敵に挟まれた窮地を脱しろ
賢一たちは、バリケードの中に入って、一休みしようかと考えたが、そう上手くは行かなかった。
背後からは、ギャング達が奇襲を仕掛けてきて、正面からは、私兵部隊がテクニカルに乗ってきた。
「気をつけろっ! 私兵部隊の銃は、高性能だっ! 連中、訓練もされているっ!」
「しかも、機銃掃射がくるわっ!」
「もう、逃げるわよっ! あの路地から逃げるのよ」
「這っていくしかないぜ、こりゃあ」
「ひええっ! ドラム缶に穴が開きましたああ~~~~」
「うっ! 腕に当たったか、だが掠り傷だ…………」
賢一の叫ぶとおり、私兵たちは統制された動きをしており、物陰に隠れて狙いづらい。
モイラは、地面に伏せたまま、木箱をブチ破る弾丸に当たらないようにするしかない。
エリーゼは、路地に向かって匍匐前進していき、その後にダニエルが続いた。
赤や緑色などのドラム缶を、機銃掃射が貫き、凹ませるさまを見て、メイスーは顔を青ざめる。
九九式軽機関銃を背負い、右腕を押さえながら転がり、ジャンは一瞬だけ強く両目を瞑る。
「アイツら、火力が強いっ!」
「いいから押し返せっ! オラーー!!」
「喰らえっ! 燃え尽きろっ!」
「散弾に当たれっ!」
白人ギャングは、トンプソンを撃ちまくり、ラテン系のギャングは、AK47を乱射する。
アラブ系のギャングは、火炎瓶を投げてきて、黒人ギャングはモスバーグ500を撃つ。
「連射しまくれっ! 攻撃を緩めるなっ!」
「援軍が来るぞっ! それまで、敵を惹き付けろっ!」
「その援軍が来たぞっ!」
「援護する、前進しろ」
白人私兵は、M4カービンを撃ったあと、すばやく弾倉を交換すると、再び連射してくる。
黒人私兵も、M1919をテクニカルの上から連射して、制圧射撃を加えてきた。
アジア系の私兵は、MP5を連射しながら走り、路地の中に転がりこんだ。
AK74を単発連射しながら、太平洋系の私兵は、テクニカルの裏から攻撃してくる。
しかも、新たな車両が援軍として、連中の後ろから猛スピードで走ってきた。
「援軍に来てやったぞ」
「降車、散会する」
白人私兵は、M2ブローニングを撃ちまくり、ドドドドと大きな射撃音を響かせる。
M4カービンを構えながら、黒人私兵は、すぐさま地面に伏せた。
「テクニカルだっ! この弾は、50口径弾だっ! 対物ライフルにも使われている奴だっ!」
「当たったら、身体が粉々に吹き飛ぶわよっ! あと、私はコレを使うから先に行ってて…………」
「ひぇぇぇぇ」
「お前ら、はやくしろっ!」
「こっちに来るのよっ!」
火炎瓶が割れたため、木箱は燃え上がり、反対側の物は、機銃掃射でズタボロになる。
この状況で、賢一は地面を這ったまま、路地の方へと向かっていく。
モイラは、彼の後を追う前に、クレイモア地雷を四個だけ仕掛けた。
自らの頭上を、弾丸が飛び交う中、メイスーは必死で、匍匐前進を続ける。
狭い路地に、先に入っていたダニエルとエリーゼ達は、仲間たちを手招きしながら敵の様子を伺う。
「よし、何とか逃げきれたっ! ここまで来れば、連中も追っては来ないだろう」
「私も…………です」
「ジャン、行くわよ? 怪我は大丈夫かしら?」
「お前らと同じで、大したことはないっ! 後で止血もするから心配は要らん」
ドラム缶を乗り越えて、路地の壁に挟まれると、賢一は溜め息を吐きながら屈んでしまう。
メイスーも、すごく具合が悪そうな顔をして、立ち止まったまま周囲を見渡す。
モイラは、自分より撤退するのが遅かったジャンを心配するが、彼は気丈に振る舞う。
こうして、全員が路地に逃げ込むと、彼らは再び戦場から離れていった。
「こっちだ…………銃声から離れよう」
「どっちかが、引っ掛かったようだね?」
賢一は、路地の中を走りだし、仲間たちとともに危険な場所から逃げていった。
その後、爆発音が聞こえたため、モイラが仕掛けたクレイモア地雷が炸裂したと思われた。
「ふぅ? あそこの地下駐車場に逃げ込もう?」
「少なくとも、上からは見えないからね…………」
ひたすら路地を走っていた賢一は、道路に出ると、大きな建物の地下駐車場を指差した。
そこに向かって、モイラも走り、ほかの仲間たちも取り敢えずは行ってみようとする。
「中は安全なようだ…………一度、甘に連絡しよう? その間、みんなは休んでいてくれ」
「さっきのレーザー野郎は、報告しないとね?」
「レーザー野郎って、なんだい? 私は見てないよわよっ!」
「口から、レーザーは吐くわっ! 目からはビームを出すわ? とにかく、凄いゾンビだったぜぇ」
暗く静かに冷えきった地下駐車場内は、敵の姿もなく、賢一たちが休めそうな場所だった。
エリーゼが愚痴ると、モイラは何があったか知らないために質問した。
ダニエルは彼女に代わって、自分が見たことを話すが、信じてもらえそうになかった。
そんな、ジャンとメイスー達は、心配性であるため、入口にミニボウとクロスボウを向けていた。
「はあ? 何なの? 余計に分からなくなったわ…………」
「レーザーは、口から吐き出された血の中が、キラキラと光ってたんだっ! ビームも同じ原理だろう」
混乱して、困り果てるモイラに対して、賢一は自分が見たレーザーの原理を簡潔に教えた。
「甘? レーザー野郎の正体が分かったぞ?」
「賢一、本当か? どんな奴だった」
無線機を取り出して、賢一は早速、骸骨頭のことを伝えるべく、甘に連絡する。
「レーザーは、口から噴出された血が、キラキラと光ってたんだ? 加熱されているから、胃の中で、沸騰していたんだろう…………ビームは、両目から噴射されていた」
「なるほど、目から血を飛ばすサバクツノトカゲと一緒の原理だな? キラキラと光っていたのは、高温で加熱されたウイルスかも知れないな? どうやら、ウイルス達は進化を続けているようだ」
賢一の話を聞いて、甘はゾンビ&ウイルスに関して、冷静に考察する。
「コイツの被験体は、まだ確保して居ないが、ビームやレーザーを放つ事から、スカルビーマーと名付けよう?」
「スカルビーマーか…………分かった、また何かあったら報告する」
甘が名付けた名前を聞いて、なるほどと思った賢一は、無線を切ろうとした。
「ああ、こっちも情報が入手できたら、そちらに報告する」
先に、甘の方から無線を切ってしまったため、賢一は皆と話そうとする。
「少し、休憩しよう? 食べ物や飲み物はないが、ずっと歩き続けるよりはマシだしな」
「そろそろ、昼だしね」
「もう、疲れましたああ」
「はあ、やっとか? 俺も、クタクタだぜ~~たくよぉーー」
賢一の提案を聞いて、モイラは地面に座り込んで、銃器を下ろした。
メイスーは、へたりこんで、円柱に背中を預けながらも、見張りを続ける。
床に寝転んで、ダニエルは愚痴りながら、体中から力を抜いてしまった。
ジャンは、自分の怪我を見たが、すでに瘡蓋が血を固めてしまっていた。
「妙だな? 本当なら、まだ怪我は治ってないはずなのに」
「私の腕も、焼けただれた後は残ってるけど、痛みは全く感じないわ」
「…………もしかして」
ジャンと同じく、エリーゼも左腕の火傷跡を見たが、不思議と少しはやく治りかかっている。
賢一も、自分の両手を見て、赤くなっている皮膚をじっと観察する。
「感染したウイルスの影響で、怪我に強くなったのかも知れないな? 今度、この話しも甘に伝えよう」
そう言って、賢一は自分の右手を、ゆっくりと左手で擦りながら呟く。
こうして、彼らは短い時間だったが、休息を得ることができたのであった。
■ 武器説明。
⭕️ M2ブローニング
M1919を大型化した物で、1933年に制式採用されてから、現在まで使用されている。
対物ライフルと同じ、大口径の銃弾を使うため、薄壁や車両を貫通して、粉々に破壊してしまう。




