高級観光リゾート地はパラダイスか?
遠目に見える風景は、とても戦場とは思えないほど、美しく楽園のようである。
幾つもの巨大ホテルが建ち並び、沿岸部には様々なリゾート施設が並ぶ。
「今から、あそこに行くのか? 自衛隊なんて、引退したら、ここに住もうかな…………」
「コラコラ、今のアンタは現役の兵隊なんだし、ここが戦場だって、忘れてないかい?」
建物の向こう側には、白い砂浜や水上コテージ、豪邸などが見える。
緩やかな坂道を下りながら進む、ピックアップの上で、賢一とモイラ達は呟く。
「そうだったな? うっかり八兵衛している暇はなかったな? ご隠居っ! いや? お銀か?」
「…………お銀? は?」
賢一が出した水戸黄門ネタに、モイラは頭に?マークを浮かべるしかなかった。
「何でもない、リゾート施設に行ったら休もう」
「そうね? 今朝、甘も向こうに着いたらしいし? ふぁぁ~~」
賢一の言葉を不思議がりながらも、モイラは生暖かい潮風を顔に浴びて、アクビをした。
そうこう話しているうちに、幾つもの商業ビルを越えて、車両部隊は目的地である沿岸部に着いた。
『止まれっ! 話しは聞いているが、中身は確認
させて貰うっ!』
白いビルに囲まれた交差点にまで来ると、いきなり拡声器から声が聞こえた。
そして、四方からはM4カービンを構えた兵士と警察官たちが現れる。
「俺たちが、抗体持ちだ? 甘に連絡を取らせてくれよ」
「アイツは、先に来ているんだろう? 私たちを通してくれ?」
「そこで、待っていろっ! 妙な動きを見せたら撃つっ! CP、目標を捉えた」
『どんな連中だ? 服装や装備は合致するのか?』
四方のビルには、窓や玄関から、こちらに銃を向ける完全武装した兵士と警察官たちが見える。
両手を上げながら、賢一とモイラ達は、彼らに敵意がないことを伝える。
一人の白人兵士が、コルト45を構えながら歩いてくると、防弾ベストから無線機を取り出す。
彼は、こちらに銃口と鋭い眼光を向けたまま、司令部と話し始めた。
「もちろんです? しかし、本人確認のために、学者の?」
『今、その学者に変わる…………彼らと話をさせろ』
白人兵士が、司令部と話していると、無線の相手が変わったようだ。
『学者の甘だ? 彼らと話がしたい? 本人かは私が話をすれば分かる』
「分かりました、ではっ! 受けとれ」
「よっと」
無線の相手が、甘に変わると、白人兵士は無線機を賢一に投げ渡した。
「甘、そっちは大丈夫だったか? こっちは、検問にあってな? ライフルを向けられた状態なんだが?」
「私からも頼むわっ! 連中の銃を下げさせて、ちょうだい」
『賢一、モイラ、君たちの声が聞こえて嬉しいよ? どうやら、尋問に引っかかっているらしいな…………分かった? 兵士に無線機を返してくれ? 積もる話しは、ホテルに来てからにしよう』
周囲を見渡せば、ビルの窓には人影があり、柱からもM16A2が見える。
そんな中、賢一とモイラ達は、無線機を通じて、甘に助けを求めた。
「ほらよ、確認してくれ?」
「うお? もしもし…………」
『彼らを通してくれ、私が呼んだ人物たちだと確認できた』
賢一が無線機を投げると、白人兵士は左手で、キャッチしながら、甘と話しだした。
「よし、行っていいっ! ここから先に進むと、森林が見えてくるっ! その先にある豪華ホテルに進めっ!」
「分かったよ? おい? みんな、聞いたな? 行くぞ」
「ふぅ? これで、ようやく休めそうだわ…………」
「やっと、シャワーを浴びられますね…………」
白人兵士は、テクニカルの先を指差して、海岸に向かう道を示した。
そちらを見て、賢一が仲間たちに声をかけると、エリーゼは溜め息を吐き、メイスーは肩を下げる。
「分かったわ、出すわよっ! 続いてきて」
そう言うと、テクニカルの運転席から、デイネが声を出すとともに、車を発進させた。
こうして、ホテルを目指して、椰子の木が両側にうえられた道路を、車列は走っていく。
やがて、車両部隊は、白いビルや豪邸のようなホテルなどが、見事に建ち並ぶ場所にまで来た。
ここには、広いゴルフ場や森林公園などが整備されており、さらにキラキラと光る海が見える。
「凄いな? マリンブルーの海と白いビルだけなく、プール? いや、湖まである」
「どうやら? 木々に囲まれているし、田舎のキャンプ場みたいな雰囲気だわ…………」
草原に挟まれた道路を走る車両の上で、賢一とモイラ達は、景色に見惚れてしまう。
「おい? また、検問所だぜ? 見張りが厳しいらしいな?」
「また、武器を取り上げられるのかしら? 面倒だわ…………」
「ひぇぇ? 疲れますね」
「前の連中が、グダグダと何か言っているな?」
「はあ? またか」
「仕方ないわね」
十字路に来ると、ここでも警備員たちによる検問所が設置されていた。
左側の草原には、小屋が建てられたおり、右側にはロールバーの機械があった。
ダニエルが愚痴ると、エリーゼも両肘を、ピックアップの屋根に乗せながら、不機嫌な顔になる。
二人の様子を見て、メイスーもグッタリとした表情になり、後部鉄板に背中を預けながら座った。
ジャンは彼らを見ながら、眼を細めて、何をしているんだと思う。
賢一も、検問所で再び足留めを喰らったため、イラつきだし、モイラも溜め息を吐いてしまう。
「車両部隊の皆さんですね? 話しは聞いてます、あちらのホテルに向かってください…………開門しろっ!」
機械側に立っている、アジア人警備員が、デイネたちに白いホテルを指差す。
すると、小屋の中で座っている黒人警備員が、装置を操作して、ロールバーを上げた。
それから、車両部隊は左にカーブしている道路を進んでいき、目的地にたどり着いた。
駐車場に入った彼らは、空いている場所に車を止めると、すばやく降り始めた。
ここには、白い横長巨大ビルが堂々と立っており、宮殿のように豪華な装飾が施されていた。
「どうする? 目的地に着いたけど、ここからはガイドできないわよ? 科学者が、どこに居るのか分からないし?」
「はぁ? まあ、私は車の整備をしておくから、後は任せるわ」
デイネは、両手と金髪の髪を振って、どうしようかと悩み、アイリスは工具箱を取り出し始めた。
「貴方たちが、VIPですな? こちらへ来て下さい」
「アンタは? 誰なんだ…………」
黒スーツの壮年白人男性が現れて、静かに話すと、そっと胸に右手を添えながら、お辞儀する。
賢一は、暑さで顔から汗を垂らした顔を、彼に向けながら、ピックアップから降りた。
「甘さまの使いです…………当ホテルは、ハイテックス公司からも出資を受けておりますので」
「分かったわっ! 私たちは着いていくけど、他の皆は?」
白人男性が、落ち着いた口調で話すと、モイラは他の仲間たちに問いかける。
「私たちは、中で休ませて貰えれば、それで良い? 涼しい場所に行きたいだけだ」
「そうだな、こっちも疲れているんだ…………漁に出た時よりも、体のアチコチが凝っちまったし」
「こっちは、安全な場所で、ジュースが飲みたい」
「同感だ、俺は冷え冷えのビールが飲みたいよ」
ヴィラスとマエワ達は、二人とも疲れきった表情で、テクニカルに背を預けながら話す。
ファハダとペトロー達も、生暖かい潮風を浴びて、喉が乾いているため、飲み物を求めた。
「では、皆様をご案内しましょう」
取り敢えず、全員が白人男性に着いていき、ホテルの正面玄関を目指していく。
そこには、立派な屋根を支える二本の石柱があり、奥には自動ドアがあった。




