仕事を終えたら
賢一とダニエル達は、収納ボックスを、武器商人の場所まで、持っていく。
廊下の左側へ行くと、広い会議室みたいな部屋で、黒人男性が、赤い風呂敷を広げていた。
そこには、さまざまな拳銃や自動小銃、それに刀剣類や打撃武器などが、ズラリと並べられている。
もちろん、弾薬箱や弾倉なども綺麗に整列されており、品揃えは豊富だ。
「いらっしゃい? アンタらが軍隊を助けている連中だな? 話は聞いているよ、欲しい弾を言ってくれ」
「欲しいのは? スカンジウムの38口径弾、AR用のライフル弾、レバーアクションライフル用の弾、26年式拳銃弾、一番形拳銃の44弾…………だな」
「コルト45の予備マガジンも頼むわっ! 弾はあるけど、装填するためのマガジンが足りないからねっ!」
黒人店主は、愛想よく笑顔を向けながら話しかけてくると、賢一は武器を眺めながら弾を要求する。
並べられている武器弾薬を眺めつつ、モイラは自分が欲しい物を指差した。
「分かったぞ、好きなだけ持っていってくれ? 金は軍が払ってくれるからな…………他に欲しい物は?」
「あとは、弾以外に使わない武器を、現金と交換してくれ」
黒人店主から必要な分だけ、弾倉と弾薬を購入したので、賢一は次に武器を売却しようとした。
「スーパーポーズド、CF98、トカレフ、トンプソン、M1917リボルバー、十四年式拳銃、ミニM14…………全部売却したい」
「トカレフ、トンプソンはギャング達の弾が余っているからな? 武器だけは売っちまおう」
「スーパーポーズド…………この上下二連散弾銃も、散弾だけは残して売るか? メイスー、使わないよな?」
「はいっ! パイプガンの方が小さいし、軽いので」
必要のない武器を、賢一は収納ボックスから取り出して、黒人店主に次々と手渡す。
ダニエルも同じく、風呂敷の上に滷獲した物品を置いたあと、代わりに購入した品物を入れていく。
スーパーポーズドを眺めたあと、ジャンは使うかどうか、メイスーの方を振り向いて、たずねた。
すると、彼女はパイプガンを腰から取り出し、両手で握って見せた。
「おお? よく見かける武器ばかりだな? 特に安いから、CF98はギャングから一般人まで使っている」
色々な武器を見せられた黒人店主は、CF98を見ながら語りだす。
「これは、ドイツ製ピストルH&K、USPに似ているが? まあ、この地域ではアメリカ向けのNP42型も普及しているからな…………」
そう言うのが、CF98を眺める黒人店主は、ゆっくりと弾倉を取りだす。
「そうか…………じゃあ、売らないで持っておくか? それから、十四年式拳銃などは贋作だろう? アメリカ製の銃器は払い下げで、民間に売り出されたりしているが、日本軍の銃器は珍しいはずだ」
「おっしゃる通り、コレクターを騙す密売人や武器職人が存在しましてねぇ? ただ、本物より性能は高いから、みんな満足しているらしいのですが」
なぜ、こうも簡単に十四年式拳銃や26年式拳銃が入手できるのだろうか。
賢一は、疑問を解決するべく、この地域の銃器に詳しいであろう黒人店主に質問してみた。
「やっぱりな?」
「それから、お客さん? あのスカンジウムは、38口径弾だけでなく、強力な357マグナム弾も使えますよ? 弾薬の長さが違うだけですから? 買っていきますか」
「…………じゃあ、それも追加購入ね」
短く答えた賢一に、黒人店主が武器に関する説明を行いマグナム弾を見せる。
すると、エリーゼは必要だと感じたのか、相変わらず表情を変えずに即決した。
「エリーゼ? 分かった…………これで、取引は終わりだ…………また来るかも知れないから、その時は宜しくな」
「それじゃ、さようなら」
そう言って、賢一は黒人店主に別れを告げると、CF92をポケットに仕舞った。
「ダニエル? 誰に、この箱は渡せばいいんだ?」
「知るかよ? 取り敢えず、買った弾薬箱をピックアップに持っていこう」
収納ボックスを持ち上げて、賢一はダニエルとともに、会議室のような部屋から出ていく。
「だな? おっ! アンタら、それを貸してくれないか」
「なんだ…………」
「誰だ、君たちは?」
重たい収納ボックスを持ち上げるのが、嫌になった賢一は、都合よく使える物を見つけた。
それは、白人警察官と黒人警察官たちが、動している作業用カートだった。
「済まないが、それを貸してくれないか? それから、収納ボックスも後で返さないと成らないが、何処に返せば良いんだ?」
「必要なら貸してやる」
「ここから反対にある廊下の奥に行け、そこが物質集積所だから、カートとともに返しといてくれ」
賢一の頼みを聞いて、白人警察官と黒人警察官たちは、すぐに快諾してくれた。
「済まないっ! ダニエル、置くぞ」
「へいへい」
こうして、二人から作業カートを借りて、賢一とダニエル達は、ピックアップまで戻ろうとする。
その後、彼らは武器を運び終えて、皆で話し合いをする事となった。
「よし~~! 元の収納ボックスに入れ換え終わった」
「これから、どうしましょう?」
武器を仕舞ったあと、賢一は荷台の上で、天を仰ぎながら背筋を伸ばした。
そんな彼に対して、メイスーは困惑した表情をしながら、質問してきた。
「ふむ…………ここは安全区域らしいな? 俺はカートを戻してくるけど、皆は待っているか?」
「どうかしら? 私は、ご飯が食べたいから、レストランか? 配給所に行きたいけど?」
「ふああーー! と言うか、どっかに晩飯が食える場所は無いのかよ?」
「腹が減っては、何もできない」
「皆が、そう言うなら、私は晩飯に賛成するわよ」
「私も…………です?」
作業用カートを押しながら、賢一は仲間たちに、次の行動は何をするかと聞いてみた。
表情を変えないエリーゼは、両手で腹を擦り、ダニエルは一仕事を終えたと思って、欠伸をする。
両腕を組ながら、モイラは、ピックアップの鉄板に背中を預ける。
首を左右に振って、仲間たちの顔色を伺いながら、メイスーも同意した。
「はあ~~分かった? これが終わったら、レストランを探そ…………」
と、賢一が言った時、漁協の中から段ボール箱を抱える二人組が現れた。
「何で、俺たちまで仕事をしなければ成らないんだ? これなら外で略奪してた方が」
「アホかっ! 外は、ゾンビが蟻のように出歩いているっ! それに、俺たちと同じようなチンピラだらけなんだぞ」
白人生存者は、文句を言いながらも、箱を両手で保持しながら、歩いている。
その後ろを、アラブ系と思われる頭に、赤いシュマグを被る男性が続く。
「なあ? これを貸そうか? その代わり、終わったら、漁協事務所内の左側にある物資集積所に、カートと収納ボックスを戻してくれ」
「んあ? それは有り難いが」
「だったら、早く寄越してくれ」
面倒な仕事を頼むとともに、重たい荷物を運ぶ彼らを助けようとして、賢一は一石二鳥だと思う。
その話を聞いて、白人生存者とアラブ系の生存者たちは、作業用カートに段ボール箱を載せていく。
「それから、飯を喰いたいんだが?」
「漁協から左側のビルを超えると、コンビニや飯屋がある」
「それ以外にも、まだ色々あるぞっ! 取り敢えず、行ってみるといい」
今度は、賢一が飲食店の場所を聞いて見ると、二人は指差しながら目的地を教えてくれた。
「ああ、行ってみるよ、じゃあなっ!!」
元気よく返事すると、賢一たちは、二人が教えてくれた方向に歩いていった。
こうして、彼らは商店街が連なる道路へと向かって、進むことと成った。




