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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第一章 序章
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10話 王宮の夜会と地下への誘い

煌びやかなシャンデリアが、大理石の床に光の粒を散らす。 王宮の夜会は、権力と欲望が渦巻く社交場と化していた。


アリアは、ゆるいウェーブのかかった栗色のロングヘアを優雅にまとめ、普段の質素な装いとは打って変わって、華やかな深緑のドレスに身を包んでいた。薄いブラウンの瞳は、今宵ばかりは薄く化粧が施され、その上品で知的な顔立ちを一層際立たせている。普段は両サイドでおさげにしている髪を下ろしてしっかりとメイクと盛装をすると、どこかの貴族令嬢かと本人が思うくらいには見栄えするし、化ける。20歳という年齢よりも落ち着いて見える彼女の佇まいは、まるで熟練の貴婦人のようだった。普段は胸元の開いた服を着ないので全く気づかないが、ドレスを着たことで露わになった彼女の豊満な胸元は実に魅惑的で、その美しさは周囲の貴族たちを魅了していた。


しかし、彼女の瞳は、華やかな雰囲気に惑わされることなく、王宮の闇を鋭く見据えていた。


(アルベール家、王宮、そして古代の怨念…全ては繋がっている。私の過去も… マーガレット夫人も、あの秘密を共有する仲間…)


アリアは、二つの前世で培った知識と経験、そして異世界で得た情報を照らし合わせ、確信を深めていた。アルベール家の秘密を共有するマーガレット夫人との連携も視野に入れ、今夜は王宮の関係者と接触し、新たな情報を得るために、この夜会に潜入したのだ。


夜会の途中、無遠慮に触れてこようとする貴族男性がいた。アリアは、護身術で身に着けた反射神経を活かしサッと避ける。


その様子を目にしたエレノアが、少し離れた場所からアリアに微笑みかけた。


アリアは、エレノアのそばに歩み寄った。「エレノア様、今宵も美しいですね。」


「アリア様こそ。そのドレス、とてもお似合いですわ。」エレノアは、アリアの装いを注意深く見つめた。「まるで、秘めたる高貴さが溢れ出ているようです。」


アリアは、エレノアの言葉に内心ドキリとした。(エレノア様も何かを感じているのだろうか…?)


夜会の喧騒の中、アリアは一人、テラスへと足を運んだ。冷たい夜風が、火照った頬を撫でる。眼下には、王都の夜景が広がり、星々が宝石のように輝いていた。


「美しい夜景ですね。」


背後から、低い声が聞こえた。


振り向くと、そこには王宮の書記官、エリオットが立っていた。 彼は、知的な雰囲気を漂わせる青年で、その瞳には穏やかな光が宿っていた。アリアは、彼に興味を持っていた。


「ええ、まるで宝石箱をひっくり返したみたい。」


アリアは、エリオットと夜景を見ながら、言葉を交わした。


彼は、王宮の歴史や文化に詳しく、アリアは彼から様々な情報を得ることができた。その語り口は丁寧で、知識の深さが窺えた。


「ところで、エリオット様は、王宮の地下に何か古いものが保管されていることをご存知ですか?」


アリアは、さりげなく尋ねた。


エリオットは、少し考え込むような仕草を見せた後、静かに口を開いた。


「王宮の地下には、禁じられた書物や、古い魔法具などが保管されているという噂は聞いたことがあります。ですが、詳細を公に語ることは、私の立場では難しいのです。」


エリオットの言葉に、アリアは失望の色を隠せなかった。しかし、同時に、王宮の地下に何か秘密が隠されていることを確信した。


(やはり、王宮の地下に、古代の怨念が封印されているのか… ヴィクトルの日記… そして、マーガレット夫人が話してくれたこと…)


アリアは、アルベール家の秘密と、ヴィクトルの日記の内容を思い出し、確信を深めた。


夜会が終わりに近づいた頃、エリオットはアリアに近づき、周囲を警戒するように一度あたりを見回してから、一枚の古い地図を渡した。


「これは、私が子供の頃に、書庫で見つけたものです。もしかしたら、アリア様の役に立つかもしれません。ですが、決して誰にも見つからないように。」


地図には、王宮の地下を示すと思われる、複雑な線が描かれていた。アリアは、エリオットの協力に感謝の言葉を述べ、地図を受け取った。


その地図に記された場所が王宮の地下であることを知りアリアは、夜会の後で地下に潜入することを決意する。


アリアはルシウス、ユリウスと接触し、彼らの真意を探ろうとする。


「アリア様、今宵は楽しんでいただけましたでしょうか?」


ルシウスが柔和な笑みを浮かべながら尋ねた。


「ええ、素晴らしい夜会でした。ありがとうございます。」


アリアは、警戒心を抱きつつも、平静を装って答えた。


「アリア様は、いつもと雰囲気が違いますね。まるで、どこかの貴族令嬢のようだ。」


ユリウスがからかうように言った。


「ふふ、少しばかり着飾ってみましたの。」


アリアは、軽く笑いながら答えた。


(彼らは、私のことをどこまで知っているのだろうか… マーガレット夫人との約束…)


アリアは、二人の視線を避けながら、彼らの言葉に注意深く耳を傾けた。


夜会は、特に大きな事件もなく終了した。


アリアは、自室に戻り、エリオットから受け取った地図を広げる。


「やはり、ここが…」


地図に記された場所は、王宮の地下を示す複雑な線で描かれていた。アリアは、地図を手に、王宮の地下へと向かうことを決意した。


(今夜、全てを明らかにする… アルベール家の秘密、そして私のルーツを…)


アリアの瞳には、決意の光が宿っていた。


10話:終わり

〈登場人物〉

* アリア:主人公。異世界に転移した元宮廷占い師。王宮の夜会に潜入し、情報を集める。

* エレノア:王宮の女官。アリアに友好的に接する。

* エリオット:王宮の書記官。アリアに王宮の地下に関する情報を提供する。

* ルシウス:アルベール家の長男。アリアを警戒している。

* ユリウス:アルベール家の次男。アリアを監視している。

* 貴族たち:王宮の夜会に参加している人々。


〈読者の皆様へ〉

10話では、アリアが王宮の夜会に潜入し、ついに王宮の地下へとつながる地図を手に入れました。華やかな夜会の裏で、アリアは着実に真実へと近づいています。しかし、アルベール家の影もまた、彼女を捉えようとしています。

次回の11話では、アリアが王宮の地下へと潜入し、さらなる謎に迫ります。そこで彼女が見るものとは一体何なのでしょうか?そして、アルベール家の真の目的とは?

物語はますます深みを増していきます。ぜひ、次回の更新もお楽しみに!


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*ポイント評価(☆)・リアクション(絵文字)・感想・イチオシレビュー全て受付けしております。

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※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。


作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。


あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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