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保菌者と生存者たち


 体当たりを喰らわせて、ゾンビは押し飛ばされたが、すぐに立ち直り、賢一に飛びかかってきた。



「ぐあっ! いたたたっ!?」

 

「ガアアッ!!」


 賢一の手首に噛みつき、ゾンビは凄まじい力で、絶対に離そうとはしない。


 どれだけ、彼が殴ろうとも、口だけではなく、両手で体を掴んだままだ。



「グヒッ? グィィ?」


「た、助かった…………」


「はああ、大丈夫ですか? 賢一さん」


 後頭部を、ヌンチャクで叩かれた事で、ゾンビは頭蓋骨が陥没してしまったようだ。


 奴が倒れるのを余所に、経たりこむ賢一へと、メイスーは近づいていく。



「いや、まだ終わってない…………武器を捨てるんだっ! 」


「そうよ、今噛まれたでしょ? 私の鉄パイプが、止めを刺すから頭を出して」


「ちょっ! ちょっ! 止めなよっ!」


「お前ら、落ちつけっ! まだ、完全に噛まれたと決まったワケじゃっ!」


 ヴィラスは、険しい顔をしながら、ミニM14の銃口を賢一に向けた。


 同じく、アイリスも鉄パイプを両手で強く握り、ジリジリと近づいてくる。



 慌てて、デイネは二人の前に立ち、仲間に対する攻撃を阻止しようとした。


 マエワも、戦いが終わっても、興奮状態が続く、彼ら説得しようと試みた。



「待ちな? 噛まれたのは事実だけど、賢一を含め、私たちは抗体持ちなんだよっ!」


「そうだっ! だから軍の部隊から特別な配慮が出されていたんだ」


 迷彩服の袖を捲り、モイラが心配ないと弁明して、武器を下ろさせようとした。


 冷や汗を、顔中から滴しながら、ジャンも何とか、二人を止めようとする。



「その言葉、信用できないが?」


「証拠は、あるの? とても具合が良いとは思えないけど…………」


「あるさ、噛み跡を見てくれ…………それと、戦いで疲れているだけだ」


「私も、こんなに有りますよ」


 ミニM14を構えながら、ヴィラスは鋭い目付きで、今度はモイラに銃口を向ける。


 鉄パイプを、何時でも振り回せるように、アイリスは険しい顔のまま呟く。



 賢一は、手首や腹を見せて、噛み跡や切り傷などを、二人に確認させる。


 困惑した表情で、メイスーも両手を前に出して、治っている怪我の跡を強調する。



「おい? 神父さんよ、俺の仲間に手を出したら、分かってるよな?」


「そんなに証拠はって言うなら、これを…………連絡済みだから」


 トンプソンを腰だめで構え、ダニエルは仲間を助けるべく、二人を狙う。


 一方、エリーゼは冷静さを保ち、ヴィラスに向かって、懐から取り出した無線機を投げた。



「おっとと、なんだ?」


『話しは聞いたぞっ! 私はハイテックス公司コンスーの研究者の甘だっ! 彼らは感染者ではなく、保菌者だ』


 投げられた無線機を、左手で受け取ってから、ヴィラスは耳に近づける。


 その相手は、もちろん甘であり、彼は殺害を止めようと話し始めた。



『彼らの血液から、ワクチンが作られるかも知れないっ! だから、殺害するのは止めてくれっ! 貴重なサンプルなんだ』


 何とかして、甘はヴィラスを説得するべく、必死で無線機の向こう側から話す。



「噛まれた事で、ゾンビ化する可能性は?」


『ないっ! 彼らは大量のゾンビに噛まれたのに、転化しなかった』


 未だ、ミニM14から手を離さないヴィラスの質問に対して、甘は即答する。



「分かった、切るぞ」


『ああ、殺さないでくれよ』


 それだけ言うと、ヴィラスは銃を下ろして、無線を切り、甘との会話を終えた。



「無線機を返すぞ? それ」


「よっ! これで、分かったでしょ」


「ヴィラス、何て言ってたの…………」


「お、おい? いったい、何の話をしたんだ?」


 ヴィラスが投げた無線機を、エリーゼは受け取ると、それを懐に仕舞いながら真顔で呟いた。


 アイリスとマエワ達は、会話の内容が気になっており、不安そうな表情で質問してきた。



「彼らは、本当に抗体があるらしい? だから、ゾンビ化はしないそうだ…………」


「そうなの? でも、信じられないわ」


「だからと言って、信用して良いのか?」


 ヴィラスの言葉を聞いても、アイリスとマエワ達は、信じがたいと呟くだけだ。



「グアア~~~~」


「ゲロロ」


「ちょっ! 外では、まだ敵が私たちを探しているのよ」


「そうさっ! 外の見張りをしないとね」


「まだまだ、朝まで大変そうだな? ボロナイフが手放せないぜ」


「夜が開けるまでは、見張りを立てて置かないとな」


 入口に停めてある中型バスの向こう側から、ゾンビとスピットゲロー達が、彷徨く声が聞こえる。


 デイネとモイラ達の発言を皮切りに、再び全員が、外側から敵がくるかも知れぬと思った。



 ダニエルは、入口の左側に立って、敵が来ないかと見張る事にした。


 ジャンも、正面から少し離れた場所に立ち、クロスボウに矢を装填する。



「ふぅ? 済まない、気を取り出してしまったようだ…………神よ、愚かな私たちを赦したまえ」


「いや、先に伝えてなかったからな? 知らなくて、当然だ」


 自身の暴走を悔いるヴィラスに対して、賢一は怒ることなく、ただ溜め息を吐くだけだった



「それより、明日はどうする? さっきの研究者が、マリンブルー・パラダイス・ホテルで待っているから? そこに向かうんだが」


「そこに行くしかないか? 大勢の人間たちが生き残っていると良いが…………」


「ヴィラス、そこなら私が案内できるわ? 観光ガイドなんだし」


「私も、親戚と一緒にバイトの手伝いで、向かった事があります? 中華料理人の数が足りないとかで?」


 賢一は、これから行くべき場所を、ヴィラスに伝えると、彼は十字を切りながら呟いた。


 どうやら行き先を、地元民であるデイネとメイスー達は、知っているらしい。



「じゃあ、明日の案内を頼んだぞ」


「もちろんっ! 観光ガイドの私に、任せなさいっ!」


「ええ、あちらには何度も行ってますし」


 案内役が決まると、賢一は中型トラックの方を睨み、警戒心を高めた。


 デイネが胸を張って答えると、メイスーも珍しく自信満々に語った。



「っで? アンタ達の名前は? 私は海兵隊のモイラだよ? てか、漁協事務所でも一緒に戦ってたね」


「ファハダ・アル・ファラジュ、元サッカー選手だ? 現在は、コーチも引退しているバックパッカーだ」


「私は、ペトロー・コロリョフ、珍しい動植物を求めて、この島に来た探検家だ?」


 モイラの問いかけに、ファハダとペトロー達は疲れきった顔で、名前を答えた。



「まあ、朝まで寝て起きな? 今の話の通り、私たちは抗体持ちだから、戦闘は任せな」


「分かった、あの小さなトラックで休む」


「私も、そうさせて貰おう」


 モイラが休憩を促してくれたため、ファハダとペトロー達は、軽トラに向かっていく。



「さて、朝まで敵が来ないことを祈ろうか」


「ギャアアァァ」


「ギッ! キキィィ~~~~!」


 賢一は、一人で呟きながら、未だ騒がしい外から聞こえる寄声に耳を傾けた。


 そうして、数時間が過ぎると、中型トラックの丈夫から、白い光が差しこんだ。



「ん? 朝か?」


「賢一、起きたのね? 行くわよ?」


「これから、ピックアップに乗るんだ」


 昨日よりかは、地下駐車場の中が明るくなっていることに、賢一は気がついた。


 とは言え、ここは朝でも薄暗く、静かで不気味な雰囲気の場所である。



 そこで、彼は背中を、コンクリート柱に預けていまが、勢いよく立ち上がった。

 

 すると、エリーゼとジャン達が現れて、二人はピックアップに向かっていく。



「朝か? 外はゾンビが減っていると良いんだが? まあ、何体かは残っているだろうな? だとしても、行くしかないか」


 賢一も、ピックアップに向かっていき、後部の板を掴んで、サッと荷台に飛び乗った。

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