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リゾートホテルの最上階


 集まった六人の前で、甘と陳たちが、スクリーンに映し出された太った怪物を睨む。



「デブゾンビ、いや? ファットゲローは通常だと、口から強酸を地面に吐く…………これで、強酸の水溜まりを作るんだ? しかし、たまに腹から垂れ下がった腸からも、血液を横凪に噴射するんだ」


「この血液だけど? 強酸と同じく感染性があり、通常の人間に取っては危険だわ…………また、噴射力も強くて、打撲するくらいの勢いはあるわね」


 甘は、ファットゲローの大口と、臓物が垂れているパックリと割れた腹部を、指差しながら語る。


 道路に撒かれた黄緑色に光る強酸や、血液を吐き飛ばしている画像を見て、陳も真剣な顔になった。

 


「甘っ! 感染性の心配なら俺たちには、必要ないぜ? アンタが、そう言ってたじゃないか?」


「ああ、それは当然だ…………だが、新しいゾンビの中には強力な感染性を持つタイプ、または強酸や猛毒とウイルスを組み合わせたタイプも存在するかも知れない」


 賢一の言葉を聞いて、甘は両腕を組ながら、眉間にシワを寄せながら語る。



「だから、射撃タイプや変種には気をつけるんだ」


 そう語る甘だが、後ろのスクリーンには、今まで戦ってきたゾンビ達が写る。



「それだけでは有りません…………貴方たち以外にも、何人か抗体を持つ人間も発見できましたが、人によって、個人差が大きいのです」


「陳の言う通り、何回か噛まれてからゾンビ化した者、噛まれてもゾンビ化するまでに時間がかかった者…………腐敗臭を吸っただけで、空気感染したであろう者も存在する」


 陳と甘たちは、様々な情報とサンプルを集めており、また新たな発見をしていた。



「何回か噛まれたら? って、何ですか?」


「甘、どう言う意味だ?」


「語弊があったな…………人によっては、君たちと同様に噛まれても、発祥しない場合がある」


「ただし、さっきの通り、個人差があるから噛まれるまでに時間がかかるタイプか? 二回か? 三回、噛まれると転化するかは分からないのよ」


 すでに、ゾンビ連中から何度も噛まれているため、メイスーは頭に?マークを浮かべる。


 同じように、賢一も首を傾げてしまい、お手上げだと言わんばかりに両手を振ってしまう。



 丁寧な説明をして、甘と陳たちは、不思議がる六人を納得させようとした。


 そして、スクリーンに手首や脇腹を噛まれた警察官や生存者たちを、写し出していく。



「じゃあ、俺たちも噛まれた場合、ゾンビ化するのか? それに他の抗体持ちが見つかったのならば、もう俺たちは必要ないんじゃないか?」


「いや、君たちは必要だっ! 他の抗体持ちと違って、アレだけ何度も噛まれても、ゾンビ化していない…………つまり、君たちからの血液からしか貴重なワクチンは作れないと言うワケだ」


 素朴な疑問が浮かんだため、賢一は取り敢えず、甘に質問してみた。



「ただ、さっきも言ったが、毒性を有する未発見の特殊感染者には気をつけてくれ? 連中の毒は、感染症を悪化させるからな」


 真剣な顔つきで、毒蜘蛛や毒草をスクリーンに映し出しながら、甘は話した。



「それは分かったぞ、それから次はーー? テロリストの話しだったか?」


「次いでに、脱出手段の話しだわ? 空から行くのか? 海から行くのかしら? どっちにしても、簡単にゃあ~~行きそうにもないね」


「まずは、テロリストたちの情報を聞かせて貰うか? 民間人を奴らは狙うだろうしな」


「悪いニュースから先って、ことね…………」


 賢一は、テロリスト達の居場所が気になり、連中を討伐する気であった。


 モイラの方も、先に彼が聞きたいことを言ったため、別な質問をしてみる。



 脱出手段よりも、ジャンは悪人が生存者に手を出さないかと心配になり、険しい顔つきになる。


 どうせ、戦いは避けられぬなら、敵の事から聞いてしまおうと、エリーゼは思った。



「そうだな? テロリスト達の話しだが、民間空港や空軍基地などを連中が占拠したんだっ! つまり、空からの脱出は不可能になった」


「また、軍の隊長と話をしたんだけど、基地から地大空ミサイルが盗まれたようだわ? それに、テロリスト側のスパイや連絡要員たちが、ヘリコプターや飛行機を使っている見たいね?」


 甘と陳たちは、プロペラ機やヘリコプター等を、スクリーンに写していく。



「おいおい、マジかよ? で、どーーすんだ? 空から爆撃なんて、ごめんだぜ」


「機銃掃射を浴びるのも怖いです…………」


「こちら側の機体も、援軍に呼んでいるが、ローター音やエンジン音が、敵の群れを呼び寄せるかも知れない」


 爆撃を受けたら、ダニエルは運転中だと、車ごと吹き飛んでしまうだろうと想像する。


 メイスーは、逃げ回りながら背後から機銃弾を浴びせられることを考えて、恐怖のあまり震える。



「だから、空からの脱出は諦めて? しかも、上からの攻撃に注意しろだと? 勘弁してくれ」


「すごい、緊迫した状況ね…………」


 飛行機は無し、しかも逆に爆撃を受けると聞いて、賢一は思わず俯いてしまう。


 ポーカーフェイスを崩さず、平然としているが、エリーゼも今の状況を苦々しく思ってはいる。



「甘、他に脱出手段は無いのかい? モーターボートなら、私は操縦できるわ」


「なるほどっ? 海兵隊員だからかっ! 俺も船舶免許を取ってれば、今頃はボートの上で、美女と寝転んでただろうなっ!」


「呑気ね? アホを言ってられて、羨ましいわ」


「それよりも、こうしては要られんっ!! 今すぐ、民間人を助けに行かないとっ!?」


 海兵隊員であるモイラは、船舶免許を持っており、船さえあれば運転はできる。


 それを聞いて、ダニエルは海の浮かぶ豪華なクルーザーで、椅子に寝転ぶさまを夢想する。



 溜め息を吐きながら、眠たそうな疲れた目で、エリーゼは彼をチラリと見る。


 ヒーロー気質なジャンは、またもや生存者を救うべく、無茶をしたいと言いだす。

 


「落ち着くんだ、モーターボートの件だが? 二隻だけ残っているんだっ! しかし、どちらもエンジンが故障しているんでな」


 甘は、無念そうに、一瞬表情を曇らせるも力強く希望の灯は残っていると語った。



「そこで、君たちには、エンジニアを連れてきて貰いたい? 第二チームには、代わりのエンジンを探しに行ってもらう」


「第二チーム? 誰だ?」


 甘に対して、賢一は他の人間たちが気になり、それが誰かと聞いた。



「下に行けば分かるっ! それよりも、食事と風呂は、まだだろう? ここのシャワールームを使ってくれ? 食事は何か軽食を運んできて貰おう」


 長々とした説明を聞いて、甘は皆が疲れているだろうと思い、ミーティングを中断した。


 時刻も昼に近く、賢一たちの雰囲気を見て、休憩を挟もうとしたワケだ。



「軽食とドリンクを運んで来てくれ?」


『了解しました』


 甘は、後ろに振りむくと、近くにある円形のガラステーブルに近づいていく。


 そして、レトロな外観の固定電話を取ると、ホテルマンを呼び出した。



「さて、軽食が運ばれてくるまで時間はある…………先に風呂を浴びてくるんだな? シャワールームは奥にある」


「甘、助かった? あと、他の連中にも風呂や飯を食わせてやりたいんだが?」


「ここに来るまで、彼らが助けてくれたのよ」


 そう言うと、甘は入口の左側にあるドアを指差して、マッサージチェアに座った。


 賢一とモイラ達は、ヴィラス達と出会い、窮地を救って貰ったため、彼らに恩を返そうと考えた。



「ヴィラスって言う司祭たちなんだが」


「分かった、後でホテルマンに伝えておこう」


 こうして、賢一と甘たちは、昼休憩のために体を休めることとした。

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