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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第一章 序章
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7話 過去の遺品と王宮の影

*評価・リアクション・感想・イチオシレビュー全て受付けしております。


どれでも反応いただけると、とても嬉しいです。


どうぞよろしくお願いします。


____________________


王都での生活は、アリアにとって穏やかな日常であると同時に、心の奥底に眠る記憶を呼び覚ます旅でもあった。


占い師の仕事を通じ、人々の悩みや願いに触れるたび、アリアは自身の過去について考えずにはいられなかった。


ある日、アリアは王都の裏通りにある古道具屋に立ち寄った。

埃を被った薄暗い店内に、古びた品々が無造作に並んでいる。

その中で、アリアはひときわ小さな銀製のペンダントに目を奪われた。繊細な装飾が施されたそれは、長い年月を経た今もなお、微かに輝きを放っていた。

何かに惹かれるように手に取ると、ペンダントの裏側に小さな文字が刻まれていることに気づいた。


「ミストラル村」


その村の名を見た瞬間、アリアの脳裏に、まるで古いフィルムが再生されるかのように、断片的な映像が流れ込んできた。

それは、「アリア」という名のこの身体(器)にかつて宿っていた魂の記憶。


(ミストラル村……?どこかで聞いたことがあるような……)


アリアは、胸の高鳴りを抑えながら、ペンダントを握りしめた。それは、自身の過去を知るための、唯一の手がかりだった。


その日から、アリアはミストラル村について調べ始めた。

古文書を読み解き、王都の図書館に通い詰めた。しかし、ミストラル村に関する情報は、驚くほど少なかった。まるで、歴史から意図的に消されたかのように。


調査が行き詰まりかけた時、アリアは偶然、王宮の書庫に勤める学者と出会った。彼は、アリアの過去に関する情報を持っているかもしれないと示唆した。


王宮の書庫は、王国の歴史に関する貴重な資料が保管されている場所だった。アリアは、学者の案内で、普段は立ち入りが制限されている書庫の奥へと進んだ。


薄暗く、静まり返った書庫。書架には、天井まで届くほどの古い羊皮紙の巻物が所狭しと並んでいる。学者は、その中から一冊の巻物を取り出し、アリアに手渡した。


「これが、ミストラル村に関する唯一の記録です。」


巻物には、ミストラル村に関する記述があった。村は、かつて豊かな自然に恵まれた場所だったが、数十年前に起きた謎の災害によって壊滅したという。


「この災害は、単なる自然災害ではない可能性があるのです。」


学者は、そう言って、一枚の地図を広げた。そこには、ミストラル村を中心に、複雑な線が引かれていた。


「これは、古代魔法の痕跡です。古代魔法とは、遥か昔に存在した、非常に強力な魔法体系のこと。ミストラル村は、その古代魔法の実験場だったのかもしれません。」


学者の言葉に、アリアは息を呑んだ。古代魔法。それは、王国の歴史の中でも、特に秘匿された領域。


「しかし、なぜ王宮がこの情報を隠蔽しているのでしょうか?」


アリアが尋ねると、学者は意味深な笑みを浮かべた。


「王宮には、知られてはならない秘密が数多く存在するのです。そして、あなたの過去も、その一つかもしれません。」


学者は、アリアに警告した。


「あなたは、危険な領域に足を踏み入れようとしています。どうか、十分に注意してください。」


学者の言葉が、アリアの胸に重く響いた。


ふいに、アリアは背後に、二つの気配を感じた。

それは、アルベール家のルシウスとユリウスだった。彼らは、アリアの行動を監視しているようだった。


(なぜ、彼らが……?)


アリアは、警戒心を抱きながら、彼らから視線を逸らした。


王宮の影が、アリアの過去に深く関わっていることを、アリアは確信した。


その夜、アリアは自身の部屋で、ペンダントを手に取った。微かに光るペンダントを見つめながら、アリアは心の中で呟いた。


「私は、必ず過去の真実を突き止める。」


アリアの瞳には、決意の光が宿っていた。


翌日、アリアは再び王宮の書庫を訪れた。学者から、古代魔法に関する資料を借りるためだった。学者は、アリアの熱意に感心しつつも、再び警告を促した。


「古代魔法は、使い方によっては、世界を滅ぼすほどの力を持つ……安易に手を出すべきではありません。」


「分かっています。ですが、私は真実を知りたいのです。」


アリアは、学者の言葉に感謝しつつ、資料を受け取った。書庫を出ると、そこにはルシウスとユリウスの姿があった。彼らは、アリアに近づき、柔和な笑みを浮かべた。


「アリア様、このような場所で何をされているのですか?」


ルシウスが尋ねると、アリアは冷静に答えた。


「少し、調べ物をしていまして。」


「調べ物、ですか?もしよろしければ、私たちも手伝いましょうか?」


ユリウスが提案したが、アリアは丁重に断った。


「ありがとうございます。ですが、これは私個人の問題ですので。」


アリアは、二人の視線を感じながら、その場を後にした。


部屋に戻ると、アリアは借りてきた資料を広げ、古代魔法について調べ始めた。資料には、古代魔法の歴史や種類、そしてその危険性について詳しく書かれていた。


「古代魔法は、使い方によっては、世界を滅ぼすほどの力を持つ……」


資料を読み進めるうちに、アリアは古代魔法の恐ろしさを改めて認識した。そして、同時に、なぜ王宮がこの力を隠蔽しているのか、その理由も理解できた。


(王宮は、古代魔法の力を独占し、利用しようとしているのかもしれない。)


アリアは、そう確信した。そして、自身の過去が、その古代魔法と深く関わっていることも。


次の瞬間、部屋の窓が微かに開き、冷たい風が吹き込んできた。アリアは、背後に気配を感じ、振り返った。そこには、黒いローブを纏った人影が立っていた。


「あなたは……?」


アリアが尋ねるよりも早く、人影はアリアに向かって手を伸ばした。その手には、鋭い光を放つ短剣が握られていた。


「消えてもらうぞ。」


人影は、低い声でそう言い、アリアに襲い掛かってきた。アリアは、咄嗟に身をかわし、短剣を躱した。しかし、人影の動きは素早く、アリアは徐々に追い詰められていく。


(この人は、一体……?)


アリアは、人影の正体を突き止めようとしたが、人影は何も語らず、ただひたすらにアリアを攻撃してきた。


その瞬間、部屋の扉が勢いよく開き、ルシウスとユリウスが飛び込んできた。


「アリア様!」


二人は、アリアを庇うように立ち、人影と対峙した。

人影は、二人の姿を見ると、舌打ちをし、窓から飛び降りて逃げていった。


「アリア様、ご無事ですか?」


ルシウスが心配そうに尋ねると、アリアは頷いた。


「ええ、なんとか。」


「一体、何者だったのでしょう?」


ユリウスが尋ねると、アリアは首を横に振った。


「分かりません。ですが、私を狙ってきたことは確かです。」


アリアは、二人に感謝の言葉を述べ、部屋に残された短剣を拾い上げた。それは、ただの短剣ではなく、微かに魔力を帯びていた。


(この短剣は、古代魔法に関係があるのかもしれない。)


アリアは、そう確信した。

そして、自身の過去を巡る戦いが、いよいよ始まったことを悟った。





7話:終わり

〈登場人物〉


* アリア:

* 異世界に転生した元宮廷占い師。

* 自身の過去の手がかりとなるペンダントを入手し、その謎を追う。

* 王宮の秘密に近づき、危険な状況に巻き込まれていく。

* 過去の真実を突き止めようとする強い意志を持つ。


* 王宮の学者:

* 王宮の書庫に勤める学者。

* アリアにミストラル村や古代魔法に関する情報を提供する。

* アリアに危険を警告し、王宮の秘密を匂わせる。

* 古代魔法について詳しい知識を持つ。


* ルシウスとユリウス:

* アルベール家の双子の兄弟。

* アリアの行動を監視している。

* アリアを助ける場面もあるが、その真意は不明。

* アリアの過去と王宮の秘密との関係性を知っているような素振りを見せる。


* 謎の襲撃者:

* アリアを襲撃した黒いローブの人物。

* 古代魔法の力を持つ短剣を使用する。

* その正体や目的は不明。


____________________


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。


作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。


あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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