ホテルから再び死地へ
あれから、甘と陳たちと別れた賢一は、再び戦場と化した市内に戻るべく、エレベーターに乗った。
「さて、下に行くか」
「賢一さん、私の親戚もビーチ沿いの中華料理屋に居ると言いましたよね? スーパーは近いですし」
下降するエレベーター内で、賢一の側に立つ、メイスーは申し訳なさそうに話しかけてきた。
「ああ? 元々、ここにくる途中で、立ち寄ると言ってたな? 心配だろう? 連絡は取れないのか?」
「はい、何故か繋がらなくて…………」
「何か理由があるんだわ? きっと、大丈夫よっ! また、電話が壊れているのよ」
「とにかく、行ってみましょう」
透明な自動ドアが開くと、賢一とメイスー達が、先に中から出ていく。
続いて、モイラとエリーゼ達が降りてきて、ホールを移動していった。
「そうだ、気になるが? まずは行ってみてからだ」
「そうこう言っている内に、あのドアを出たら外だ」
玄関を前にして、ジャンは意気込み、ダニエルは陽気な雰囲気で話しながら歩いていく。
「M4の弾薬は有るか? まさか、こんなにゾンビが多いとは思わなかった…………」
「こっちは、ただの民間企業だからな? PMCじゃないんし、そんなに弾薬はないぞ」
「暑い? さっさと、中に入ろう? 見回りなんて、やるもんじゃないな」
「そうよね~~! アイスコーヒーでも、飲みに行こうかなっ!」
外に出ると、緑色のテクニカルが停車しており、運転席から黒人兵士が、ドアを開けた。
その側で、白人警備員が、モスバーグ500を両手に抱えながら話している。
釘バットを右手に握りながら、アジア系の生存者は、玄関に向かっていく。
コルト45を、ポケットに突っ込んでいるラテン系の女性生存者も、彼に着いていった。
「君たちが、エンジン捜索チームだな? ピックアップに食糧や飲料などは積んで置いた…………気をつけて行ってくれ」
「悪いな? じゃあ、行ってくるぜ」
「出発ね、みんな乗った、乗った」
白人警備員は、そう言って、灰色のクーラーボックスが積まれた荷台後部を指差した。
それを確認すると、賢一が一台目のピックアップに乗り込み、モイラもエンジンを始動させた。
「よっと? 乗ったわよ、スクープを取りに行きましょう」
「出してくれ、早く救助に向かうぞ」
「よし、行くぜっ!」
エリーゼは、荷台に飛び乗ると、MP28を構えながら前方を警戒した。
ジャンも、後方を警戒する形で見張り、賢一はピックアップを走らせ始めた。
駐車場から出ていった二台の車両は、十字路に来ると、警備員たちがロールバーを上げてくれた。
話が通達されていたのか、彼らは素通りさせてくれたため、車両部隊は市街地に向かっていった。
「北側の漁港に向かうが、その前に寄りたい場所があるっ! まずは、そこに向かう」
「いったい、どこに?」
「寄り道している暇は無いんだが」
賢一の言葉を聞いて、屋根に両腕を載せているエリーゼは?マークを頭に浮かべる。
不機嫌そうな言葉を吐いて、ジャンは荷台後部で、太陽の光を睨む。
「メイスーの親戚が働いている場所だっ! 次いでに、スーパーの様子も見にいく?」
そう言うと、賢一はアクセルを強く踏んで、ピックアップの走る速度を上げた。
「目的地への途上、どのみち寄るんだ? と言うか、当初の予定では寄る予定だったが、計画が狂ったからな」
「スーパーね? 大丈夫かしら?」
「さあな? 民間人が無事なら良いんだが」
賢一の話を聞いて、怪訝な顔をしながらも、エリーゼとジャン達は、周囲を観察する。
「モイラ、寄り道したい? ここから近くにあるスーパーに行きたいんだ? メイスーの親戚の店があるんだ」
『分かったわ? そこでも、補給しましょうか』
スーパーに向かうと決めた賢一の走らせるピックアップの後を、モイラは追い続ける。
「ああ、そうしよう…………切るぞ」
『了解』
そう言うと、賢一とモイラ達は、無線を切ってしまい、ひたすら車を走らせた。
こうして、車両部隊は小さなスーパーの駐車場が、正面に見える場所にまで到着した。
『そこの車、止まれっ!!!!』
「へいへい…………ここも、賑わっていたんだろうな?」
「ギャング扱いされているわ」
「我々は、敵ではないっ! 補給を受けにきただけだ」
拡声器から聞こえる声を聞いて、賢一はピックアップを、駐車場の手前で停めた。
スーパーの屋上では、M1919固定機関銃とM60汎用機関銃が配備されている。
そこでは、多数の兵士たちが警戒しており、膝だちになって、壁に身を隠しながら銃を構えている。
MP18を屋根に載せて、エリーゼは両手を上げて、抵抗の意志がないことを示す。
ジャンも、大声で答えながら狙い撃ちされないように、同じポーズを取る。
「俺たちは、ギャングじゃない? ボート用エンジンを探しに行く途上、立ちよっただけだっ! 無線で確認してくれっ! 賢一と言う奴だっ!」
「はあ? 仕方ないな…………はっ! そうです…………良いだろう」
屋上に向けて、賢一が車から顔を出して、話しかけると、兵士は左手を上げながら入場許可を出す。
「はあ、降りるぞ」
「賢一さん、行ってきますっ!」
駐車場の手前で、ピックアップを止めると、賢一は車から降りて、スーパーに向かう。
メイスーは、近くにある中華料理屋に走っていき、直ぐにドアを開けようとした。
「あ、待てって」
賢一は、駐車場から右側の通りへと向かったメイスーを追っていった。
「カギは…………開いているっ? 中は?」
メイスーは、静まり返った店内を調べたが、ここには誰も居なかった。
「メイスー、親戚は見つかったか?」
「いいえ…………」
真っ赤な壁、赤いテーブルや椅子、カウンターなど、店内の内装は中華風である。
しかし、ここは薄暗く、奥の部屋や二階に誰かが隠れている様子もなかった。
そこに、賢一も現れながら声をかけると、メイスーは落胆しながら答えた。
二人は、他の部屋も調べては見たが、飲食物が無くなっているため、ここは荒らされたと考えた。
「アンタたち、探し物? いや、人は見つかったかい?」
「居なかったようだ」
「済みません、勝手に…………」
モイラも店内に入ってきたが、賢一が顔を振って答えると、メイスーも残念そうに答えた。
「まあ、あっちに行こうよ? 気を落とさないで」
「そうします…………」
モイラの後を追い、メイスーは肩を落として、トボトボと歩いていく。
「ここのリーダーは、誰なんだ? 困っている事はないか? 我々も救助隊として、活動しているんだ」
「いや、困っては居ないが? 今のところ、食糧も不足してない」
「ギャングの襲撃かと思ったけど、配給が来たのか?」
「私たちの場所には、まだまだ余裕があるから、物資を分けてと頼みに来たんじゃ?」
駐車場の方では、ジャンと緑ベレーを被る白人指揮官たちが話していた。
その周り後ろからは、スーパー内に避難していた生存者たちが、ゾロゾロと出てきた。
「あっ! 叔父さん、叔母さんっ!」
「はっ! あの二人が?」
「生きてたんだね?」
メイスーは、白髪頭の白いシェフ姿をした老夫婦たちを見て、驚いた表情を浮かべた。
賢一とモイラ達も、彼女が大きな声で叫んだので、ビックリしてしまい、目を丸くした。
「メイスー、生きてたんだね?」
「良かった、良かったわ」
「ふええーー! 逸信叔父さん、礼蓮叔母さん、二人とも無事で良かった」
逸信と礼蓮たちは、メイスーを見ると喜び、思わず三人とも涙を流してしまう。
「何で、連絡をくれなかったの?」
「ゾンビなのか? ギャングの襲撃か、分からないけど、電線が切られてなぁぁ? みんなも、逃げる途中で携帯は落としたり、壊れたりしてな」
「私たちも、仕方がないから、店の食糧品は炊き出しに使ってしまったわ」
メイスーの問いに対して、逸信と礼蓮たちは、眉間に皺を寄せながら答えた。
「それよりも、メイスーは無事だったか? 連絡しようにも? こちらも、ゴタゴタ続きで済まなかった」
「道綸や宇凛も、無事よ?」
「そう? 二人も無事だったのね? 叔父さん、叔母さん、私も話を続けたいけど、今はエンジンを取りに行かなきゃ成らないの…………必ず帰ってくるから」
逸信と礼蓮たちは、メイスーをスーパーに歓迎しようとしたが、彼女は困った表情で答えた。
自分が、エンジンパーツや技術者などを探しに行かなければ、避難は出来ないからだ。
そのため、彼女は名残惜しいが、ここから離れて、ピックアップに向かねば成らない。
こうして、スーパーで休む間もなく、みんなは次なる目的地に行こうとしたのだった。
■ 武器説明。
⭕️ M1919。
この銃は、第一次世界大戦末期に、アメリカ合衆国で開発された重機関銃である。
第二次世界大戦では、重機関銃だけでなく、戦車や各種車両の車載機銃としても運用された。
また、銃自体の重量を軽くして、航空機銃としても使用された。
アメリカ軍で広く配備が行われて、第二次世界大戦における主力機関銃の一つとなった。
1957年に、M60機関銃が採用されると、徐々に更新されていった。
しかし、ベトナム戦争の頃まで使用された上に、東南アジア等では、未だに現役で配備されている。
固定されており、短い連続射撃ならば、M60よりも高い命中率を発揮する。




