ギャングと生存者たちの戦い
賢一たちの活躍により、ギャング達は、犠牲者を出すことなく、ゾンビ集団に勝利した。
「死んでいるか?」
「試してみよう」
パンパンッと渇いた射撃音が鳴り響き、白人ゾンビの頭に、ライフル弾が当てられる。
ラテン系のギャングは、M1ガーランドを向けて、死体を突っつく。
鉄パイプで、太平洋系のギャングも、黒人女性ゾンビを叩きまくって、死骸を調べる。
彼らは、戦いを終えたが、次なる敵を警戒して、未だに安心できる状況ではなかった。
「お前ら、どこから来たんだ? 俺たちは漁港まで、ボートを探しに行きたいんだが?」
「こっちは、町外れのスラムから来たのよ」
「漁港の方は、状況は分からない? たぶんだが、私兵やギャング、狩猟者だらけだろう」
「マヌエルが来なかったら、どこに行けば良いかも分からないんだ」
賢一は、ピックアップの荷台に背中を預けながら、ギャング達に質問をした。
白人女性ギャングは、ウージーの弾倉を交換しながら、目線を西側にある市街地に向けた。
漁港を睨み、黒人ギャングは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
その様子から、彼らが市内を逃げ惑ううちに、街中は戦場と化していたことが伺えた。
太平洋系のギャングは、草原に座りながら、眩しそうな顔で太陽を見ていた。
「怖いし、暑いよ~~? 暑いよ、アイス食べたい」
「待つんじゃ、安全な場所に行くまで我慢するしかない」
「ふぅ? いったい、いつまで内戦が続くのやら?」
「よしよし、泣かないでね…………」
アジア系の子供が泣きだして、駄々をこね始めて、顔を真っ赤にさせる。
建物に背中を預けながら、彼の祖父らしき、壮年男性が頭を撫でながら宥める。
ラテン系の壮年女性は、困惑したまま、ひたすらオロオロしている。
赤ん坊を抱いた黒人の母親は、我が子が泣かないうちに、迷惑をかけないために日陰へと向かう。
「怪我人は? 大丈夫だな? 消防士や救急隊は必要なさそうだな」
「ふぁーー? 擦りむいた奴、足を挫いたとかもないぜ」
「四方を見張っておくんだよっ! ゾンビや他のギャング達が来ないか、警戒しないとねっ! ほら、武器を渡すわ」
「助かる…………これで、俺たちも戦える」
「分かったわ、武器をちょうだい」
ジャンは、老人や子供たちが怪我してないかと尋ねたり、周りの集団を見渡す。
彼に対して、アジア系ギャングは、呑気に缶ジュースを飲みながら答えた。
ピックアップから、モイラは弾薬箱や銃器を取り出して、非武装のギャング達に手渡す。
アラブ系のギャングは、十四年式拳銃を受けとると、ポケットに仕舞った。
CF98を渡されて、アジア系の女性ギャングは、気を引き締めながら周辺を観察する。
「アンタ達も、必要になるだろうから持っておきなさい? 私だって、身を守るためには銃を持つんだから」
「仕方ないか…………戦いは嫌なんじゃが」
「子供たちを守るためですよ」
「母親として、あの子たちを守らないと」
エリーゼは、しょっちゅう銃器や刃物を持ち歩いて、戦場や裏路地などを渡り歩いてきた。
だから、彼女は自衛のために、ギャングや難民たちに、さまざまな武器を渡した。
アジア系のギャングは、グリースガンを受け取り、ラテン系の壮年女性たちは、竹槍を取る。
赤子を抱いた母親は、ロングナイフを貰ったが、他の面々も戦う準備をさせられる。
「あれ? 拳銃が足りないですよ?」
「ベレッタ98は、二つとも俺が貰ったんだぜ? 格好いいだろ? なあ~~」
メイスーが、ピックアップの荷台に上がり、武器や道具などを探していた。
すると、後ろから二丁拳銃で、ベレッタ98を握る両手を交差させながら、ダニエルが現れた。
「さっき、トカレフ弾が手に入らなかったからな?」
「ふざけてないで、武器を持っているぶん、前に出て、みんなを守ってくださいよ」
ダニエルが格好つけながら、色んなポーズで、ベレッタ98の銃口をアチコチに向ける。
それを見るなり、ゲンナリとした顔で、メイスーは愚痴を吐くように呟いた。
「そりゃ、当然だぜ? だからこそ、体を張るために持ったんだよ」
「それならいいんですけど…………」
「貴方たち、身構えなさいっ! 敵が来たわよっ! この距離なら、M4で当てられる」
「待ってくれっ! アレは、マヌエルの車だっ!」
自信満々に、そして真顔で答えるダニエルを前に、メイスーは気圧されてしまう。
そこに、車両部隊が現れたため、モイラは草むらから膝だちになり、Mカービンを構える。
白人ギャングは、白い乗用車と青いトラックを見て、元気に手を振るう。
やがて、それらの車が到着すると、ドアを開いて、運転手たちが降りてきた。
「誰だ? お前ら、ここで何をしている?」
「返答次第では、撃つわよ」
「見てのとおり、難民たちを保護しているんだ…………さっきは、ゾンビと戦っていたんだ」
「待ってくれっ! マヌエル、アリアニー、この人たちが助けてくれたのは本当なんだっ!」
乗用車から、ラテン系の男性と黒人女性たちが、歩いてくるが、彼らは腰に手を伸ばす。
賢一は、二人と対峙しながら交渉を試みるが、その間に黒人ギャングが割ってはいる。
マヌエルは、茶髪の癖毛で、茶色い目と日焼けした赤っぽいピンク肌だった。
服装は、白いアロハシャツに、グレーの短パンとサンダルを履いている。
アリアニーと言われた方は、パーマした長い髪に、水色の瞳を輝かせている。
着ている服は、ブルーグレーのスーツとスカートで、黒いブーツを履いていた。
「俺たちは、島から脱出するために小型ボートが欲しい…………そのために、漁港をめざしているんだ? 助けたのは求められたからだ」
「その途中で助けてくれたワケか? だったら、ここで話すのも何だから、場所を移そう? 近くに自動車整備工場がある」
「そっちなら日陰があるし、みんなが休めるわ」
賢一は、武器を手に取ろうとしていた二人から、フッと殺気が消えたのを感じた。
「そこに行くとするか? あのトラックなら、全員を乗せられるな?」
「私たちも、行くしか無いわね?」
「だから、早くしようっ! ゾンビやギャング達は待ってくれない」
「みんな、こっちに来て」
賢一とモイラ達は、一先ずは難民たちを移動させるため、トラックへと向かう。
マヌエルとアリアニー達も、同じ作業をするために、そちらに歩いていく。
「台になる物はないか? 仕方ない、俺の両手に? いや、ピックアップを横付けしよう」
「それから、介助する方が楽です? 皆さん、危険ですから下がってください」
「爺さん、婆さんっ! さっさと乗った、乗った」
「戦場じゃあ、年寄りや子供は助けなきゃね」
トラックに登る台として、ピックアップを活用しようと、ジャンは提案しながら車に向かう。
メイスーは、難民たちを道路から離れさせるべく、左右の草地に誘導した。
車両が横付けされると、ダニエルは年寄りや子供たちが乗り込むのを手伝う。
一方、エリーゼは襲撃を受けないように、周りをカメラで観察して、索敵する。
「あっと、危ない」
「気をつけて、落ちたら間抜けよ」
「さあ、赤ん坊をこちらに」
「頼みますよ」
「よいしょ、よっ!」
「はあ、本当に安全な場所に行けるのかしら?」
白人ギャングが、トラックの荷台に乗ると、白人女性ギャングも上に登る。
アジア系の女性ギャングは、赤ん坊をうけとるために、両手を差しだす。
アジア系の壮年男性が、ギャング達に手を仮ながらピックアップに載せられる。
ラテン系の壮年女性も、不安気な表情を浮かべながら列に並んでいく。
こうして、全員を載せ終わると、四台の車は、整備工場へと走りだした。




