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大群


 白人男性は、消防車から飛び降りると、ゾンビ達をどつき倒しながら、消化斧を取りに行く。


 車両に搭載してあった、それを握り閉めようとしたが、ゾンビに行く手を阻まれた。



「いったい、何なんだ? 暴徒化した群衆が、民間人を襲っているのか?」


「グギャッ!?」


「そこのアンタ、消防士か? とにかく、こっちに来てくれないか?」


「今、ここを突破されたら、私たちは終わりなのよっ!」


 消防士の白人男性は、訳も分からず、拳を振るい、ゾンビを薙ぎ倒す。


 賢一とモイラ達は、彼を自分たちの場所まで来るように呼びながら、後ろに後ずさる。



「グルアアーーーーーー!!」


「ガアアッ!」


 素早く走るゾンビ達が、消防車の上に飛び乗って、凄まじい咆哮を上げた。


 消防車の両脇からは、ノロノロと歩くゾンビ達が、こちらを獲物と捉えて歩いてくる。



「このやろうっ! と言うか、民間人は避難しているかっ!」


「ええ、もうだいぶ、遠くまで逃げていってるわっ! っと…………」


「これは、スクープだわっ! でも、写真を撮る暇は無さそうね?」


「スクープとか、どうでもいいぜっ! 今は、これが夢である事を祈るばかりだ」


「ああ、神様、仏様? どうか、悪夢なら夢から目覚めさせて下さい」


「悪夢だろうが、現実だろうがっ! 民間人の救出が最優先の課題だっ!」


 賢一は、ゾンビの頭を掴んで、特殊警棒で叩きながら、消防車まで蹴り飛ばす。


 モイラの方は、最初から回し蹴りを走るゾンビに食らわせて、自らに寄せ付けまいとする。



 険しい顔つきで、北欧系女性は、向かってきた女性ゾンビの顔を、サップで何度も殴打する。


 黒人男性は、髑髏指輪を填めた拳を振りまくり、ゾンビ達を纏めて、殴り倒していく。



 ぶつぶつと呟く、アジア系女性は、どんどん顔を蒼白くさせながら、中華包丁を振るっている。


 白人男性は、工具である、タガネを拾い上げ、かなり腐っている作業員ゾンビの額に叩きつけた。



「アンタらっ! 下がりな、もう持たないよっ!」


「俺たちも後退するっ!」


「ここは、放棄しましょうっ! ホテルまで下がるのよっ!」


「軍隊や警察は、まだ来ないのか? 仕方ない、逃げるしかないっ!」


 黒人女性や白人男性たちが、ゾンビと必死に戦っていたが、押され気味になったのを悟る。


 アラブ人女性やアジア系男性たちも、棍棒やナイフを振るっていたが、一人ずつ逃げだし始めた。



「俺たちも、引き下がろうっ! ぐあっ! 噛まれた」


「不味いわ、ぎゃっ!?」


「離しなさいっ! うっ! きゃああっ!」


「おいおい、マジかよっ! こんな数を相手に出きるかってのっ! うわあっ!」


「はあはあ、もう…………ダメ?」


「みんな、確りしろっ! おら、うらっ! うああああっ! うら…………」


 突然、津波のように押し寄せた、ゾンビ達に、賢一は左腕を噛まれてしまった。


 モイラは、彼を助けようと多用途銃剣を振るったが、その間に彼女も別なゾンビに襲われる。



 北欧系女性は、二人に纏まりつくゾンビ達を後ろから必死に叩いていたが、自身も群れに囲まれる。


 下がり出した黒人男性は、ゾンビの大集団を前に応戦していたが、数と勢いに負けて押し倒された。



 アジア系女性は、中華包丁を落としてしまい、また自身も崩れ落ちるように倒れた。


 最後まで戦っていた、白人男性も遂には、群れの中へと消えてしまった。



 そこに、いきなり何処からか、銃撃音が鳴り響き、動く死者たちを次々とほふっていく。



「さっさと、負傷者を収容するんだっ!」


「収容するだと? 危険じゃないのか?」


「それは、上が決める事だっ! 我々に決定権らない」


「止めだっ! うん、まだ息があるな?」


 ゾンビの群れは、デジタル森林迷彩服を着ている兵士たちに、あっという間に倒されてしまった。


 フリッツヘルメットの兵士は、死体を蹴り、野戦帽を被る兵士は、辺りを見渡す。



 そこに、上官らしき赤ベレーの兵士が後ろから現れて、二人に指示を下す。


 M4カービンを、まだ動いていたゾンビに撃った兵士は、何人か負傷した人間を見つけた。



「担架を持ってこいっ! 急げ、拘束するのも忘れるなっ!」


「直ぐに運べっ! 基地まで連れ帰るんだっ!」


「このゾンビ患者たちを調べるんだっ!」


「うぅ? い…………」


 兵士は、科学防護服を着ている衛生兵たちを呼び、二人は担架を持ってくる。


 そして、賢一は意識を失う前に、彼等にベルトで手足を縛られて、何処かへと運ばれるのを見た。



 こうして、ゾンビ災害の最中、軍事基地まで、装甲車に載せられた負傷者たちは連れて行かれた。



「起きろ? おい、起きるんだっ! ジャパニーズ? いや、チャイニーズかな?」


「ソイツは、ジャパニーズだよっ! JSDFの迷彩服を着ているでしょう?」


「JFDS? 確か、ジャパンの軍隊よね? なんで、彼はここに…………? ジャーナリストとして、イラクやジブチで良く見たけど? そう言えば、この迷彩はジャパンのだわ」


「日本語では、ジエータイよ…………彼は、日本人なのねっ!?」


「彼も、災害救援部隊として、派遣されてきたのか?」


 地下牢らしき場所で、ベッドで寝ている賢一を起こそうと、体を揺さぶる黒人男性は騒ぐ。


 モイラは、野戦帽を頭から取りながら、顔を振るい、背中を壁に預けつつ呟く。



 北欧系女性は、彼の事を調べようと、ゆっくりと近づきながら顔を見下ろす。

 

 それを聞いて、アジア系女性は、反対側のベッドから、急に起き上がってしまった。



 救援部隊ならば、心強いと白人男性は考えながら、しゃがんで、背中を鉄格子に預ける。



「いいえ? 私と同じく、近海で夜間上陸訓練中の事故で、島に流れ着いたのよ? それに、良く分からないけど、本人はチャイニーズでもあるとか?」


「チャイニーズ? ハーフのジャパニーズなのか~~?」


「えっ? それって、私と同じじゃないっ!?」


「まだ、動かない方がいい…………静養してなきゃダメだっ! ああ~~君の名前は?」


 モイラは、賢一の事を話して、自分も救援部隊ではないと、無念そうな表情で語る。


 黒人男性は、それを聞いて、良くある隣国同士に生まれる混血児の事かと思った。



 アジア系女性は、ベッドから起き上がると、元気そうな顔で、目をキラキラさせる。


 そんな彼女を、白人男性は制止して、名前を聞いてなかった事を思い出した。



「私は? メイスー・タナカサン、母はシンガポール人で、父は日系パラオ人なの」

 

「そうか、俺はジャン・ルイーズ・シュミットだっ! 祖父がドイツ系の海外県在住フランス人だっ! 今はプロケトの消防士だがな」


 メイスーとジャン達は、互いに名前を名乗りながら握手を交わした。



「うう? 何とか、起き上がれたか? 他のみんなは? と言うか、さっきから話を聞いていたが? 俺の祖父は中華民国の人間だった…………中華系と先住民の混血…………それから、さらに日本人の祖母との混血だな? 尾野賢一、賢一呼んでくれ」


「話しを聞いていたのか? てか、複雑な家庭事情だな? 俺は、ダニエル、ダニエル・オリーズだっ! 暗号通貨で、一山当てたのさっ! ま、今は、この様だけどな」


「エリーゼ・ニエミよ? フィンランド系スウェーデン人なの? 現在は、パパラッチ兼フリージャーナリストをしているわ」


「私は、海兵隊員のモイラ・ワワ…………これで、全員紹介が終わったわね?」


 賢一は、ベッドから起き上がると、周りの人間たちに名前を名乗る。


 黒人男性も、自分をダニエルと言いながら、握手して、すぐにゲンナリとした顔になる。



 エリーゼは、みんなの方に振り向いてから、すぐに鉄格子に向き直り、周囲を観察している。


 モイラは、相変わらず、壁に背を預けたまま、深い溜め息を吐いていた。



「彼等は、貴重な血液サンプルを保有しているっ! つまり、きちんとした場所に送れば、ワクチンの製造が出きるんだ」


「ご忠告、有り難う? ドクター…………しかし、そこは政府軍の管轄下にあるっ! それから、彼等の拘束を解いたのは不味いんじゃないのか? 再び、ゾンビ化したら、どうするんだ?」


 賢一たちが、聞こえてきた声に耳を傾けると、どうやら指揮官と科学者たちが話している声が響く。


 彼等は、こちらに向かって、足早に歩いて着ており、何やら口喧嘩しているようだった。

 ■ 武器説明。



 ⭕️ M4カービン。



 M16を短くした物で、米軍と同盟国の一般的な銃である。


 単発、連射、3連射の切り替えが可能なセレクターが付いている。

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