プロローグ下 新たな出会い
ちなみに主人公は女の子
この物語はプロローグの上と下の下で前回の続きです。
プロローグ下
私は舗装されていない城門への道を歩き続けた。冷たい風が葉や草を揺らし、私の頬を刺すように通り過ぎていく。荒れた土の道は足の裏に小石が突き刺さるようで、痛みがじわじわと広がっていく。
「寒いよ…お母さん…」
震える声でそうつぶやきながら、私は身を縮めて、ゆっくりと冷たい冬の中を歩き続けた。
やがて、大きな城門がぼんやりと目の前に見えてきた。しかし、ふと背後で地鳴りのような振動が感じられ、振り返ると、赤い目をした魔物がこちらに迫ってきていた。巨大な体が地面を踏み鳴らし、鋭い牙が月光に照らされている。
「どうしよう…逃げられない…」
恐怖で足が動かない。迫りくる影に圧倒され、私はその場に立ち尽くした。鋭い爪が私に向かって振り下ろされる――その瞬間、一筋の赤い光が横から閃いた。
鋭い金属音が響き、火花が散る。
「え…!?」
驚きで言葉を失いながら、私は赤い光の正体に目をやった。そこにいたのは、赤い髪の少年だった。剣を振るい、魔物の爪を弾き返したかと思うと、再び矢が飛んできて、魔獣の目を貫いた。矢を放った少女が、こちらに向かって微笑んでいた。
「もう大丈夫!あいつはもう終わりー!」少女が笑顔でそう言うと、魔物は一瞬、苦しげに吠えたあと、黒い煙となって消え去り、骨の一片すら残らなかった。
「やったぜ!片付いた!」
少年がにっこりと微笑み、満足げに振り返る。その顔はまるで英雄のようだったが、次の瞬間、彼は少し照れくさそうに言った。
「…俺、かっこよかっただろ?」
その唐突な言葉に、私は思わず口元をほころばせ、初めて笑みがこぼれた。横から少女が突っ込みを入れる。
「なんとも幸せなやつ!かっこよかねーよ!」
少女の軽口に、少年は不服そうに顔をしかめながらも、苦笑いを浮かべた。
「いや、今のはうまく決まったと思ったんだけどなー」
二人のやりとりを見ていると、冷たい闇の中で感じていた不安や孤独が少しずつ消えていくのが分かった。彼らの明るさが、私を包み込んでいくようだった。
すると、少女が私に近寄ってきて、優しく微笑みながら「大丈夫?怪我はない?」と尋ねてくれた。
「うん…ありがとう」と私はお礼を言った。胸の奥が温かくなる感覚がして、ふと心が軽くなった気がした。けれど少し、最後の母の微笑みを思い出して胸が痛んだ。
そんな中、少女は元気よく名乗った。「私はステラ!そして、あそこでむくれてるやつがイリオス!」
イリオスは照れ隠しなのか、不服そうに下を向いていたが、顔を上げるとまっすぐ私を見て、にっこりと微笑んだ。
「イリオスだ!よろしくな!それで…君の名前は?」
「…わたしは…。」その言葉の先が出てこない。気づけば、胸に溜まっていたものが一気に溢れ出し、私はその場で子供のように泣き始めてしまった。
イリオスとステラは戸惑いながらも、そっとそばにいてくれた。
こうして、私の物語が静かに動き始めた。
---次回
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