突破されたぞっ!?
ゾンビの大群が、駐車場を埋めつくし、我先に人肉へ食らいつかんと、ただただ走ってくる。
差し迫った驚異を前にして、賢一は膝をガクガク震わせながら、歯の根も合わせなくなった。
「なんなんだよ、この数はっ!」
「賢一さん…………下がりましょう」
それでも、眼前に迫る腐敗臭を嗅ぎながら、彼はAR15を背中に回し、十四年式拳銃を手にとる。
メイスーは、シリンダーから空薬莢を落とし、次の弾を込めながら、不安気な表情で後ずさりした。
「そうだな? と言うか? 昼間のトラックとかは何処に消えたんだっ!?」
「ギョエッ!」
「ウガアァァ」
呻き声や奇声などを発する、ゾンビ達を前にして、賢一は怒鳴りながら拳銃弾を撃ちまくる。
パンパンと鳴る音とともに、顔面や胸を撃たれた弱いゾンビ達&フレッシャー達が倒れてゆく。
「賢一、もうヘスコ防壁まで逃げるよっ! 下がるにしても、あそこまで行かないとねっ!」
モイラは、ゾンビ軍団の奥を睨み、もう自分たちの持ち場が、あまり持たないだろうと判断した。
中央のビルに挟まれた、広い道路からは続々と、ゾンビ達が走ってくるからだ。
左右を囲む建物からも、屋内駐車場や路地などから後続が、途切れることなく現れる。
対する人間側は、ヘスコ防壁に近い場所まで後退させられている。
「私とジャン達が援護するわっ! ダニエルとエリーゼ達は先に行って、ヘスコ防壁の上に登るのよっ!」
「そうだ、こっちはショットガンで、足留めしといてやるっ!」
「ギャッ!?」
「グワッ!」
「ギ…………」
「分かったわ、悪いけど先に行くわ」
「後ろから、連射してやるからなっ! 少しの間だけ、我慢してくれっ!」
ヘンリー小銃を乱射しながら、モイラは近寄るフレッシャーやゾンビ達を、撃ち抜いていく。
ジャンは、彼女が弾丸を込め始めると、モスバーグ500の銃口を走り抜けてくる敵に向ける。
エリーゼは踵を返すと、ヘスコ防壁に向かって駆け出していき、金網を掴んで、よじ登りはじめた。
同じく、ダニエルも壁に大きく開いた穴に向かっていき、そこから援護しようと後ろに振り向いた。
「モイラ? 分かった…………」
賢一は、ゾンビ達の立てる足音に、身を震わせながらも、何とか平静さを保とうとする。
「メイスー、あの大穴まで逃げるぞっ!」
「は…………はいっ! 行きましょうっ!?」
賢一とメイスー達は、必死で逃げ出していき、ダニエルが逃げた場所を目指す。
「後退しろっ! 穴は、装甲車で塞ぐそうだっ!」
「防衛ラインは、ヘスコ防壁まで下げるっ! この場は放棄しろっ!」
「ギャアアアア」
「もう、撤退するのか? 今来たばかりなのに?」
「うわああーーーー! 壁の上まで、来やがったぞっ!」
「ギィィ~~!!」
ラテン系の兵士が走ってくると、M16A2を、三発ずつ乱射させる。
暴徒鎮圧装備に身を包む警察官は、ライオットシールドと三段警棒で、ゾンビ達に立ち向かう。
ヘスコ防壁の上からは、ヘンリー小銃を乱射しまくり、白人生存者が群れを押し留めようとする。
黒人生存者は、日本刀を振り回し、ジャンピンガー達が、壁面を登ってくると連中を切り捨てる。
援軍に現れた生存者たちは、兵士や警察官などを含めて、二十人以上を越えている。
それでも、押し寄せるゾンビ軍団を前にして、彼らは終わりなき波に、ただ苦戦する他なかった。
「うぎゃっ! がっ! ああっ!?」
「ギィィーーーー!!」
「うわあっ!?」
「グルルッ! ガウ、ガウッ!」
白人兵士は、ビルの窓からM14で、射撃していたが、内部に侵入してきた敵に襲われる。
ジャンピンガーが、彼をぶん殴り、窓から突き落としてしまったのだ。
右側の建物でも、黒人兵士が、M60で機銃掃射していたが、いきなり背後から奇襲を受けた。
黒蟻のように、フレッシャー達が壁面をよじ登り、室内に入り込んでいたからだ。
「く…………これじゃあなっ! 防衛ラインまで急げっ! モイラ、ジャンッ! ジャンピンガーが来ているっ? 奥からは、マッスラーも来ているっ! メイスーは下がっていろっ!」
「は、はいっ! …………でも、後ろから皆を助けますっ!」
「グオオオオ」
「ガオーーーー!!」
「ゲロロ」
「ゲロロロロ」
ヘスコ防壁に開いた大穴の側で、ゾンビ軍団を睨み、賢一は大柄なゾンビ達を警戒する。
それと同時に、連中が近づかぬうちに、集団を抜ける雑魚ゾンビ達とともに、最優先で射撃する。
拳銃弾を、敵に浴びせながら、彼はヘスコ防壁の爆発で崩れた部分から、上に登っていく。
そして、群れの最奥から、スピットゲロー達が現れて、ゲロを吐き飛ばしてくる姿も見えた。
彼の側で、崩れた部分に下半身を隠しながら、メイスーは、26年式拳銃を撃っている。
それから、弾切れになると、彼女は壁裏に身を隠しして、シリンダーをずらす。
「不味いっ! ゲロ野郎まで来たっ! モイラ、ジャンッ! 早く逃げるんだっ!」
「ギャ…………」
「グワワッ! ガ、ギ?」
「分かってるさっ! さあ、援護するから下がるんだよっ! ジャン」
「了解だっ! ぐっ! この…………」
「ギアアーー!! ギャアアアアアアーーーー!!」
賢一は、武器をAR15に持ち変えて、スピットゲロー達を、狙い撃ちながら叫ぶ。
しかし、単発連射は、通常のゾンビ達に当たるだけで、ライフル弾は標的まで届かない。
その援護を受けながら、モイラは彼と合流するべく、ヘンリー小銃を抱えながら走り出した。
ゾンビが襲いかかってきたので、ジャンは重たい蹴りを突っ込み、追撃で顔面を掴んで投げ飛ばす。
二人は、敵を銃撃や格闘術などで退けながら、仲間たちが待つ、防壁が崩れた場所を目指す。
「ゲロロッ! ゲロロロローーーー!」
「ぐああっ! あ、熱いっ! 溶けるっ!」
「ギュアアアア~~~~!?」
「ああああっ!」
「ぐわっ! 痛い、痛い、助けてくれーーーー!!」
「グルアアアアアア」
「もっと、機銃掃射をしろっ!」
「これ以上は、銃身過熱してしまうっ!」
ヘスコ防壁の上では、後退してきた生存者たちと、増援に来てくれた人間たちが防衛線を張る。
しかし、スピットゲローが吐いた強酸を左肩に受けて、白人兵士が悶えながら転がる。
アジア系の警察官は、右側にある壁穴付近で、フレッシャーに殴られまくる。
太平洋系の生存者も、そこでゾンビに押し倒されて、何度も肉を噛み千切られてしまう。
漁協事務所では、白人兵士や黒人兵士たちが、M60機関銃やミニミ分隊支援火器などを連射する。
交差するように放たれる機銃掃射も、ゾンビ達の数を減らすだけで、突撃は止められない。
「はあ? ハンヴィーは? もう、乗り捨てたのか? は…………」
左右に、あったはずのハンヴィー&M35中型トラックを見て、賢一は呟く。
「急げ、穴を塞ぐんだっ! トラックを寄せろ」
「足りない分は、ワゴンを寄せてっ!」
M35トラックが、左側の穴を塞ぎ、赤いワゴンが中央にある大穴を塞ぐ。
太平洋系の警察官は、壁上でMP5を連射しつつ叫び、白人女性警察官は、ポリスモデルを撃つ。
「モイラ、ジャン、急げっ!」
「ギャギャッ!」
「グワアッ!!」
「大丈夫だよ、賢一っ! いざとなれば、金網を掴むからっ!」
「このくらい、パルクール選手じゃなくても、消防士なら登れるっ!」
逃げ送れた仲間たちを心配しながら、賢一はAR15を撃ちまくり、フレッシャー達を倒していく。
二人に、背後から近寄る連中の走る速度は素早く、銃撃を加えてなければ追い付かれただろう。
しかし、彼が援護してくれたため、モイラはヘスコ防壁を登ることができた。
もちろん、ジャンも壁上に飛び上がり、無事に退避しながら逃げ延びた。




