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エリーゼからの思わぬ提案にラルクは頷く、確かに宿屋どころかギルドがどこにあるのか聞かなかった。
「助かるよエリーゼ、じゃあお願いしようかな」
そのとき、ぐぅとおなかの鳴る音がした、エリーゼからだった。
「あ、これはそのー、お昼も食べずに森にいたのでお腹がすいてしまいました」
と顔を赤くするエリーゼ、可愛い。 何かおごってあげたいのは山々だが何しろ一文無しだ。エリーゼはうつむきながら小さな声で話しかけてくる。
「あの、もしよければ私の家に来ていただけませんか、助けていただいたお礼に一晩泊って行ってください!」
まだ夕食には早いが今からギルドに行って登録手続きをしたり依頼をするのは時間がかかるだろうお言葉に甘えて今日はエリーゼの家に泊めてもらおう。親御さんの許可が出るかどうかわからないけど。
エリーゼの家は門から歩いてすぐのところにあった。古めかしい2階建ての木造建築で、庭には数種類の花が咲いている。花売りをしていたから生活が苦しいのかと思っていたから意外だった。そういえば服装もきれいだしブロンドの髪にはつやがあり、天使の輪がきらきらと光っている
「はえーすっごい大きい、もしかしてエリーゼってお金持ちだったりする?」
「お金持ちってほどではないですけど不自由ない生活はさせてもらっています。花売りはその、趣味で」
趣味かい
「そ、そうなんだ、と、とりあえずここで待ってるから親御さんに話してみて、駄目そうなら一人でギルドに行くから」
「大丈夫です、お父さんもお母さんも優しいからきっと泊まらせてくれますよ!」
そんなに甘くはないと思うけどせっかくだしお言葉に甘えさせてもらおう。
「ただいまーおかーさん」
「エリーゼ?お帰りなさい!いつもより遅かったわね、大丈夫だった?」
「あのね、お母さん実は・・・・・・」
エリーゼは森の中であったことを話した。エリーゼの母は厳しい顔をしてエリーゼに話しかける
「エリーゼ、もう森に行くのはおよし、今回は偶々助かったものの、ラルクさんという方がいなかったら死んでいたのよ!」
エリーゼは涙声になっている
「ごめんなさいお母さん、もう行きません」
「ラルクさん、ありがとうございます、あなたが居なければ娘は、娘は・・・・・・」
エリーゼのお母さんは涙を流しながらエリーゼを抱きしめた。
「ラルクさん、ぜひ今日は泊って行ってください。お食事もたくさん作りますからね」
「ありがとうございますエリーゼのお母さん、お言葉に甘えさせていただきます」
一時間ほど経ってエリーゼのお父さんが帰ってきた、最初は誰だ?と驚かれたがエリーゼが今日の出来事を説明したら涙を流しながらこつんと軽くエリーゼにげんこつを落とした、そして頭を下げられた。そのあと4人で夕食を楽しんだ。
魚の煮つけとあら汁、白いソースのかかったサラダ、柑橘系の香りがする果実水にデザートにパンケーキまで出てくる豪華な食事だった。