表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

#2 大天使は冷蔵庫に話しかける

 シンジが部屋に戻ると、見知らぬ女性がいた。年齢はシンジの1つ上くらいか。


 あれ? 部屋間違えた?

 シンジは周囲を見回した。


 天井には延長ヒモの付いた照明器具がぶら下がっている。

 ほぼ機能していない14型のブラウン管テレビ。

 間違いない。自分の部屋だ。


「シンジさん? お帰りなさい」


“牛乳ビンの底”のような丸いメガネをかけた彼女は、全力で冷蔵庫に話しかけている。ものすごい至近距離でにらみ合うヤンキーに見える。


「どちら様?」

「そーです! 私が大天使『リエル』ですっ!」


 リエルと名乗った女性の口調は、変なオジサンのようだった。


「大天使さんが、俺に何の用です?」

「修復を依頼していたお人形の件で、少しお話がありまして――。お人形を修復したことがきっかけで、シンジさんは守護天使の姿が見えるようになったのですが……。結論を言います。近いうちに、銀髪碧眼の少女が現れます。というより、もうこの部屋に居ますけどねっ!」


 なんの躊躇(ためら)いもなく、リエルが冷蔵庫(野菜室)の引き出しをあけ放った。


「ルチルちゃん。そんなところに入っちゃダメですよ」

「よっ!」


 さきほど空き地で遭遇した銀髪碧眼の少女ルチルが、ハナホジをしながら顔をだした。


「はやく出てきなさい。お野菜が余計にきらいになっちゃいますよ?」

「そういう問題じゃあ……」


 密閉された冷蔵庫で遊ぶ危険性をシンジが説こうとした時だ。

 野菜室から勢いよく飛び出したルチルは、シンジに抱きついた。


「あらあら、まあまあ。かなり懐かれていますね」


 大天使リエルは破顔一笑の表情を見せる。


「リエルさん。訊いてもいいですか?」

「私のスリーサイズですか? 230です!」


 B・W・Hの合計らしい。


「先ほど申しました通り、ルチルちゃんはアナタの守護天使です」

「シュゴテンシって?」


 シンジは小首をかしげる。


「守護天使とは、守護対象に善を勧め、悪を退けるよう導きます」

「要するに、どういうことです?」

「簡単に言えば変態。いえ、無害のストーカーです!」

「言い方……」


 渋い顔をしているシンジをよそに、リエルは天使トークを炸裂させる。


「守護天使からのサポートは一生涯! 守護対象(アナタ)が生まれた時から張り付いて、アナタが亡くなるまで付きまといます。保険料は一切かかりません!」


 リエルの説明は、保険会社か警備会社のCMのようだった。


「結局、守護天使は俺に何をしてくれるんです?」

「はい? 何もしませんけど?」


 大天使リエル、シンジの守護天使だというルチルは、冷蔵庫に手をつくという同じポーズをしてみせる。


 天使については不明な点が多い。

 そもそも、目の前にいる2人が天使だというのも信じがたい。

 ひとつだけ分かったことがある。ここに居る2人は、アホっぽいということだ。


「確かに、無害のストーカーですね……」

「強いて挙げるなら、アナタに伝えたいことがあると、なんらかのメッセージを発信します。私どものギョーカイではこれを『エンジェル・メッセージ』と呼んでいます」


 リエルの言うギョーカイとは、神界である。


「メッセージは言葉で送ってくるとか?」

「エンジェル・ナンバーという数字を送ってきます。最近、気になることはありませんでしたか?」

()()()()を頻繁に見たような気が……」


 車のナンバープレートの数字、買い物をした際の合計金額など、シンジは『1159』という数字をよく目にしていた。


「そう……ですか……」


 リエルは、辛そうに声を発する。


「シンジさん。なにはともあれ、今日一日、守護天使(この子)と過ごしてみてください、きっと気に入ると思います」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ