を受けてないか心配して、不安げな表情を浮かべた。
そんな彼らが、後ろから聞こえてきた轟音に驚き、振り返って道路に視線をむける。
すると、中型トラックが物凄い勢いで、攻撃を受けながらも、突っ走っていく姿が目に入った。
「誰だっ? あ、ダニエルッ!! なんで、アイツが運転しているんだ?」
「ちょっと、危ないですよっ!! ああっ!? 窓ガラスがっ!」
なぜか、トラックを運転している仲間を見て、賢一は呆気に取られてしまう。
眼を見開いて、メイスーも何が起きたか分からず、突っ立ったまま身動きできずにいる。
「このくらいじゃ、元ギャングは止められないぜっ!!」
機銃掃射や自動小銃による射撃を受けても、ダニエルは一切動じない。
窓ガラスの破片が突き刺さった体を気にすることなく、彼はトラックが走る勢いを加速せせる。
「痛えええっ!? だが、これ以上、ギャング達は殺らせないっ!! 貴様ら、今やってやるからなっ!! 覚悟しろ~~~~!!!!」
まるで、映画の主人公が如く、ダニエルは邸宅に向かって、トラックを突進させた。
「ああ、ダニエルッ!? ぶつかった…………死んだのかっ? 仇を取ってやるっ!!」
「ダニエルさん…………」
ドカンッと爆発が起きたような物音とともに、邸宅が灰煙に包み込まれてしまった。
賢一は、仲間が殺られたと思い殺気だち、メイスーは唖然としながら、両頬から涙が伝った。
「ゲフッ! ゲフッ! 警備員が何人か殺られたぞっ! 襲撃だっ!!」
「まだ、機関銃は残っているわっ!! 煙が晴れたら、撃ち返すのよっ!」
「たく、獲物の癖に…………私たちの狙いう、うぐぅ」
「フェイ? 大丈夫かっ! ぎゃああっ!」
灰煙の充満する邸宅から誰かが、蒸せながら叫びつつ、体制を立て直そうと命令する。
女性の声も、同時に聞こえてきたが、連中は未だに攻撃を諦めたワケじゃないらしい。
しかし、別な女性が武器を構えた瞬間、銃撃を受けて、二階から落下していく。
その間近では、男性が怒鳴ったが、すぐに奴も同じく、下に倒れ落ちてしまった。
「フェイとジョイス達が撃たれたっ!!」
誰かの怒鳴り声が、邸宅から響いてくると同時に銃弾が飛び交う音が、聞こえてきた。
「不味いなっ! 何が怒っているかは分からないが、取り敢えず行ってみるしかない? ダニエルの仇を討たねば成らないしなっ!」
「ええ、静かに近づきましょう? いざとなったら、銃弾を撃つ覚悟をしなきゃ…………」
怒りで顔を真っ赤にしながら、賢一は腰から左手で、ゴボウ銃剣を抜きとる。
メイスーも、丸ノコを片手に、ゆっくりと邸宅の崩れた壁に近づいていく。
「連中? まだ撃ってやがるな? 死体が頃がっているっ! メイスー、離れないでくれっ! 上に向かうぞ」
「はい…………ここからは、慎重に行かなくては」
丸坊主の屈強な黒人男性が、口から血を流しながら倒れており、白眼をむいている。
近くには、九九式軽機関銃が落ちており、彼が使っていたことが伺えた。
もう一人は、アジア系の女性で、茶色く染めた長い髪が、顔を隠してしまっていた。
側には、クロスボウがあったため、これが彼女の武器であったと思われた。
死体を見ながら、賢一はCF98とゴボウ銃剣を握る両手が、汗で濡れるのを感じた。
緊張しながら、そろりそろり~~と歩き、メイスーも罠や伏兵などを警戒する。
彼らは、灰煙のなくなったリビングを通り、左側にある階段から、二階へと向かっていく。
その先には、曲がり角があり、回りは廊下となっていて、前後を警戒しなければ成らなかった。
「敵が来たわっ! もう、ここは捨てるのよっ!」
「あっちの家まで、後退するぞっ!」
甲高い女性の声がすると同時、二階から機関銃が火を吹く射撃音が木霊する。
しかも、誰かが散弾銃で、相手と撃ち合っているらしく、大きな発砲音が響いた。
「めちゃくちゃ撃ち合っているな? 誰かが、戦っているらしい…………後ろを取れるかは、分からないが、メイスー? 準備は良いか? 良いなら後ろを頼む」
「いいです、いつでも行けます、大丈夫ですよ…………」
時おり、相手が反撃して、拳銃を撃っている音も聞こえてくるが、賢一には位置が分からない。
音が反響しており、しかも敵味方で激しい銃撃戦を展開しているためだ。
だが、それでも彼は意を決して、曲がり角を曲がる決心をすると、メイスーも真剣な顔で答えた。
そして、二人は音もなく一気に動いて、それぞれの担当する方に向かった。
「うららっ! 喰らえ、喰らえ」
「誰だ? ダニエルッ!?」
「え…………生きてた?」
向こう側で、廊下を狙って、ダニエルが両手からベレッタ98を乱射している。
そして、くるんと身を翻しながら、今度は部屋の中に、何発も鉛弾をブチこむ。
そんな様子を見て、賢一とメイスー弾は目を丸くして、思わず叫んでしまった。
二人とも、彼がトラックの運転席とともに潰れて、死んだと思っていたからだ。
「おわっ! お前ら、居たのか? って、危なっ!?」
「今だわっ! 撃ちまくるのよっ!」
「アイツ、殺ってやるわ~~!?」
ダニエルが隠れている壁際では、左右両側から激しい制圧射撃が加えられる。
銀髪ロングの白人女性は、左側にある廊下から両手に抱えたM60を途切れなく乱射しまくった。
右側にある部屋からは、ピンク髪をツインテールにした白人女性が、M4カービンを撃ちまくる。
こうして、釘付け状態にされた彼に、散弾や機銃弾で、さらなる攻撃が加えられる。
「おおわっ? お前ら、情けねーーけど、助けてくれやっ!」
「誰か居るぞっ! 向こう側の廊下だっ!」
「回り込めっ!?」
機銃弾と散弾を浴びて、ダニエルが隠れる壁は、破片を飛ばしながら、ズタボロになっていく。
しかも、二名の敵が向かってくる声がして、向こう側で、銃を構える音がした。
「うっ! メイスー、壁から援護してくれっ! 行くぞっ!」
「えっ? は、はいっ!」
曲がり角から、勢いよく飛び出していった賢一は、CF98を乱射する。
メイスーも、慌てながらも、M1カービンを構えるとともに、敵が飛び出そうな場所を何度も撃つ。
「ぐ…………が、まだ行けるっ!」
「マフムードッ!?」
「ヤバイわっ!!」
二人の射撃で、壁ごと体を撃ち抜かれたことで、マフムードと呼ばれた人物は床に倒れた。
アラブ系の彼は、九九式狙撃銃を落とすと、腰から九四式拳銃を取り出す。
まだ、息のある彼は弾倉を装填するとともに、何発か弾を撃ってきた。
それを、仲間の白人男性と黒人女性たちが、奥に引き摺っていった。
連中は、さらなる攻撃を警戒して、後退を開始したらしく、逃げていく足音が聞こえる。
「今のは不味かった…………」
「危機一発でしたね…………」
拳銃が乱射された時、すでに身を引っ込めていた賢一は、何とか撃たれずに済んだ。
咄嗟の判断で、メイスーも壁際から奥に移動しため、銃弾から難を逃れた。
「メイスー、連中を追うぞっ! ダニエル、こっちは奥に進むっ!」
「はいっ! 私たちは敵を追いつめますっ!」
「ソイツは嬉しいんだが、さっさと、このバカ達を何とかしてくれっ?」
背中を汗で、びっしょりと濡らしながら賢一は、CF98を構えながら歩いていく。
その後に続き、心臓をバクつかせながら、メイスーはM1カービンを握る。
ダニエルは相変わらず、ベレッタ98を握る両手で、頭を覆いながら、背中を壁に預けて座る。
もちろん、困り果てる彼に、白人女性たちの制圧射撃が途切れることはなかった。
■ 武器説明。
⭕️ 九九式狙撃銃。
民間人が購入した銃で、スナイパーライフルであり、威力が高くて、反動も大きい。
しかし、命中率は三八式に比べると低いが、それでも通常のライフルと同じくらいである。
スナイパースコープが左側にあるため、通常の照準を使って、撃つこともできる。
⭕️ 九四式拳銃。
1930年代に、大日本帝国陸軍が、開発・採用した自動拳銃。
他国の技術を、全く無視した、日本独自の設計がなされているが。
それ故に、内部に収める部品が、外部に露出しているため、暴発する危険がある。
これを滷獲した、アメリカ兵からも、スーサイドウェポンと言われたほど危険な品である。
⭕️ 九九式軽機関銃。
旧日本軍が使っていた強力な弾丸を放ち、高い命中率を誇る軽機関銃である。
30発の上部に搭載するバナナ弾倉、それを避けるように左側に照準が備えられている。




