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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第一章 序章
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6話 黄昏の鎮魂歌

*評価・リアクション(絵文字)・感想・イチオシレビュー全て受付けしております。

どれでも反応いただけると、とても嬉しいです。よろしくお願いします。


王都セントラルでの生活は、アリアにとって穏やかな日常を意味していた。

占い師の仕事の傍ら、石畳の道を歩き、市場の喧騒に耳を傾ける。そんな日々の中で、アリアは異世界の文化に触れ、人々の温かさに安らぎを覚えていた。


ある日の午後、市場の一角に人だかりができていることに気づいた。人々は皆、口々に何かを話している。


「聞いたか?夜な夜な泣く女の幽霊が出るって噂だ。」


「ああ、北の古い屋敷だってな。若い娘の幽霊だって話だろ。」


アリアは、人々の話に耳を傾け、幽霊の噂について情報を集めた。

噂の幽霊は、王都の北にある古い屋敷に出没するという。

その屋敷は、かつて裕福な商人が住んでいたが、数年前に一家が謎の失踪を遂げて以来、廃墟となっていた。


(幽霊、か……)


アリアは、興味を覚えつつも、どこか懐かしいような気持ちになった。宮廷占い師だった頃の世界でも、幽霊の存在は信じられていた。もしかしたら、この異世界の幽霊も、何か特別な力を持っているのかもしれない。


その夜、アリアは噂の真相を確かめるため、一人で屋敷へと向かった。星明かりだけを頼りに、人気のない通りを進む。やがて、屋敷の前にたどり着くと、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。


固く閉ざされた門を乗り越え、敷地内に足を踏み入れる。荒れ果てた庭、蔦に覆われた建物。アリアは、慎重に屋敷の中へと進んだ。


屋敷の中は、昼間の明るさとは対照的に、暗く静まり返っていた。壁に手を添え、ゆっくりと廊下を進む。すると、奥の部屋から微かなすすり泣きが聞こえてきた。

アリアは、音のする方へと近づき、扉を開けた。そこには、窓辺にうずくまり、肩を震わせている若い女性の姿があった。


「あなたは……?」


アリアが声をかけると、女性は顔を上げた。青白い顔、儚げな瞳。


「あなたは、私が見えるの……?」


女性は、掠れた声でそう言った。

アリアは、静かに頷いた。


「私は、リリア。この屋敷に住んでいた者です。」


リリアは、悲しい過去を語り始めた。かつて、この屋敷は裕福な商人の家だった。しかし、ある日、一家は謎の失踪を遂げ、リリアだけが屋敷に取り残されたのだという。


「私は、ずっと家族を探していました。でも、どこを探しても見つからない……」


リリアは、涙ながらにそう語った。アリアは、リリアの言葉に耳を傾け、その心に寄り添った。


「あなたは、一人じゃない。私が、あなたの話を聞く。」


アリアは、リリアの肩に手を添え、優しく語りかけた。リリアは、アリアの言葉に安堵したように、少しずつ落ち着きを取り戻していった。


アリアは、リリアの話を聞きながら、彼女の過去を占ってみた。すると、リリアの一家は、ある陰謀に巻き込まれ、命を落としていたことがわかった。


「リリア、あなたの家族は……もう、この世にはいない。」


アリアは、リリアに真実を告げた。リリアは、それを聞くと、再び泣き崩れた。


「そんな……嘘だ……」


アリアは、リリアの背中をさすりながら、彼女の心を癒した。


「リリア、あなたはもう、一人じゃない。私が、あなたの家族の分まで、あなたを大切にする。」


アリアの言葉に、リリアはゆっくりと顔を上げた。その顔には、まだ涙が残っていたが、どこか安らかな表情をしていた。


「ありがとう……アリアさん。」


リリアは、アリアに微笑みかけた。そして、彼女の体は、光に包まれ、ゆっくりと消えていった。


リリアの幽霊騒動は、こうして幕を閉じた。アリアは、屋敷を後にしながら、空を見上げた。星々が、優しく輝いていた。


(リリア……安らかに眠ってね。)


アリアは、心の中でそう呟いた。そして、王都の人々の優しさや温かさに触れ、彼女は再び歩き出した。


翌朝、アリアはいつものように王都の街を散歩していた。すると、噂の屋敷の前で、何人かの人々が小さな野花を供えている光景を目にした。


「おはようございます。」


アリアが声をかけると、人々は笑顔で挨拶を返してくれた。


「昨夜、アリア様が、リリア様を弔ってくださったと聞きました。リリア様は、ずっと寂しかったでしょうから……」


人々は、そう言いながら、静かに手を合わせた。アリアは、人々の優しさに触れ、心が温かくなるのを感じた。


(リリア……あなたはこの街の人々に愛されていたのね。)


アリアは、心の中でそう呟いた。


そして、彼女は再び歩き出した。

王都の人々の優しさや温かさを胸に、彼女は今日もまた、人々の悩みや願いに耳を傾けるのだった。


そして、リリアの一家が巻き込まれた陰謀の影が、王都に深く広がっていることを、アリアはまだ知らなかった。




6話:終わり

〈登場人物〉


* アリア:

* 異世界に転生した元宮廷占い師。

* 王都セントラルで占い師として生活しながら、街の人々と交流を深めている。

* 幽霊の噂を聞き、リリアとの出会いを果たす。

* リリアの過去を占い、彼女の無念を晴らす。

* 人々の悩みに寄り添い、解決へと導く優しい心の持ち主。


* リリア:

* 噂の屋敷に住んでいた若い女性の幽霊。

* 数年前に一家が謎の失踪を遂げ、自身も屋敷に取り残された。

* 家族を探し続ける孤独な魂。

* アリアとの出会いを通じて、自身の過去と向き合い、成仏する。


* 王都の人々:

* 幽霊の噂に興味津々な人々。

* リリアの死を悼み、彼女のために花を手向ける優しい人々。

* アリアの行動に感謝し、彼女を温かく見守る。



____________________



※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。


作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。


あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。




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