安全区域から戦闘地域へ
メイスーは、自分の親戚が無事だったため、安堵しながらも、再び探索に向かおうとした。
「メイスー、無理に戦う必要はないのよ?」
「そうだ、君が危険な目に合うのはダメだ」
逸信と礼蓮たちは、メイスーを、どうにかして、スーパーに留めようとした。
可愛い姪っ子を、ゾンビやギャング達が暴れ回る戦場へと、行かせることに反対しているからだ。
「叔父さん、叔母さんっ! 私には抗体があって、ゾンビに噛まれても、ゾンビ化しないの…………それから、二人を脱出させるために、ボートのエンジンを取りに行かなきゃ成らないの」
何とか、二人を説得して、メイスーは仲間たちとともに、探索任務に戻ろうとする。
できれば、彼女も一緒に、安全な場所で待機していたいと思ってはいる。
それに、狂暴なゾンビやギャング達とだって、本当は戦いたくない。
ただ、エンジンを入手した場合、もっと安全な離島に彼らを連れていける。
それゆえ、スーパーに残ることを頑なに拒否して、真剣な表情を浮かべるのだった。
「ゾンビ化しないとは?」
「いったい? どう言う意味かしら?」
「私は、ビーチを歩いている途中で、大量のゾンビに噛まれたのっ! でも、中国の科学者が私たちの体を調べたら、抗体があるから大丈夫だって」
逸信が、頭に?マークを浮かべると、礼蓮も同じく疑問に思い、首を傾げてしまう。
メイスーは、そんな二人に対して、きちんと分かりやすく説明をした。
「それに…………私には、仲間たちと? その…………」
「ん? ああ、そう言うことかっ!」
「アナタ、メイスーを頼んだわよっ! え~~と、お名前は?」
「は? は…………小野賢一ですっ! もちろん、自分は彼女を守りますが?」
もちろん、メイスーが行動する理由は、もう一つあり、彼女は顔を真っ赤にさせる。
それは、逸信と礼蓮たちにも何となく伝わり、二人は賢一に笑顔を向けながら頭を下げた。
「そうか、そうか? なら安心だ」
「ええっ! これで、私たちも落ち着けるわ」
「では、叔父さん、叔母さん、私たちは行きますね」
「必ず彼女を連れ帰りますっ!」
逸信と礼蓮たちは、メイスーが選んだ相手である賢一に期待して、両親に代わって喜ぶ。
「分かったぞっ! ここで、ラーメンを作ってるからな」
「無事を祈って、待っているわ…………でも、無理はしないでね? メイスーに何かあったら、姉さんに合わせる顔がないんですもん」
逸信と礼蓮たちは、メイスーの固い決意や、彼女が抱く、賢一に対する好意に負けた。
そのため、戦地に出向く姪っ子を案じながらも、無事を祈りながら送り出すことにした。
「ええっ! それじゃあ、行きましょうかっ!」
「あ、ああ…………そうだな」
顔を紅潮させながら、メイスーは恥ずかしそうな感じで、ピックアップに向かっていった。
賢一も、その後ろ姿を見て、気まずそうな雰囲気になりながらも、早歩きで進む。
「なんか、彼氏と勘違いされたか?」
そう言いながら、賢一は少し顔を赤くしながら、ピックアップに戻ろうとする。
彼から見ても、メイスーは可愛らしいが、流石に今の状況では、恋愛感情を抱いてる暇はない。
「嫌いじゃないが、今はな…………」
自衛官として、恋愛経験のない賢一は、メイスーを前にしても困惑するだけだった。
さらに、彼は何らかの精神病にかかり、誰かを欲するような気力と余裕がなかった。
「ふぅ~~? 漏れるかと思ったぜーー!」
「缶ジュース、爆買いしたわ」
「ここは安全なようだ、心配する必要はないな」
「さあて、もう行こうかい」
ダニエルは、トイレに行っていたらしく、エリーゼは両手に白いビニール袋を下げている。
生存者たちの様子を見てきて、ジャンは相変わらず険しい表情を浮かべながら歩いてくる。
モイラは、ピックアップの運転席に座りながら手招きして、仲間たちを呼ぶ。
こうして、全員が揃うと、車両部隊はボートエンジン探しのために、駐車場から出ていこうとする。
「ああ、出すぜ?」
ピックアップを動かして、賢一たちのチームは、スーパーから離れてゆく。
こうして、彼らのチームはホテル街を抜けて、橋がかかった場所にやってきた。
ここでは、軍の部隊が駐留しており、ゾンビやギャング達が侵入できないようにしていた。
橋の手前には、ハンヴィーが二台も止まっており、機関銃手も乗っていた。
その左右には、土嚢や有刺鉄線を使って、バリケードが張られており、兵士たちが立っている。
周りのビル屋上や窓際などにも、狙撃兵たちが控えており、対岸に動きがないか見張っていた。
「おいっ! 車両を移動させろっ!」
「探索部隊か?」
白人兵士が、両手を振り回しながら、右側のハンヴィーを移動させていく。
すると、左側の野戦帽を被る黒人隊長は、M4カービンを構えながら近づいてきた。
「ああ、ここから先は~~? 状況は不透明か?」
「幾つかの探索部隊や救助隊が、行動しているが、ゾンビやギャングも活動しているから気をつけてくれ」
賢一の質問に、黒人隊長は対岸に立つ、ビルや家屋などを睨みながら答えた。
「分かった、気をつける」
そう言って、賢一はピックアップを走らせ、ハンヴィーの避けた場所から橋を渡る。
ここから先は、味方と敵が入り乱れた戦場であるため、彼は気を引き締めた。
そうして、暫くは平屋や二階建ての建物などが続く市内を、何事もなく進んでいった。
ただ、やはり安全地帯から離れるにつれて、燃え尽きた車両やゾンビ達の数が増えてくる。
「グアアッ! ギャアッ!」
「ギルルルル、グヘッ!?」
「ここから先は、敵が増えてきたな? 気をつけろよ」
「ふっ! 潰してやるわ」
「ギュアーーーー! アピョッ!」
「ああっ!! コイツらが、民間人に手を出す前になっ!!」
「グエエーーーー! ギヒッ!」
海パン姿の白人ゾンビが、ピックアップに押し倒されたまま、ずっと引きずられていく。
すると、今度は赤ビキニの黒人女性ゾンビが、吹き飛ばされてしまった。
エンジンの排気音などを聞きつけて、ゾンビ達は集まってくるが、賢一は容赦なく殺していく。
ジャンピンガーが、ビルの窓から飛び降りてきたが、エリーゼは顔面をサップで殴った。
それにより、奴は体勢を崩してしまい、後部鉄板に当たった後、道路に落下していった。
荷台に、乗り上がってきた長ドスを握るウォーリアーも、ジャンのハリガンバーを眉間に喰らった。
そして、ピッケル部分に突き刺されたことで、血と髄液を撒き散らしながら倒れた。
「ギオオオオッ!?」
「ゲアアアアーーーー! ガベ?」
「死にたくないなら、退きゃあ~~良いんだよっ!」
「死ねっ! 俺の血は吸わせねぇぞっ!」
「グルルルルゥゥーー! ガヒ?」
「私だって、噛まれたくないですっ!」
「ガルルッ!! グアッ!?」
白ジャージ姿の黒人ゾンビが、ピックアップと衝突した勢いで、ドラム缶に当たってしまう。
そして、次に灰色スーツ姿の白人女性ゾンビが、車輪に頭を潰されてしまった。
ゾンビ達が向かってくる度に、モイラは引き殺しまくり、どんどん勢いよく進んでいく。
フレッシャーが、商店の屋上から飛び降りてきたが、ダニエルは素早くボロナイフで首を跳ねた。
顔が荷台に転がると、彼は直ぐさま、キックを繰り出して、体を路上に放った。
スピットゲローが、狭い路地から現れたが、メイスーの振り回すヌンチャクを側頭部に喰らった。
そこから、血飛沫を吹き上げながら、奴は前のめりに倒れてしまった。
こうして、彼らのチームは、敵を殺害しながら街角を爆走していった。
■ 武器説明。
⭕️ 長ドス。
ヤクザが使うドスを、日本刀のように長くした物であり、ヤクザ映画や時代劇によく登場する。




